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関税削減.com【HSコード分類事例の解説】

世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。

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関税評価

関税評価協定全文

最終更新日2018年6月12日 By 河副太智 Leave a Comment

千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に関する協定

序説

  1. この協定の下における課税価額の決定のための主たる基礎は、第一条に定める「取引価額」である。第一条は、関税上の価額の一部を構成すると認められる特定の要素が買手により負担される場合であって、輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に当該特定の要素が含まれていないときの調整について特に規定する第八条と併せて解釈される。第八条は、また、金銭の形態ではなく特定の物品又は役務の形態で買手から売手に提供されるものの価額を取引価額に含めることについて定めている。第二条から第七条までの規定は、第一条の規定により課税価額を決定することができない場合におけるその決定方法について定めている。
  2. 第一条の規定により課税価額を決定することができない場合には、通常、第二条又は第三条の規定に基づき課税価額の基礎について合意に達することを目的として、関税当局と輸入者との間で協議が行われるべきである。例えば、輸入貨物について、関税当局が輸入港で直ちに入手し得ない同種貨物又は類似貨物の課税価額に関する情報を輸入者が有しており、他方、輸入者が容易に入手し得ない同種貨物又は類似貨物の課税価額に関する情報を関税当局が有していることがあり得る。関税当局と輸入者との間の協議は、関税上の価額の適切な基礎を決定するための情報の交換(商業上の秘密を害するものではない。)を可能にする。
  3. 第五条及び第六条は、輸入貨物、同種貨物又は類似貨物の取引価額に基づいて課税価額を決定することができない場合において、当該課税価額を決定するための二の基礎について定めている。第五条1の規定による課税価額の決定は、貨物が、輸入国において輸入された時の状態で特殊の関係にない買手に販売されたときの価格に基づいて行う。輸入者は、輸入後新たな加工を施される貨物について、自ら要請する場合には、第五条の規定に基づいて評価を受ける権利を有する。第六条の規定による課税価額の決定は、積算価額に基づいて行う。これらの二の方法はいずれもある種の困難を有しているので、輸入者は、第四条の規定によりこれらの二の方法の適用の順序を選択する権利を与えられる。
  4. 第七条は、第一条から第六条までのいずれの規定によっても課税価額を決定することができない場合における課税価額の決定方法について定めている。

加盟国は、

多角的貿易交渉に考慮を払い、

千九百九十四年のガットの目的を達成すること及び開発途上国の国際貿易上の一層の利益を確保することを希望し、

千九百九十四年のガット第七条の規定の重要性を認め、また、その実施に一層の画一性及び確実性を与えるように、同条の規定の適用のための規則を詳細に定めることを希望し、

貨物についての公正、画一的かつ公平な関税評価のための制度であって恣し意的な又は架空の課税価額が用いられないようにする制度の必要性を認め、

貨物の関税評価の基礎として、可能な限り、貨物の取引価額が用いられるべきであることを認め、

課税価額が商慣行に適合する簡明かつ衡平な規準を基礎として決定されるべきであること及び関税評価手続が供給源による区別なしに一般的に適用されるべきものであることを認め、

関税評価手続がダンピングに対抗するために用いられるべきでないことを認めて、

ここに、次のとおり協定する。

第一部 関税評価に関する規則

第一条

  1. 輸入貨物の課税価額は、輸入貨物の取引価額、すなわち、貨物が輸入国への輸出のために販売された場合に現実に支払われた又は支払われるべき価格に第八条の規定による調整を加えた額とする。ただし、次のことを条件とする。
    (a)買手による輸入貨物の処分又は使用につき、次の制限以外の制限がないこと。

    (i) 法令又は当局により輸入国において課され又は要求される制限
    (ii) 輸入貨物の再販売が認められる地域についての制限
    (iii) 輸入貨物の価格に実質的な影響を与えない制限

    (b)輸入貨物の販売又は価格に関して輸入貨物の課税価額の決定を不可能とする条件が付されていないこと。
    (c)買手による輸入貨物の再販売、処分又は使用により得られる収益のいかなる部分も、直接的であるか間接的であるかを問わず、売手に帰属しないこと(第八条の規定により適切に調整を加えることができる場合を除く。)。
    (d)売手と買手とが特殊の関係にないこと又は、売手と買手とが特殊の関係にある場合には、輸入貨物の取引価額が2の規定により関税評価上受諾可能なものであること。
  2. (a)輸入貨物の取引価額が1の規定の適用上受諾可能なものであるかないかを決定するに当たっては、売手と買手とが第十五条に定める特殊の関係にあるとの事実のみによって、当該取引価額を受諾できないものとみなしてはならない。そのような事実がある場合には、輸出のための販売に係る状況について検討が行われるものとし、その特殊の関係が輸入貨物の価格に影響を及ぼしていない場合には、当該取引価額が受諾される。関税当局は、輸入者によって提供される情報に照らし又は他の方法により、当該特殊の関係が輸入貨物の価格に影響を及ぼしているとの心証を得た場合には、その理由を輸入者に通知するものとし、また、輸入者は、通知について意見を述べるための適当な機会が与えられる。輸入者が要請する場合には、理由の通知は、書面で行う。
    (b)特殊の関係にある者の間で輸出のための販売が行われた場合において、輸入貨物の取引価額が次の価額(当該輸入貨物の輸出と同時又はほぼ同時に輸出された貨物であって評価がされたものの価額に限る。)のいずれかに近似していることを輸入者が立証したときは、輸入貨物の取引価額が受諾されるものとし、1の規定により輸入貨物の評価がされる。

    (i) 輸入貨物の輸入国への輸出のために同種貨物又は類似貨物が特殊の関係にない買手に販売された場合におけるこれらの取引価額
    (ii) 第五条の規定により決定された同種貨物又は類似貨物の課税価額
    (iii) 第六条の規定により決定された同種貨物又は類似貨物の課税価額

    この検証を行うに当たっては、取引段階、取引数量及び第八条に規定する要素のほか、特殊の関係にある売手と買手との間の販売にあっては売手により負担されないが、特殊の関係にない売手と買手との間の販売にあっては売手により負担される費用に関する立証された差異に妥当な考慮を払う。

