本記事ではHSコードの解説と各種「データベース」を活用して貿易貨物のHSコードを素早く正確に特定する方法を「元通関士」が解説致します。
まずはHSコードを税関HPから特定する方法を
動画にてご紹介させて頂きます。
上記動画にてご紹介させて頂いたHSコードは以下の一覧表にあるように1類から97類まであります。
まずは軽い気持ちでHSコードの種類と根拠規定の一覧をスクロールしてご覧ください。
類 | 類別表題 | 根拠規定 |
1類 | 生きている動物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
2類 | 肉及び食用のくず肉 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
3類 | 魚並びに甲殻類 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
4類 | 酪農品、鳥卵、天然蜂蜜 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
5類 | 動物性生産品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
6類 | 樹木その他の植物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
7類 | 食用の野菜、根及び塊茎 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
8類 | 食用の果実及びナット | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
9類 | コーヒー、茶、香辛料 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
10類 | 穀物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
11類 | 穀粉、加工穀物、でん粉 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
12類 | 種及び果実、飼料用植物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
13類 | ラック、樹脂、植物性液汁 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
14類 | その他植物性生産品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
15類 | 動植物性の油脂 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
16類 | 肉、魚又は甲殻類の調製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
17類 | 糖類及び砂糖菓子 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
18類 | ココア及びその調製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
19類 | 穀物、澱粉、ミルク調製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
20類 | 野菜、果実、植物調製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
21類 | 各種の調製食料品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
22類 | 飲料、アルコール及び食酢 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
23類 | 食品工業にて生ずる残留物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
24類 | たばこ、製造たばこ代用品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
25類 | 塩、土石類、プラスター | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
26類 | 鉱石、スラグ及び灰 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
27類 | 鉱物性燃料及び鉱物油 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
28類 | 無機化学品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
29類 | 有機化学品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
30類 | 医療用品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
31類 | 肥料 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
32類 | 染料、顔料その他の着色料 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
33類 | 精油、調製香料、化粧品類 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
34類 | せっけん、有機界面活性剤 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
35類 | たんぱく系物質、変性澱粉 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
36類 | 火薬類、調製燃料 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
37類 | 写真用又は映画用の材料 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
38類 | 各種の化学工業生産品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
39類 | プラスチック及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
40類 | ゴム及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
41類 | 原皮(毛皮を除く)及び革 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
42類 | 革製品、鞄、バッグ | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
43類 | 毛皮、人造毛皮製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
44類 | 木材及びその製品、木炭 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
45類 | コルク及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
46類 | 組物製品、かご細工物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
47類 | 木材パルプ、古紙 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
48類 | 製紙用パルプ、紙、紙製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
49類 | 書籍、新聞、印刷物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
50類 | 絹及び絹織物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
51類 | 羊毛、繊獣毛の織物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
52類 | 綿及び綿織物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
53類 | その他の植物性紡織用繊維 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
54類 | 人造繊維の長繊維 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
55類 | 人造繊維の短繊維 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
56類 | フェルト、不織布 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
57類 | じゅうたんその他の床敷物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
58類 | 特殊織物、タフト、レース | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
59類 | 被覆した紡織用繊維の織物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
60類 | メリヤス、クロセ編物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
61類 | 衣類及び衣類附属品(編み) | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
62類 | 衣類及び衣類附属品(織り) | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
63類 | 紡織用繊維のその他の製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
64類 | 履物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
65類 | 帽子 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
66類 | 傘、つえ、ステッキ | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
67類 | 羽毛製品、造花、人髪 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
68類 | 石、セメント、石綿 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
69類 | 陶磁製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
70類 | ガラス及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
71類 | 貴半貴石、身辺用細貨類 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
72類 | 鉄鋼 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
73類 | 鉄鋼製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
74類 | 銅及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
75類 | ニッケル及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
76類 | アルミニウム及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
77類 | (欠番) | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
78類 | 鉛及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
79類 | 亜鉛及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
80類 | すず及びその製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
81類 | その他の卑金属製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
82類 | 工具、刃物、スプーン | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
83類 | 各種の卑金属製品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
84類 | 機械類、これらの部分品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
85類 | 電気機器及びその部分品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
86類 | 鉄道用車両 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
87類 | 車、バイク、自転車 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
88類 | 航空機 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
89類 | 船舶及び浮き構造物 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
90類 | 検査、精密、医療機器 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
91類 | 時計 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
92類 | 楽器 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
93類 | 武器 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
94類 | 家具、クッション、照明 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
95類 | がん具、運動用具 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
96類 | 雑品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
97類 | 美術品、こっとう品 | 輸入HS 輸出HS 部注 類注 解説 国例 内例 |
このような膨大なHSコードのリストから特定の品目のHSコードを特定をするのは困難です。
そこで本記事では様々なHSコードの特定方法を紹介させて頂きます。
HSコードとは?