    (c)(b)に規定する検証は、輸入者の申出により、価額の比較のためにのみ行われるべきものであって、検証価額を課税価額としてはならない。

第二条

  1. (a)前条の規定により輸入貨物の課税価額を決定することができない場合には、輸入貨物の課税価額は、輸入貨物の輸入国への輸出のために販売され、かつ、当該輸入貨物の輸出と同時又はほぼ同時に輸出された同種貨物の取引価額とする。
    (b)この条の規定の適用に当たっては、輸入貨物の取引段階と同一の取引段階において、かつ、輸入貨物の取引数量と実質的に同一の取引数量により輸出のために販売された同種貨物の取引価額を用いて課税価額を決定する。そのような販売がない場合には、輸入貨物の取引段階と異なる取引段階において及び(又は)輸入貨物の取引数量と異なる取引数量により輸出のために販売された同種貨物の取引価額に取引段階及び(又は)取引数量の差異を考慮に入れて調整を加えた額を用いて課税価額を決定する。ただし、この調整は、適切かつ正確であることを明らかに示す証拠に基づいて行うことができる場合に限るものとし、調整により取引価額が引き上げられることになるか引き下げられることになるかを問わない。
  2. 第八条2に規定する費用が輸入貨物及び同種貨物の取引価額に含まれている場合において、輸送距離及び輸送形態の差異により当該費用につき相当の差異があるときは、当該差異を考慮に入れて調整を行う。
  3. この条の規定の適用に当たり、同種貨物の取引価額が二以上ある場合には、最小の取引価額を用いて輸入貨物の課税価額を決定する。

第三条

  1. (a)前二条の規定により輸入貨物の課税価額を決定することができない場合には、輸入貨物の課税価額は、輸入貨物の輸入国への輸出のために販売され、かつ、当該輸入貨物の輸出と同時又はほぼ同時に輸出された類似貨物の取引価額とする。
    (b)この条の規定の適用に当たっては、輸入貨物の取引段階と同一の取引段階において、かつ、輸入貨物の取引数量と実質的に同一の取引数量により輸出のために販売された類似貨物の取引価額を用いて課税価額を決定する。そのような販売がない場合には、輸入貨物の取引段階と異なる取引段階において及び(又は)輸入貨物の取引数量と異なる取引数量により輸出のために販売された類似貨物の取引価額に取引段階及び(又は)取引数量の差異を考慮に入れて調整を加えた額を用いて課税価額を決定する。ただし、この調整は、適切かつ正確であることを明らかに示す証拠に基づいて行うことができる場合に限るものとし、調整により取引価額が引き上げられることになるか引き下げられることになるかを問わない。
  2. 第八条2に規定する費用が輸入貨物及び類似貨物の取引価額に含まれている場合において、輸送距離及び輸送形態の差異により当該費用につき相当の差異があるときは、当該差異を考慮に入れて調整を行う。
  3. この条の規定の適用に当たり、類似貨物の取引価額が二以上ある場合には、最小の取引価額を用いて輸入貨物の課税価額を決定する。

第四条

前三条の規定により輸入貨物の課税価額を決定することができない場合には、輸入貨物の課税価額は、次条の規定により決定する。同条の規定により輸入貨物の課税価額を決定することができない場合には、第六条の規定により決定する。ただし、輸入者が要請する場合には、次条の規定に先立って第六条の規定を適用する。

第五条

  1. (a)輸入貨物、同種貨物又は類似貨物が輸入された時の状態で輸入貨物の輸入国において販売される場合には、輸入貨物の課税価額は、これらの貨物が、輸入貨物の輸入と同時又はほぼ同時に、国内の売手と特殊の関係にない国内の買手に最大の合計数量で販売されたときの単価から次の費用等を控除した額に基づいて決定する。

    (i) 輸入貨物の輸入国における同類貨物の販売に関し、通常支払われ若しくはその支払が合意される手数料又は通常付加される利潤及び一般経費
    (ii) 輸入貨物の輸入国において負担される通常の輸送費及び保険に係る費用並びにこれらの関連費用
    (iii) 第八条2に規定する費用(当該費用の控除を適当と認める場合に限る。)
    (iv) 輸入又は国内販売を理由として輸入貨物の輸入国で課される関税及び内国税

    (b)輸入貨物、同種貨物又は類似貨物のいずれもが輸入貨物の輸入と同時又はほぼ同時に国内において販売されない場合には、輸入貨物の課税価額は、販売の時点以外の要件については(a)の規定によることを条件として、これらの貨物が、輸入貨物の輸入の後九十日以内の最も早い日に、輸入された時の状態で輸入国において販売されたときの単価に基づいて決定する。
  2. 輸入貨物、同種貨物又は類似貨物のいずれもが輸入された時の状態で輸入貨物の輸入国において販売されない場合において、輸入者が要請するときは、輸入貨物の課税価額は、輸入貨物が、新たな加工が施された後、国内の売手と特殊の関係にない国内の買手に最大の合計数量で販売されたときの単価に基づいて決定する。この場合には、新たな加工により付加された価額及び1(a)に規定する控除に妥当な考慮を払う。

第六条

  1. この条の規定による輸入貨物の課税価額の決定は、積算価額に基づいて行う。積算価額は、次の費用等の額の合計額とする。
    (a)輸入貨物の生産のために必要とされた材料及び組立てその他の加工に係る費用
    (b)同類貨物が輸入貨物の輸出国の生産者により輸入国への輸出のために販売される場合において、当該同類貨物の価格に通常含まれる利潤及び一般経費の合計額に相当する額
    (c)その他第八条2の規定により加盟国が採用する関税評価の方式において課税価額に含めるべきすべての費用
  2. いずれの加盟国も、積算価額の決定のため、自国の領域に居住していない者に対し、商業帳簿その他これに類する記録を検査のために提出し又は開示することを要求し又は強制してはならない。もっとも、輸入貨物の輸入国の当局は、この条の規定による課税価額の決定のために輸入貨物の生産者により提供された情報について、当該生産者の同意を得て他の国において確認を行うことができる。この場合において、輸入貨物の輸入国の当局が当該他の国の政府に可能な限り速やかに事前の通報をすること及び当該他の国の政府が確認を行うことに反対しないことを条件とする。

第七条

  1. 前各条の規定により輸入貨物の課税価額を決定することができない場合には、輸入貨物の課税価額は、この協定及び千九百九十四年のガット第七条の原則並びにこれらの一般規定に適合する方法により、輸入貨物の輸入国において入手可能なデータに基づいて決定する。
  2. この条の規定による輸入貨物の課税価額の決定は、次の価格等に基づいて行ってはならない。

    (a) 輸入貨物の輸入国において生産された貨物の当該輸入国における販売価格
    (b) 関税評価のために特定の二の価額のうちいずれか大きい方の価額の採用について定める制度
    (c) 輸出国の国内市場における貨物の価格
    (d) 前条に定める方法により同種貨物又は類似貨物について既に決定された積算価額以外の積算による価額
    (e) 輸入貨物の輸入国以外の国への輸出のために販売される貨物の価格
    (f) 最低課税価額
    (g) 恣し意的な又は架空の価額

  3. 輸入者が要請する場合には、この条の規定により決定された課税価額及びその決定方法を書面で輸入者に通知する。

第八条

  1. 第一条の規定による課税価額の決定に当たっては、輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に次のものに係る額を加算する。
    (a)次の費用(買手により負担されるこれらの費用の額が輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に含まれていない場合には、含まれていない限度においてこれらの額が加算される。)

    (i) 手数料及び仲介料(買付手数料を除く。)
    (ii) 関税評価上輸入貨物と一体を成すものとして取り扱われる容器の費用
    (iii) 包装に係る費用(人件費であるか材料費であるかを問わない。)

    (b)輸入貨物の輸出のための生産及び販売に関連して無償で又は値引きをして直接又は間接に買手により提供された次の物品及び役務の価額であって、適切にあん分されたもの(これらの価額が輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に含まれていない場合には、含まれていない限度においてこれらの価額が加算される。)

    (i) 輸入貨物に組み込まれている材料、コンポーネント、部分品及びこれらに類する物
    (ii) 輸入貨物の生産に使用された工具、ダイス、鋳型及びこれらに類する物
    (iii) 輸入貨物の生産過程で消費された物
    (iv) 輸入貨物の生産のために必要とされた技術、考案、工芸、意匠及び設計であって輸入国以外の国において開発されたもの

    (c)輸入貨物に関連のあるロイヤルティ及びライセンス料であって輸入貨物の販売条件として買手が直接又は間接に支払わなければならないもの(ロイヤルティ及びライセンス料が輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に含まれていない場合には、含まれていない限度においてこれらの料金が加算される。)
    (d)輸入貨物の再販売、処分又は使用により得られる収益の額であって直接又は間接に売手に帰属するもの
  2. 各加盟国は、自国の法令の制定に当たり、次の費用の額の全部又は一部を課税価額に含めるか含めないかについて定める。
    (a)輸入貨物の輸入港又は輸入地までの輸送費用
    (b)輸入貨物の輸入港又は輸入地までの輸送に伴う積卸しその他の取扱いに要する費用
    (c)保険に係る費用
  3. 輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格へのこの条の規定による加算は、客観的かつ数値化されたデータに基づいてのみ行う。
  4. この条に規定する場合を除くほか、輸入貨物の課税価額の決定に当たり、現実に支払われた又は支払われるべき価格への加算を行ってはならない。

第九条

  1. 輸入貨物の課税価額の決定のために通貨の換算が必要な場合において用いられる為替換算率は、輸入貨物の輸入国の権限のある当局が適時に公表する為替換算率とし、当該為替換算率が公表される文書において対象とされる期間における商取引に使用される通貨の時価を可能な限り正確に輸入国の通貨で表示するものでなければならない。
  2. 為替換算率については、各加盟国の定めるところにより、輸出又は輸入のいずれかの時において有効なものを用いる。

第十条

その性質上秘密とされるべき情報又は秘密のものとして関税評価のために提供された情報は、関係当局により厳重に秘密のものとして取り扱われる。関係当局は、当該情報を提供した者又は政府の明示的な同意を得ないで、当該情報を開示してはならない。ただし、司法手続において当該情報の開示が要求される場合は、この限りでない。

第十一条

  1. 各加盟国は、自国の法令において、輸入者又は関税を納付すべき他の者が、不利益を受けることなく輸入貨物の課税価額の決定について不服申立てをする権利を定める。
  2. 各加盟国は、自国の法令において、司法機関に対し不利益を受けることなく不服申立てをする権利を定める。もっとも、不利益を受けることなく行う第一次的な不服申立ては、関税当局内の機関又は独立の機関に対してすることを定めることができる。
  3. 不服申立てについての裁定は、不服申立てをした者に通知されるものとし、裁定の理由は、書面で通知される。不服申立てをした者は、更なる不服申立てをする権利について通知される。

第十二条

この協定を実施するための法令、司法上の決定及び一般に適用する行政上の決定は、千九百九十四年のガット第十条の規定により輸入国によって公表される。

第十三条

輸入貨物の課税価額の決定過程において、その決定を遅らせる必要が生じた場合には、輸入貨物の輸入者は、必要に応じ、保証人による保証、保証金又は他の適当な保証手段の形態で、輸入貨物に対して課することのできる関税の最高額を担保するために十分な保証を提供することを条件として、輸入貨物を税関から引き取ることができる。このような場合について、各加盟国は、自国の法令において定める。

第十四条

附属書1は、この協定の不可分の一部を成す。この協定の各条の規定は、当該各条についての注釈に照らして解釈され、適用される。附属書2及び附属書3も、この協定の不可分の一部を成す。

第十五条

  1. この協定において、
    (a)「輸入貨物の課税価額」とは、従価による関税の賦課のための輸入貨物の価額をいう。
    (b)「輸入国」とは、輸入を行う国又は関税地域をいう。
    (c)「生産」には、生育、製造及び採掘を含む。
  2. この協定において、
    (a)「同種貨物」とは、形状、品質及び社会的評価を含むすべての点において輸入貨物と同一である貨物をいう。外見上微細な差異があってもその他の点においてはこの定義に合致する貨物を同種貨物とみなすことは、妨げない。
    (b)「類似貨物」とは、輸入貨物とすべての点においては同一でないが同様の形状及び材質の貨物であって輸入貨物と同一の機能を有し、かつ、輸入貨物との商業上の交換が可能である貨物をいう。貨物の品質、社会的評価及び商標は、当該貨物が類似貨物であるかないかの決定に当たり考慮すべき要素に含まれる。
    (c)「同種貨物」及び「類似貨物」には、輸入貨物の輸入国で開発されたために第八条1(b)(4)の規定による調整が加えられなかった技術、考案、工芸、意匠又は設計が使用され又は取り入れられている貨物を含めない。
    (d) 輸入貨物の生産国において生産された貨物以外の貨物は、「同種貨物」又は「類似貨物」とみなしてはならない。
    (e)輸入貨物の生産者により生産された同種貨物又は類似貨物がない場合に限り、当該生産者以外の者により生産された同種貨物又は類似貨物を考慮に入れる。
  3. この協定において「同類貨物」とは、輸入貨物と同一の産業又は産業部門において生産された貨物であって輸入貨物と同一の部類に属する貨物をいい、同種貨物及び類似貨物を含む。
  4. この協定の適用上、特殊の関係にあるとされる者は、次のいずれかの場合の両者とする。
    (a)両者が相互にそれぞれの事業に係る取締役その他の役員となっている場合
    (b)両者がその行う事業の法的に認められた共同経営者である場合
    (c)両者が雇用者と被用者の関係にある場合
    (d)両者の事業に係る議決権を伴う社外株式のそれぞれ五パーセント以上が、いずれかの者によって直接又は間接に所有され、管理され又は所持されている場合
    (e)両者のいずれか一方の者が他方の者を直接又は間接に支配している場合
    (f)両者が同一の第三者によって直接又は間接に支配されている場合
    (g)両者が共同して同一の第三者を直接又は間接に支配している場合
    (h)両者が同一家族の構成員である場合
  5. 一方の者が、他方の者の総販売代理店、独占販売者又は権利専有者(いかなる名称が付されているかを問わない。)であるという点で両者が業務上の関連を有する場合には、両者は、特殊の関係にあるものとみなされる。もっとも、両者が4の規準に該当する場合に限る。