HSコードの”HS”とは、
“Harmonized Commodity Description and Coding System”の略称で、和訳すると
“商品の名称及び分類についての統一システム”
となります。
HSコードはHS条約の品目表に基づいて作成されており、世界200か国・地域以上が使用しているシステムです。
HSコードの使用目的としては
① 関税率の設定(輸入)
② 国際貿易統計の編纂(輸出)
③ 原産地の決定
④ 貿易交渉 (例; WTO EPA)
が挙げられます。
HSコードの構成
「品目分類」とは、輸出入される貨物を
HS品目表の一つの項目に当てはめることです。
輸出で使用するHS品目表を
「輸出統計品目表」
輸入で使用するHS品目表を
「実行関税率表」と呼びます。
例えば「精米」のHSコードを実行関税率表で
調べると“1006.30”に分類されます。
この“1006.30”というHSコードを2桁毎に分解
すると
頭2桁の10を「類」
頭4桁の1006を「項」
頭6桁の100630を「号」と呼びます。
HSコードの構成を図で表すと以下のようになります。(精米のHSコード“1006.30”の例)
次の図は85類「電子機器及びその部分品」が「類(2桁)」「項(4桁)」「号(6桁)」と進むにつれ品目詳細が特定されていく様子を表します。
この図を見ると
「類(2桁)」レベルでは「電子機器全体」に対する大まかな分類になっており、
「項(4桁)」レベルでは「電動機」「発電機」「ケーブル」などより細かな分類になり、
「号(6桁)」レベルでは世界共通単位の中で最も深く品目を分類する事ができます。
これ以降の桁は各国が独自に定める分類規定に従う事になります。
(日本は全桁9桁となり、各国によって最大桁数は異なる場合があります)
類(2桁)の分類
「類(2桁)」レベルでは大まかな分類
上記の一覧にあるように「類」の上の概念に「部」という属性があり、複数の「類」を包括します。
(例:72類から83類は「15部」に所属)
また、先ほどの「精米」のHSコード“1006.30”は第2部「植物性生産品」に属します。
別の図で表すと以下のようになります。
(精米のHSコード“1006.30”の例)
項(4桁)の分類
「項(4桁)」レベルではより細かな分類
号(6桁)の分類
「号(6桁)」レベルでは最も詳細な分類
HSコード選定はだれでもできるのか?