第十六条

輸入者は、書面で要請する場合には、自己の輸入貨物の課税価額の決定方法についての説明を輸入国の関税当局から書面で受ける権利を有する。

第十七条

この協定のいかなる規定も、関税評価のために行われた陳述若しくは申告又は提出された文書が真実を述べたものであるかないか又は正確なものであるかないかについて検討する関税当局の権利を制限し、又はこの権利について疑義を差し挟むものと解してはならない。

第二部 運用、協議及び紛争解決

第十八条 機関

  1. 各加盟国の代表で構成する関税評価に関する委員会(この協定において「委員会」という。)をこの協定により設置する。委員会は、議長を選出するものとし、いずれかの加盟国による関税評価制度の運用であってこの協定の実施又はこの協定の目的の達成に影響を及ぼすものに関する事項について協議する機会を加盟国に与えるため、及び加盟国により与えられたその他の任務を遂行するため、通常年一回会合し、また、この協定の関連規定の定めるところにより会合する。世界貿易機関事務局は、委員会の事務局として行動する。
  2. 関税協力理事会の主催する関税評価に関する技術委員会(この協定において「技術委員会」という。)を設置する。技術委員会は、附属書2に定める手続規則に従い、同附属書に規定する任務を遂行する。

第十九条 協議及び紛争解決

  1. この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定に係る協議及び紛争解決には、紛争解決了解を適用する。
  2. 加盟国は、この協定に基づき直接若しくは間接に自国に与えられた利益が他の加盟国の措置によって無効にされ若しくは侵害されており又はこの協定の目的の達成が他の加盟国の措置によって妨げられていると認める場合には、問題の相互に満足すべき解決を図るため、当該他の加盟国に対して協議を要請することができる。各加盟国は、協議の要請に対し好意的な考慮を払う。
  3. 技術委員会は、要請に応じ、協議を行う加盟国に対し、助言及び援助を与える。
  4. この協定の規定に係る紛争を検討するために設けられる小委員会は、紛争当事国の要請又は自己の発意により、技術的検討を要する事項を検討するよう技術委員会に対し要請することができる。小委員会は、特定の紛争について技術委員会の付託事項を決定し、及び技術委員会の報告を受理する期間を定める。小委員会は、技術委員会の報告を考慮に入れる。技術委員会においてこの4の規定に基づいて付託された事項についてコンセンサスに達することができない場合には、小委員会は、紛争当事国に対し、当該事項についての見解を小委員会に表明する機会を与えるべきである。
  5. 小委員会に提供された秘密の情報は、当該情報を提供した者、団体又は当局の正式の同意を得ないで開示してはならない。秘密の情報の開示が小委員会に対して要求された場合において、小委員会による当該情報の開示につき同意が得られないときは、当該情報の秘密でない要約であってその開示につき当該情報を提供した者、団体又は当局の同意が得られたものが提供される。

第三部 特別のかつ異なる待遇

第二十条

  1. 千九百七十九年四月十二日に作成された関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に関する協定の締約国でない開発途上加盟国は、世界貿易機関協定が自国について効力を生ずる日から五年以内の期間この協定の規定の適用を延期することができる。当該延期をする開発途上加盟国は、世界貿易機関事務局長にその旨を通報する。
  2. 千九百七十九年四月十二日に作成された関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に関する協定の締約国でない開発途上加盟国は、1の規定によるほか、第一条2(b)(iii)及び第六条の規定の適用を、この協定の規定(第一条2(b)(iii)及び第六条の規定を除く。)を適用した日から三年以内の期間延期することができる。当該延期をする開発途上加盟国は、世界貿易機関事務局長にその旨を通報する。
  3. 先進加盟国は、技術援助を要請する開発途上加盟国に対し、相互に合意する条件で技術援助を提供するものとし、技術援助に関する計画を立案する。技術援助には、特に、人員の養成、この協定の実施に関する措置に係る準備に対する援助、関税評価方法に関する情報の提供及びこの協定の規定の適用に関する助言を含めることができる。

第四部 最終規定

第二十一条 留保

この協定のいかなる規定についても、他のすべての加盟国の同意なしには、留保を付することができない。

第二十二条 国内法令

  1. 各加盟国は、この協定が自国について適用される日以前に、自国の法令及び行政上の手続をこの協定に適合したものとすることを確保する。
  2. 各加盟国は、この協定に関連を有する法令の変更及びその運用における変更につき、委員会に通報する。

第二十三条 討検

委員会は、この協定の目的を考慮に入れて、この協定の実施及び運用について毎年検討する。委員会は、検討の対象となった期間における進展について物品の貿易に関する理事会に毎年通報する。

第二十四条 事務局

この協定に必要な役務は、世界貿易機関事務局が提供する。ただし、技術委員会に与えられた任務に必要な役務は、関税協力理事会事務局が提供する。

附属書1 解釈のための注釈

一般的注釈

関税評価方法の適用の順序

  1. 第一条から第七条までの規定は、この協定の下における輸入貨物の課税価額の決定方法について定めている。輸入貨物の課税価額の決定に関するこれらの方法は、適用されるべき順序に従って配列されている。関税評価に関する基本的な方法は、第一条に規定されている。同条に定める条件が満たされる場合にはいつでも、輸入貨物は、同条の規定により評価される。
  2. 第一条の規定により課税価額を決定することができない場合には、順次第二条以下の条の規定により課税価額の決定を試みるものとし、課税価額の決定を可能にする条の規定により課税価額を決定する。第四条ただし書に規定する場合を除くほか、特定の条の規定により課税価額を決定することができない場合に限り、当該特定の条の次の条の規定によることができる。
  3. 第五条の規定に先立って第六条の規定を適用することを輸入者が要請しない限り、配列の順序に従ってこれらの条の規定を適用する。輸入者がそのような要請を行った場合において、第六条の規定により課税価額を決定することができないと判明したときは、第五条の規定により課税価額の決定(可能である場合に限る。)を行う。
  4. 第一条から第六条までの規定により課税価額を決定することができない場合には、第七条の規定により課税価額を決定する。

一般的に認められている会計原則の使用

  1. 「一般的に認められている会計原則」とは、次の事項につき、ある国において特定の時に、一般的に認められている又は十分に権威のある支持を得ている会計原則をいう。

    資産又は負債として記録すべき財産又は債務
    記録すべき資産及び負債の変化
    資産及び負債並びにこれらの変化についての算定方法
    開示すべき情報の範囲及び開示の方法
    作成すべき財務書類

    これらの規準は、一般的に適用される概括的な指針をもって足りるが、詳細な手続及び慣行であることを妨げない。

  2. この協定の適用上、関税当局は、適用する条に応じ、いずれか適当な国において一般的に認められている会計原則に適合する方法で作成された資料を利用する。例えば、第五条に規定する通常の利潤及び一般経費の額の決定に当たっては、輸入国において一般的に認められている会計原則に適合する方法で作成された資料を利用するものとする。他方、第六条に規定する通常の利潤及び一般経費の額の決定に当たっては、輸出国において一般的に認められている会計原則に適合する方法で作成された資料を利用するものとする。更に、第八条1(b)(ii)に規定する工具等であって輸入国において生産されたものの額の決定に当たっては、輸入国において一般的に認められている会計原則に適合する方法で作成された資料を利用するものとする。

第一条の規定に関する注釈

現実に支払われた又は支払われるべき価格

  1. 現実に支払われた又は支払われるべき価格とは、輸入貨物につき、売手に対し又は売手のために、買手により行われた又は行われるべき支払の総額をいう。支払は、必ずしも金銭の移転によるものであることを要しない。支払は、信用状又は譲渡可能な証書で行うことができる。支払は、直接的なものであるか間接的なものであるかを問わない。間接的な支払の例としては、売手が負っている債務の全部又は一部を買手が弁済することが挙げられる。
  2. 買手が自己のために行う活動のうち第八条に規定する調整の対象となる活動以外の活動に係る支払は、売手の利益になると認められる活動に係るものであっても、売手に対する間接的な支払とはみなされない。したがって、そのような活動に係る費用は、課税価額の決定に当たり、現実に支払われた又は支払われるべき価格に加算しない。
  3. 次の費用は、課税価額に含めない。ただし、輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格と区別されない場合は、この限りでない。
    (a) 工業用プラント、機械又は設備等の輸入貨物の輸入の後に行われる建設、組立て、整備又は技術援助に係る費用
    (b) 輸入後の輸送費
    (c) 輸入国の関税その他の租税
  4. 現実に支払われた又は支払われるべき価格は、輸入貨物に係る価格をいい、買手による売手への配当金の移転その他の支払であって輸入貨物と関係のないものは、課税価額には含まれない。

第一条1(a)(iii)の規定に関し、

輸入貨物の価格に実質的な影響を与えない制限は、現実に支払われた又は支払われるべき価格の受諾を不可能にする制限には含まれない。このような制限の例としては、自動車の売手が買手に対しモデルイヤーの初日に先立って販売又は展示を行うことを禁止する場合が挙げられる。

第一条1(b)の規定に関し、

  1. 輸入貨物の販売又は価格に関して輸入貨物の課税価額の決定を不可能にする条件が付されている場合には、取引価額は、関税評価上受諾できないものとする。このような場合の例としては、次の場合が挙げられる。

    (a) 輸入貨物の買手が特定の数量の他の貨物をも購入することを条件として、売手が輸入貨物の価格を設定する場合
    (b) 輸入貨物の買手が売手に販売する他の貨物の価格に輸入貨物の価格が依存している場合
    (c) 輸入貨物の売手が、特定の数量の完成品を受け取ることを条件として、その半製品である輸入貨物を買手に提供する形態その他これに類する特殊な支払の形態を基礎として、輸入貨物の価格が設定される場合

  2. もっとも、輸入貨物の生産又は再販売に関連する条件が付されていることにより取引価額の受諾が拒否されてはならない。例えば、第一条の規定の適用上、輸入国で開発された技術及び設計を買手が売手に提供したという事実のみによって、取引価額の受諾が拒否されてはならない。同様に、買手が自己のために輸入貨物の再販売に関連する活動を行う場合には、売手との間に合意があるときでも、当該活動に係る費用は、課税価額には含まれず、また、当該活動により取引価額の受諾が拒否されてはならない。

第一条2の規定に関し、

  1. 第一条2の(a)及び(b)の規定は、それぞれ取引価額が受諾可能なものであるかないかの決定方法について定めている。
  2. 第一条2(a)の規定は、売手と買手とが特殊の関係にある場合には、販売に係る状況について検討が行われなければならないこと及び、特殊の関係が輸入貨物の価格に影響を及ぼしていない場合には、取引価額が課税価額として受諾されなければならないことを定めている。もっとも、売手と買手とが特殊の関係にあるすべての場合において販売に係る状況について検討が行われることが予定されているものではない。検討は、取引価額が受諾可能なものであるかないかについて疑問がある場合においてのみ、必要とされる。取引価額が受諾可能なものであるかないかについて関税当局が疑問を有しない場合には、輸入者に対して追加の情報の提供を要求することなく、当該取引価額が受諾される。このような場合の例としては、関税当局が、売手と買手との間の特殊の関係について従前に検討したことがあること又は売手及び買手について既に詳細な情報を取得していることにより、当該特殊の関係が輸入貨物の価格に影響を及ぼしていないと認める場合が挙げられる。
  3. 関税当局は、追加の調査を行うことなしには取引価額を受諾することができない場合には、販売に係る状況を検討するために必要な詳細な追加の情報を提供するための機会を輸入者に与える。この場合において、関税当局は、売手と買手との間の特殊の関係が輸入貨物の価格に影響を及ぼしているかいないかを決定するため、取引の種々の側面(売手と買手との間の取引関係の実態及び問題となっている輸入貨物の価格の成立の仕組みを含む。)を検討する用意がなければならない。第十五条の規定により特殊の関係にあると認められる売手と買手とが、特殊の関係にはないような状態で取引を行っていることが明らかとなった場合には、輸入貨物の価格は、特殊の関係によって影響を受けていないことが立証されたこととなる。例えば、輸入貨物の価格が、当該輸入貨物の産業における通常の価格設定の慣行又は特殊の関係にない買手に対する販売における売手の価格設定の方式に適合する方法で設定されている場合には、輸入貨物の価格は、特殊の関係によって影響を受けていないことが立証されたこととなる。また、輸入貨物の価格が、すべての費用に利潤(代表的な期間(例えば一年)に同類貨物を販売することにより得られる企業の利潤の総額を反映する単位当たりの利潤)を加えた額を回収するのに十分な価格であることが明らかとなった場合には、輸入貨物の価格は、特殊の関係によって影響を受けていないことが立証されたこととなる。
  4. 第一条2(b)の規定は、取引価額が、従前に関税当局によって受諾された検証価額に近似しており、したがって、同条の規定の適用上受諾可能なものであることを輸入者が立証するための機会について定めている。同条2(b)に規定する検証に合格した場合には、同条2(a)に規定する影響についての問題を検討する必要はない。関税当局が、詳細な追加の調査を行うことなく、同条2(b)に規定する検証に合格すると認めるに足りる情報を既に取得している場合には、検証に合格するための立証を輸入者に要請してはならない。同条2(b)に規定する「特殊の関係にない買手」は、いかなる場合においても売手と特殊の関係にない買手を意味する。