FTA/EPAにおいて貨物の関税率と減税後の関税率を知るには
HSコード選定の知識が必要です。
そしてこの知識は今後通関士だけでなくFTAを利用する荷主様自身が
行う必要が出てきます。
関税局による原産地規則への意見のページにて紹介しましたが
荷主様自身による原産地規則の理解すなわちHSコード選定の知識が
要求されているという事です。
HSコードの選定というのは通関士の持つ特殊な知識を要するので
荷主様がこれを行うというのは少々困難を伴うかと思います。
しかし、原産地規則の適用可否判断のHSコードの選定はコツをつかめば
習得が困難なものではありません。
原産地規則の適用可否判断のHS選定と
通関士の行う税関申告におけるHS選定とは範囲が異なるからです。
重要なので繰り返します。
原産地規則の適用可否判断のHS選定と
通関士の税関申告の為のHS選定と範囲が異なります。
つまり荷主様は原産地規則の適用可否判断において
通関士並みのHS選定技術を求められる事はありません。
※最終製品の輸入国における税率を求めるには全桁のHSが必要なので
この1点だけは輸入国側の通関士や税関に問い合わせして下さい。
(6桁で済むのは原産地規則を満たす事を証明する際に使用するHSです)
HSコード選定の範囲
では具体的に荷主様が原産地規則の適用可否判断の為に行うHSコード選定と
通関士のHSコード選定がどれほど違うのかを説明します。
通関士のHSコード選定は税関に納める関税の計算を行い、
貿易統計にも使用されます為、非常に細かく区分けがされており、
HSコードは9桁(+1桁)レベルで選定しなくてはいけません
しかし、荷主様が原産地規則の適用可否判断をする場合、
HSコードは6桁レベルで済むのです。
この違いは非常に大きいです。
HSコード6桁と10桁の難易度比較
ではここでHSコード6桁と10桁の違いを解説します。
例えば通関士が軽質油のHSコードを選定する場合は9桁(+1桁)レベルでの
選定が必要となるので以下のような広大な範囲の中から適切な
HSコードを選ぶ必要があります。
軽質油のHSコードは2710.12から始まります。
通関士であれば2719.12から更に3桁の統計細分と1桁のNACCSコード
合計10桁を選定する必要があります。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが2710.12という大枠に対し
残り4桁、合計10桁の適切なHSを選択するのがいかに大変か
お分かりいただけるかと思います。
「軽質油です」と言うだけでは不十分なのです。
これが通関士が特殊な知識を要すると言われている理由の一つです。
それに対し、荷主様が原産地規則の適用可否判断時に選定するHSは
6桁だけですので軽質油のHSを調べるには以下の一行だけ見ればよいのです。
原産地規則の適用可否を判断する原材料のHS選定では
「軽質油である」と分かればそれでHS6桁が確定します。
(最終製品であれば全桁が必要ですのでご注意ください。)
言い方を変えると原産地規則を満たすかどうかを判断する原材料のHS選定では
2710.12という6桁のHSコードが出せれば基本的に問題ありません。
(2桁或いは4桁変更が要件の場合はそれぞれ2桁,4桁だけ特定するだけでも可)
以下の表は原産地規則の適用が可能であることを証明する書類の例です。
基本的に特定するHSコードは6桁以内である事がわかります。
原産地規則の適用可否判断の為のHS選定と通関士の行うHS選定が
どれほど異なるのか実感できたかと思います。
荷主様が原産地規則の適用可否判断時に求められるHSの知識は
これで十分です。
(何度も言いますが最終製品は全桁ですので輸入国に要確認です。)
6桁のHSコード選定のコツ
では上記のような6桁のHSコードを探すコツはどのような物でしょう
これはネット上にあるHSタリフでの品名検索や
同じくネット上にある税関での事前教示の実績を検索する事で
ほぼ予測がつきます。
非常に複雑かつ前例のない物などは検索しきれない場合もありますが
一般的な貨物であれば大体この方法でHS6桁程度は
すぐに見当がつくでしょう。
実際に検索方法をお伝えしたいのですが
その方法を紹介する前に最低限HS選定の基礎だけは
ご理解頂きたいと思います。
基礎を理解してから検索しないと大きなミスにつながる可能性や
検索によって出てきた解説文を理解できない可能性もあります
そうなってしまうと輸入目的貨物と実例が同じかどうかの判断が
あやふやになってしまう可能性があります。
通則とは?