第一条2(b)の規定に関し、

    1. 取引価額が検証価額に近似しているかいないかの決定に当たっては、種々の要素を考慮に入れなければならない。これらの要素には、輸入貨物の種類、産業の種類、輸入貨物の輸入時期及び取引価額と検証価額との差異が商業上重要であるかないかの問題が含まれる。考慮すべき要素は、場合により異なるので、一定の百分率等の基準をすべての場合に一律に適用することは、適当でない。例えば、取引価額が第一条2(b)に規定する検証価額に近似しているかいないかの決定上、特定の種類の貨物については小さな価額の差異であっても容認することができないことがあるのに対し、他の種類の貨物については大きな価額の差異であっても容認することができることがある。

第二条の規定に関する注釈

  1. 第二条の規定の適用に当たっては、関税当局は、できる限り、輸入貨物の取引段階と同一の取引段階において、かつ、輸入貨物の取引数量と実質的に同一の取引数量により輸出のための販売が行われた同種貨物の取引価額を用いて課税価額を決定する。そのような販売がない場合には、次の三の場合のいずれかに該当する輸出のための販売に係る同種貨物の取引価額を用いて課税価額を決定することができる。

    (a) 取引段階は同一であるが、取引数量が異なる場合
    (b) 取引段階は異なるが、取引数量が実質的に同一である場合
    (c) 取引段階及び取引数量のいずれもが異なる場合

  2. 1に規定する三の場合のいずれかに該当する輸出のための販売があるときは、場合に応じ、次の要素について調整を加える。

    (a) 取引数量
    (b) 取引段階
    (c) 取引段階及び取引数量

  3. 1に規定する三の場合のいずれかに該当する輸出のための販売に係る同種貨物の取引価額を用い、必要な調整を行って課税価額を決定することを可能にするため、「及び(又は)」という文言が用いられている。
  4. 第二条の規定の適用上、同種貨物の取引価額とは、第一条の規定により従前に受諾された課税価額に第二条の1(b)及び2に定める調整を加えた額をいう。
  5. 取引段階又は取引数量が異なることによる調整(調整により取引価額が引き上げられることになるか引き下げられることになるかを問わない。)は、適切かつ正確であることを明らかに示す証拠(例えば、異なる取引段階又は取引数量に対応する価格を示す有効な価格表)に基づく場合にのみ、行うことができる。例えば、輸入貨物が十単位で構成されている場合において、取引価額の存在する唯一の同種貨物が五百単位で輸出のために販売されており、かつ、売手が数量による割引をしていると認められるときは、調整は、当該売手の価格表中、十単位の輸出のための販売に適用される価格を用いて行うことができる。すなわち、その他の単位で行われた輸出のための販売を通じて当該価格表が有効なものであることが立証される場合には、輸出のための販売が十単位で行われたことがあることを要しない。このような客観的な手段がない場合には、第二条の規定による課税価額の決定は、適当でない。

第三条の規定に関する注釈

  1. 第三条の規定の適用に当たっては、関税当局は、できる限り、輸入貨物の取引段階と同一の取引段階において、かつ、輸入貨物の取引数量と実質的に同一の取引数量により輸出のための販売が行われた類似貨物の取引価額を用いて課税価額を決定する。そのような販売がない場合には、次の三の場合のいずれかに該当する輸出のための販売に係る類似貨物の取引価額を用いて課税価額を決定することができる。

    (a) 取引段階は同一であるが、取引数量が異なる場合
    (b) 取引段階は異なるが、取引数量が実質的に同一である場合
    (c) 取引段階及び取引数量のいずれもが異なる場合

  2. 1に規定する三の場合のいずれかに該当する輸出のための販売があるときは、場合に応じ、次の要素について調整を加える。

    (a) 取引数量
    (b) 取引段階
    (c) 取引段階及び取引数量

  3. 1に規定する三の場合のいずれかに該当する輸出のための販売に係る類似貨物の取引価額を用い、必要な調整を行って課税価額を決定することを可能にするため、「及び(又は)」という文言が用いられている。
  4. 第三条の規定の適用上、類似貨物の取引価額とは、第一条の規定により従前に受諾された課税価額に第三条の1(b)及び2に定める調整を加えた額をいう。
  5. 取引段階又は取引数量が異なることによる調整(調整により取引価額が引き上げられることになるか引き下げられることになるかを問わない。)は、適切かつ正確であることを明らかに示す証拠(例えば、異なる取引段階又は取引数量に対応する価格を示す有効な価格表)に基づく場合にのみ、行うことができる。例えば、輸入貨物が十単位で構成されている場合において、取引価額の存在する唯一の類似貨物が五百単位で輸出のために販売されており、かつ、売手が数量による割引をしていると認められるときは、調整は、当該売手の価格表中、十単位の輸出のための販売に適用される価格を用いて行うことができる。すなわち、その他の単位で行われた輸出のための販売を通じて当該価格表が有効なものであることが立証される場合には、輸出のための販売が十単位で行われたことがあることを要しない。このような客観的な手段がない場合には、第三条の規定による課税価額の決定は、適当でない。

第五条の規定に関する注釈

  1. 「最大の合計数量で販売されたときの単価」とは、輸入貨物等が、輸入後における最初の取引段階において、国内の売手と特殊の関係にない国内の買手に販売されたときの最大の販売数量に対応する単価をいう。
  2. 第一の例としては、大きな数量で貨物を購入した者の単価が有利となる次のような価格表により貨物が販売される場合が挙げられる。
    販売単位
    単価
    販売回数
    各単価での総販売数量
    一単位以上一〇単位以下
    一〇〇
    五単位で一〇回及び三単位で五回
    六五
    一一単位以上二五単位以下
    九五
    一一単位で五回
    五五
    二五を超える単位
    九〇
    三〇単位で一回及び五〇単位で一回
    八〇