実際の品目にHSをコードを当てはめる場合にはHS選定基礎の理解が必要です。
基礎を理解しないままネット等で品名検索をしてしまうと、検索結果の根拠を
理解せず、誤った当てはめをしてしまい大惨事を招くことになる可能性があります。
そこでまずは「品目表の解釈に関する通則」を理解する必要があります。
関税率表の解釈に関する通則
GENERAL RULES FOR THE INTERPRETATION OF THE HARMONIZED SYSTEM
「品目表の解釈に関する通則」とは、提示された物品が、表のいずれのHSコードに
所属を決定するかについて世界共通の原則を定めたものです。
以下通則を1から順に解説させていただきます。
通則1
この通則1というのがHS品目分類において最も重要な基本原則ですが、
一読しただけでは何を言っているのかよくわからないかと思いますので以下にて
これをかみ砕いて解説していきたいと思います。
通則1の規定に従うには以下の手順に沿って品目分類を行うという事になります。
① 表題から該当する項の見当をつけ、各項の規定から分類を決定。
② 項の物品の説明、範囲は関税率表解説・分類例規を参照。
③ 部注、類注に従って分類を決定。
特定の品目のHSコードを特定するには基本的に上記の①から③の手順に沿って
進めていく作業が必要になります。
以下に①から③までの手順の解説を行います。
① 表題から該当する項の見当をつけ、各項の規定から分類を決定。
「表題」とは以下の「輸入品目表(実行関税率表)の例図」の赤枠と緑枠の
表記の事を言います。
HSを探す際に一番最初に参考にする手がかりになりますので、
この表示だけに従って分類をしたくなってしまうのですが、
通則1ではこの「表題」だけを根拠に品目分類を行わないとする規定が
ありますので注意が必要です。
通則1では「表題は、単に参照上の便宜のために設けたものである。」
と定義されており、これらの表題は、物品の所属を決定するうえで法的な性格を
持たない為、あくまでも見当をつける際に利用するものとなります。
そのため、品目分類を行う為には「表題」ではなく通則1の中段で定められている
「項の規定及びこれに関係する部又は類の注の規定」に従う必要があります。
言い換えればHS選定の基礎となる法的性格を持つ規定は
「項の規定」「部注の規定」「類注の規定」という事になります。
まずは「項の規定」とは何かを解説します。
輸入品目表(実行関税率表)を開くと品目表の年度一覧が表示されますので、
最新の品目表を選択します。(※輸出の品目表は輸出統計品目表)
すると以下のように「部の表題」と「類の表題」の一覧が表示されますので、
ここから該当する項目(類)の見当をつけて、その横の「税率」をクリックします。
(※輸出の品目表は「品目表」をクリック)
各類の詳細ページに移動後、以下の品目表例の紫で囲っている部分(項の規定)
をよく読み、「~に限る」、「~を除く」、「~であるかないかを問わない」などの
表現に注意して該当するHSコードを検討します。
例:4404項の規定
例:4420項の規定
上記手順に沿って品目分類を進めていくと、その時点でHSコードの特定が
できるように見える場合もありますが、通則1では更に以下の②、③の手順も
行うよう規定があります。
なぜならば①でHSコードが特定できたと思っても②③にて参照する規定では
別のHSコードに該当する旨の規定がある場合があります。
このような場合は②③での規定が優先される事になりますので①で特定したHSから
意図しない別のHSに分類される事がありますので①の分類方法だけでHSの
最終決定はできません。
② 項の物品の説明、範囲は関税率表解説・分類例規を参照。
上記①の手順にて輸入品目表(実行関税率表)(※輸出の品目表は輸出統計品目表)
にて該当HSの絞り込みを行った後は更にそのHSの属する関税率表解説・分類例規を
確認し、確実にその絞り込みが正しいのか、除外規定が無いかどうかを確認します。
関税率表解説・分類例規のページを参照すると以下の図のようになっており、
赤枠部分が「関税率表解説」で緑枠部分が「分類例規」となります。
(分類例規は全国共通版の「国際例規」と日本版の「国内例規」の2種類がある)
関税率表解説・分類例規は品目表では規定しきれない細かい規定が列挙されております。
例:44類の関税率表解説
例:44類の国際例規
③ 部注、類注に従って分類を決定。
先ほどの②と同じ関税率表解説・分類例規のページの各部のリンクから確認
例:以下の赤枠リンクが4部の部注、6部の部注へのリンクになります。
上記の例では16類から24類に分類されると考えられる品目は第4部に包括される為、
4部の「部注の規定」を確認する事になります。
25類から27類は第5部に包括されますが現時点では第5部に「部注の規定」はありません。
例:4部の注
次は「類注の規定」です。
類注の規定は輸入品目表(実行関税率表)(※輸出の品目表は輸出統計品目表)を
開いて最新年度クリックした次のページにて表示されます。
例:44類の注
通則1のまとめ
ここまで通則1の規定をご覧いただいて一つのHSコードを特定する為に
多くの資料を並行して参照しなければならない事がお分かりいただけたかと思います。
① 表題から該当する項の見当をつけ、各項の規定から分類を決定。
輸入品目表を参照(※輸出の品目表は輸出品目表)
② 項の物品の説明、範囲は関税率表解説・分類例規を参照。
関税率表解説・分類例規を参照(※輸出入共通)
③ 部注、類注に従って分類を決定。
関税率表解説・分類例規を参照して部注を参照(※輸出入共通)
輸入品目表を参照して類注を参照(※輸出の品目表は輸出品目表)
もっと平たく表現すると、例えば「編物の衣類」を輸入する場合に
該当品目のHSコードを調べるには最低でも以下の6種類の資料を参照し、
品目分類を決定します。
①輸入品目表 「編み物の衣類」に分類される61類の関税率表
②解説 「編み物の衣類」に分類される61類の関税率表の解説
②国際例規 「編み物の衣類」に分類される61類の国内例規
②国内例規 「編み物の衣類」に分類される61類の国際例規
③部注規定 「編み物の衣類」に分類される61類が属する11部の注(規定)
③類注規定 「編み物の衣類」に分類される61類の注(規定)
一つの品目のHSコードを特定する為に最低でもこの6種類の資料を横断
するのは非常に手間のかかる作業となります。
本サイト関税削減.comのトップページではこれら資料を各品目の類毎に
横断的にリンクを設定しておりますので是非ご活用ください。
通則1のケーススタディー
通則1でどのようにして品目分類を行うか「木製の家具」を対象とした
ケーススタディーを紹介します。
東京税関 業務部 首席関税鑑査官部門「品目分類について」より
輸入品目表(実行関税率表)の一覧を見ると44類に「木材及びその製品」という
記述があるので、この44類の「税率」クリックして項の規定を確認します。
そして44類の項の規定を上から順に確認していきますが、特に
「家具、たんす」といった記述が無い為、「その他の木製品」→「その他のもの」
に該当すると判断し、4421.99に該当するかと考えます。
※実行関税率表を一部改変
しかし、44類の解説を確認すると以下のような除外規定があります。
赤枠の文言にて除外規定を列挙しており、青枠で家具が除外対象である事が
わかります。
除外規定(o)を読むと「家具」は94類に該当する事がわかりますので、
ここでやっと輸入品目表(実行関税率表)の94類に到達する事ができます。
①の輸入品目表だけを確認して品目分類を行うと木製の家具は4421.99に
分類すると判断してしまいそうになりますが、
②の解説を読む事によって木製の家具の正しい品目分類は9403.60である
という事が判明します。
このように正しい品目分類を行う上で上記6種類の資料の確認は必須となります。
この原則に従っても品目分類ができない場合には次の「通則2」で
品目分類を行う事になります。
通則2
これは分解してあるもので組み立てて製品になるものや
少々部品が足りなくてもその製品の特長が大きく出ている物は
完成品のHSコードに該当するという意味です。
テーブルの脚が分解されていても、車のタイヤが外れた状態でも
それぞれテーブルのHS、車のHSが該当するという事です。
通則2は2種類ありますが上記の1点だけ覚えて頂ければ結構です。
通則3-A
通則1でも2でもHS分類ができず、
複数のHSに該当する場合は通則3に行きます。
通則の3は3-A,B,Cと3種類に分かれます。