    特定の単価の下での最大の総販売数量は八十であるので、最大の合計数量で販売されたときの単価は九十となる。

  3. 第二の例としては、販売が二回に分けて行われる場合、すなわち、一回目の販売では九十五通貨単位の単価で五百単位が販売され、二回目の販売では九十通貨単位の単価で四百単位が販売される場合が挙げられる。この例においては、特定の単価の下での最大の総販売数量は五百であるので、最大の合計数量で販売されたときの単価は九十五となる。
  4. 第三の例としては、種々の価格で種々の数量が販売される次のような場合が挙げられる。

    (a) 販売

    販売単位 単価

    四〇単位 一〇〇
    三〇単位 九〇
    一五単位 一〇〇
    五〇単位 九五
    二五単位 一〇五
    三五単位 九〇
    五単位 一〇〇

    (b) 単価別の合計
    各単価での総販売数量 単価

    六五 九〇
    五〇 九五
    六〇 一〇〇
    二五 一〇五

    この例においては、特定の単価の下での最大の総販売数量は六十五であるので、最大の合計数量で販売されたときの単価は九十となる。

  5. 第五条の規定の適用上、輸入貨物等の単価を設定するに当たっては、1に規定する販売であって、輸入貨物の輸出のための生産及び販売に関連して第八条1(b)に規定する物品及び役務のいずれかを無償で又は値引きをして直接又は間接に提供した者に対して行われた販売は、考慮すべきでない。
  6. 第五条1に規定する「利潤及び一般経費」は、一体のものとみなされるべきことに留意すべきである。その控除のための数値は、輸入者により又は輸入者のために提供された資料に基づいて決定されるべきである。ただし、当該資料に基づいて得られる数値が輸入国における同類貨物の販売において得られる数値と乖かい離している場合は、この限りでない。この場合において、利潤及び一般経費の額は、輸入者により又は輸入者のために提供された資料以外の適当な資料に基づいて決定することができる。
  7. 一般経費」には、検討の対象となっている輸入貨物等の国内販売に係る直接又は間接の費用が含まれる。
  8. 輸入貨物等の国内販売を理由として課される地方税(第五条1(a)(4)の規定による控除の対象とされないもの)は、同条1(a)(1)の規定により控除しなければならない。
  9. 第五条1の規定による手数料又は通常の利潤及び一般経費の決定に当たり、特定の貨物が「同類貨物」であるかないかについては、状況に応じて個別に決定されなければならない。この場合においては、必要な資料が入手可能であり、かつ、輸入貨物に最も近似している同類貨物(輸入貨物を含む。)の輸入国における販売について検討すべきである。同条の規定の適用上、「同類貨物」には、輸入貨物の輸出国から輸入される貨物のほか、輸入貨物の輸出国以外の国から輸入される貨物をも含む。
  10. 第五条1(b)の規定の適用上、「最も早い日」とは、輸入貨物、同種貨物又は類似貨物がこれらの貨物の単価を設定するに足りる数量で国内において販売されるに至った日をいう。
  11. 第五条2の規定により輸入貨物の課税価額が決定される場合には、新たな加工により付加された価額についての控除は、加工の費用に関する客観的かつ数値化されたデータに基づいて行われなければならない。一般に受け入れられている産業上の製法、組立方法及び慣習は、控除の額の算定の基礎として認められる。
  12. 第五条2に定める関税評価方法は、新たな加工が施されたため輸入貨物の同一性が失われた場合には、原則として適用することができない。もっとも、同一性が失われた輸入貨物についても、新たな加工により付加された価額を過大な困難を伴うことなく正確に決定することができる場合がある。他方、輸入貨物の同一性が維持されている場合において、輸入国において販売される貨物に当該輸入貨物が微細な要素として組み込まれているにすぎないためこの関税評価方法を用いることが適当でない場合がある。これらの事情に配意して、個別の考慮がされなければならない。

第六条の規定に関する注釈

  1. この協定において、課税価額は、原則として、輸入国において入手可能な資料に基づいて決定される。もっとも、積算価額の決定のためには、輸入国以外の国から入手せざるを得ない輸入貨物の生産費等についての資料について検討する必要がある場合がある。更に、輸入貨物の生産者は、通常輸入国の当局の管轄外にある。積算価額方式の使用は、一般的に、売手と買手とが特殊の関係にある場合において、生産者が輸入国の当局に対して必要な原価計算に関する資料を提供し、かつ、必要とされることのある事後の確認のための便宜を提供する用意があるときに限定される。
  2. 第六条1(a)に規定する「費用」は、生産者により又は生産者のために提供された輸入貨物の生産に関する資料、特に、生産者の商業帳簿(輸入貨物の生産国において一般的に認められている会計原則に適合する商業帳簿に限る。)に基づいて決定されるべきである。
  3. 2の「費用」は、第八条1(a)の(ii)及び(iii)に規定する費用を含むものとし、同条1(b)に規定する物品及び役務であって、輸入貨物の生産に関連して買手により直接又は間接に提供されたものの価額を同条の規定に関する注釈に従って適切にあん分したものを含む。同条1(b)(iv)に規定する技術等であって輸入国において開発されたものの価額は、生産者により負担される限度において、「費用」に含まれる。この3に規定する費用並びに物品及び役務の価額は、積算価額の決定に当たり二重に計算されてはならないものと了解される。
  4. 第六条1(b)に規定する「利潤及び一般経費の合計額に相当する額」は、生産者により又は生産者のために提供された資料に基づいて決定される。ただし、当該資料に示された数値が、輸入貨物の輸出国の生産者が輸入貨物の輸入国への輸出のために同類貨物を販売する際に当該同類貨物の価格に通常含まれる利潤及び一般経費の合計額に係る数値と乖かい離している場合は、この限りでない。
  5. 4の「利潤及び一般経費の合計額に相当する額」は、一体のものとみなされるべきことに留意すべきである。したがって、生産者の利潤の額が低く、かつ、生産者の一般経費が高い場合においても、生産者の利潤及び一般経費の合計額が全体としては、同類貨物の販売において当該同類貨物の価格に通常含まれる利潤及び一般経費の合計額と乖かい離しないことがあり得る。このような状況は、例えば、ある産品を輸入国に進出させる場合において、生産者が当該産品の進出に係る一般経費が高額であることを考慮して利潤を低額又は零にするときに、起こり得る。生産者が、特定の商業上の理由により、貨物の輸出のための販売に際し低い利潤を設定したことを立証できる場合であって、生産者が現実の利潤の額を正当化するに足りる妥当な商業上の理由を有しており、かつ、生産者の価格政策が関係産業部門における通常の価格政策を反映したものであるときは、生産者の現実の利潤の額を考慮に入れるべきである。このような状況は、例えば、生産者が、予見し得なかった需要の減少を理由として、価格を一時的に引き下げなければならない場合、又は生産者が輸入国における貨物の生産を補うための貨物を販売している場合で競争力を維持するために利潤を低くしているときに、起こり得る。生産者により又は生産者のために提供された資料に示された数値が、輸入貨物の輸出国の生産者が輸入貨物の輸入国への輸出のために同類貨物を販売する際に当該同類貨物の価格に通常含まれる利潤及び一般経費の合計額に係る数値と乖かい離している場合には、利潤及び一般経費の合計額に相当する額は、生産者により又は生産者のために提供された資料以外の適当な資料に基づいて決定することができる。
  6. 積算価額の決定のために生産者により又は生産者のために提供された資料以外の資料が用いられた場合において、輸入者が要請するときは、輸入国の当局は、輸入者に対し、第十条の規定に従うことを条件として、当該用いられた資料の出所、用いられたデータ及びそのデータに基づいて行われた計算について通知する。
  7. 第六条1(b)に規定する「一般経費」とは、貨物の輸出のための生産及び販売に係る直接的及び間接的な費用であって同条1(a)に規定する費用以外の費用をいう。
  8. 特定の貨物が「同類貨物」であるかないかについては、状況に応じて個別に決定されなければならない。第六条の規定による通常の利潤及び一般経費の合計額の決定に当たっては、必要な資料が入手可能であり、かつ、輸入貨物に最も近似している貨物(輸入貨物を含む。)の輸入国への輸出のための販売について検討すべきである。同条の規定の適用上、「同類貨物」は、輸入貨物の輸出国から輸入されるものでなければならない。