まずは通則3-Aです。
HS選定作業では製品が複数のHSに該当するケースがあります。
例えば車のゴムタイヤがそうです。
車の部分品HS8708にも
ゴム製のタイヤHS4011のどちらにも該当しそうです。
通則3-Aというのは最も限定的、特殊な表現をした品名のHSを
選定しなさいという意味です。
車の部分品という分類は広く抽象的です。
それに対しゴム製のタイヤという分類は上記より限定的です。
つまり車のタイヤに関してはHS4011の方が適切であるという
判断に用いられる基準となります。
その他の例ではゴム製の水泳帽があります。
ゴム製その他の製品HS4016か
帽子HS6505で悩みそうですが
その他で包括されるより帽子で特定される方がより限定的な為、
水泳帽は帽子に分類される事になります。
通則3-B
通則3-Aで分類できない場合は通則3-Bを検討します。
2種類以上の材料(プラと鉄など)で製造された製品や
複数の機能を持つ製品の為、通則3-Aの限定的分類も適用できない場合は
通則3-B「重要な特性を与えている材料、機能等によって分類」します。
以下に例を紹介します。
金属のフレームの写真立ての中に50枚の写真が入る
プラスチック製のポケットを有する製品があります。
こちらは金属製のフレームHS8306か
プラスチック製品HS3926で迷うところです。
通則3-Bは重要な特性を持つ部分に対して分類をするという事なので
鉄製のフレームとプラ製のポケットのどちらが重要な特性かを
見極める必要があります。
鉄製のフレームはどこにでも売っている製品かと思われますが
プラ製のポケットで50枚の写真を入れるアルバムって
少しマニアックな感じがしませんか?
この例ではマニアックな特徴を重要な特性としている為、
プラ製のその他の製品HS3926に分類されました。
その他の例ではパスタ料理用セットがあります。
パスタの麺と調味料の小売りセットになった製品など
複数のHSに該当するものが一つにまとまっている場合も
同じく通則3-Bの考え方を適用します。
この例では重要な特性はパスタの麺そのものであると考えられ
パスタのHSコードが小売りセットに対して適用されます。
何が重要な特性なのかという部分については人によって
見解が異なる部分もありますので十分注意が必要です。
通則3-C
通則の3-Aの最も限定的な表現のHSも
通則の3-Bの重要な特性もなく、
完全に複数のHSに該当する場合はこの通則3-Cを適用します。
完全に複数のHSに該当する場合というのは
例えばT-シャツの材質が綿50%とポリエステル50%で
作られている場合等に該当します。
以下の実行関税率表をご覧ください。
綿製のT-シャツはHS6109-10に該当します。
ポリエステル製のT-シャツはHS6109.90に該当します。
このT-シャツは両方の材質を均等に含むため、
2つのHSに該当してしまいます。
この場合は通則3-Cを適用して数字上で上の品目を選択するという
事になります。
6109.10と6109.90では後者の方が数字上で上になります。
つまり綿50%ポリエステル50%のT-シャツは
ポリエステル製のHS6109.90に該当します。
(T-シャツの場合、ポリエステルはその他の紡織用繊維に包括)
通則3-Cはこのような考え方になります。
これ以降の通則の詳細
ここまで簡単にHS選定における通則を紹介しました。
更に詳細に解説された税関資料による通則の解説がありますので
こちらもご参考にしてください。
ネットでのHSコード検索方法
HSコードはネットでの検索も可能です。
以下のリンクは現場の通関士も使用している非常に有益なツールです。
但し、単にキーワードのみで検索し、判断してしまうと思わぬ落とし穴に
はまる事もあります。
一通り今まで解説してきた「通則」を理解した上で検索してください。
こちらはHSコードタリフのメインとなります。
キーワード検索はできませんし、見づらいです。
一応税関HPにあるHSタリフのメインなので紹介します。
■WEBタリフ
上記の実行関税率表を分かり易く表示するサイトです。
キーワード検索もできますし、英語版もあります。
更に原産地を指定すれば特恵関税率も表示されます。
HSタリフを更に細かく解説した文書です。
各HSごとにありますので、HSタリフに直接品名がないものは
こちらから更に詳細に調べる事ができます。(全てPDF)
税関に対し貨物のHSを確認した事例が掲載されております。
こちらはキーワードで検索が可能です。
基本的に日本の税関はこの実績を重要視しておりますので
ここで出てきた品目詳細が完全一致するものがあればすぐに
HSの選定が可能です。(通則に注意)
■WorldTariff
世界の関税率を検索する事ができます。
無料のユーザー登録が必要です。
■NationalTariff
世界の関税率をHS9桁レベルで調べる事ができます。
キーワード検索はできる国とできない国があります。
■TariffDownloadFacility
世界の関税率を6桁レベルで各号の平均関税率をエクセルや
csvなどでダウンロードできます。
関税率は各号の平均値である事に注意してください。
■世界の税関HP一覧
HSコードの頭6桁は全世界共通ですが、それ以降のHSは国によって異なり、
関税率も輸出先の国によって変動します。
このリンクは各国の税関あるいは関連機関へのリンクとなっておりますので
ダイレクトに検索したいという場合に有効です。
■米国税関(CBP)事前教示回答事例
輸入者から米国税関に品目分類の照会をした際の回答事例のデータベース。
日本の税関に対して品目分類の事例としての拘束力を持たないが
数十万件の回答事例が保存されており、HS6桁レベルでの分類であれば
分類範囲は基本的には共通である為、豊富な分類事例を知る事ができる。
(アメリカ向けの貨物のHS分類に関しては強力な事例となり得る。)
■欧州(EU)税関事前教示回答事例
輸入者から欧州税関に品目分類の照会をした際の回答事例のデータベース。
日本の税関に対して品目分類の事例としての拘束力を持たないが
EU加盟国全てに対して行われた品目分類照会の回答事例が保存されており、
HS6桁レベルでの分類であれば分類範囲は基本的には共通である為、
豊富な分類事例を知る事ができる。
また、画像付きの事例もあるのでとてもわかりやすい。
(EU向けの貨物のHS分類に関しては強力な事例となり得る。)
HS選定時に絶対必要な調査
HSコードの選定を実行関税率表だけ見て決めるのはとても危険です。
自信があったとしても以下の手順は最低限必要です。
類注を確認する
該当すると思われるHSコードの類(HSの頭2桁)ごとに「類注」という
その類全体に対する包括的なルールがありますのでこちらを必ず参照する
必要があります。
ネット上では実行関税率表一覧から年度を指定したページに移動し
以下のリンクをクリックすれば類注を確認する事ができます。
関税率表解説を確認する
関税率表解説を見ると各HSコードの類(頭2桁)に属する品目に対する
より詳細な解説があり、実行関税率表だけでは分類しきれない品目がここに
記載されております。
自信を持ってHS分類をしてもこの解説をよく見たら間違えだったという事も
多々ありますのでこちらもじっくりと熟読する必要があります。
各類に対して「関税率表解説」「例規(分類事例)」へのリンクがあります。
関税率表解説はWCOのExplanatory Note(解説書)が基になっており
国際分類例規はWCOのClassification Opinion(分類意見)が基になっており、
国際的なHS分類の判断基準となるため、輸出先の税関に意見を述べる際にも
有効な情報となります。(国内例規は基本的には日本国内のみの事例)
事前教示回答事例を確認する
HSコードを調べたい貨物の名称等を事前教示回答事例で検索すると
過去の分類事例を検索する事ができます。
HS確定に至るまでの経緯が詳細に記録されておりますので
非常に有効な情報源となります。
税関に聞く
上記の手順を踏んでも不安はそう簡単に拭えないかと思います。
そういった場合は税関に相談するのが一番です。
税関による事前教示制度を利用すればHS分類の事前相談が可能です。
輸出する場合は相手国の税関に質問する事になりますので
現地の輸入者やブローカーを通じて聞くという形が良いでしょう。
海外の税関でも事前教示制度は広く存在しておりますので
面倒でも万が一の事を考えて利用する事を強くお勧めします。
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