第七条の規定に関する注釈

  1. 第七条の規定により決定される輸入貨物の課税価額は、可能な限り、従前に決定された課税価額に基づいたものとすべきである。
  2. 第七条の規定により用いられる関税評価方法は、第一条から第六条までに定める方法のいずれかとすべきであるが、これらの方法の弾力的な使用は、合理的なものである限り、第七条の規定及びその目的に適合するものと認められる。
  3. 2に規定する弾力的な使用の例としては、次のものがある。
    (a)同種貨物 輸入貨物の輸出と同時又はほぼ同時に輸出された貨物でなければならないとの同種貨物に関する要件は、弾力的に解釈することができる。輸入貨物の輸出国以外の国で生産された同種貨物の取引価額も、関税評価の基礎とすることができる。第五条及び第六条に定める方法により従前に決定された同種貨物の課税価額を用いることもできる。
    (b)類似貨物 輸入貨物の輸出と同時又はほぼ同時に輸出された貨物でなければならないとの類似貨物に関する要件は、弾力的に解釈することができる。輸入貨物の輸出国以外の国で生産された類似貨物の取引価額も、関税評価の基礎とすることができる。第五条及び第六条に定める方法により従前に決定された類似貨物の課税価額を用いることもできる。
    (c)控除方式 貨物が「輸入された時の状態」で販売されたものでなければならないとの第五条1(a)に規定する要件は、弾力的に解釈することができる。「九十日」に係る要件は、弾力的に運用することができる。

第八条の規定に関する注釈 

第八条1(a)(i)の規定に関し、

「買付手数料」とは、輸入貨物の購入に関し外国において買手に代わって業務を行う者に対し買手が支払う手数料をいう。

第八条1(b)(ii)の規定に関し、

  1. 第八条1(b)(ii)に規定する工具等の価額の輸入貨物へのあん分に当たっては、工具等の価額それ自体及びこれらの価額を輸入貨物にあん分する方法を考慮する。工具等の価額のあん分は、状況により適当と認められる合理的な方法により、かつ、一般的に認められている会計原則に従って行うべきである。
  2. 第八条1(b)(ii)に規定する工具等の価額に関しては、買手が特殊の関係にない工具等の売手からこれらを特定の価格で取得する場合には、当該特定の価格を工具等の価額とする。工具等が買手又は買手と特殊の関係にある者によって生産されたものである場合には、当該工具等の生産費をその価額とする。工具等が従前に買手によって使用されたことがあるものである場合には、当初の取得価格又は生産費は、工具等が買手により取得されたものであるか生産されたものであるかを問わず、工具等の価額の算定に当たり使用度に応じて減額修正されなければならない。
  3. 第八条1(b)(ii)に規定する工具等の価額が決定されたときは、当該価額を輸入貨物にあん分することが要請される。あん分については、種々の可能性が存在する。例えば、買手が工具等の価額の総額に対する関税を一括して納付することを希望する場合には、工具等の価額の総額を最初に到着した輸入貨物にあん分することができる。買手は、また、工具等の価額の総額を最初の輸入貨物の到着の時までに生産された貨物の数量にあん分することを要請することができる。買手は、貨物の総生産量について契約又は他の確たる約束がある場合には、工具等の価額の総額を当該総生産量にあん分することを要請することもできる。用いられるあん分の方法は、買手の提供する資料に基づいて決められる。
  4. 3の例としては、買手が、生産者に対し輸入貨物の生産に使用すべき鋳型を提供し、かつ、一万単位の貨物を購入することを生産者と契約した場合において、生産者が千単位から成る最初の輸入貨物の到着の時までに四千単位の貨物を生産する場合が挙げられる。この場合において、買手は、関税当局に対し、鋳型の価額を千単位の貨物、四千単位の貨物又は一万単位の貨物のいずれかにあん分することを要請することができる。

第八条1(b)(iv)の規定に関し、

  1. 第八条1(b)(iv)に規定する技術等について行われる加算は、客観的かつ数値化されたデータに基づくべきである。加算の額の決定に当たっては、買手及び関税当局の負担を最小にするため、できる限り買手の商業帳簿から入手可能なデータを用いるべきである。
  2. 買手が購入し又は賃借した技術等が、買手によって提供される場合には、加算の額は、購入費又は賃借料とする。権利消滅の状態にある技術等については、当該技術等に係る資料の写しを入手するための費用以外の費用は、加算してはならない。
  3. 加算の額の計算がどの程度容易に行われるかは、企業の組織、経営慣行及び経理方式によって決まる。
  4. 例えば、数箇国から種々の産品を輸入する企業が、輸入国以外の国に有する意匠センターの帳簿であって特定の産品に係る費用を正確に示すものを保持している場合がある。この場合には、第八条の規定による調整を直接かつ適切に行うことができる。
  5. また、企業が輸入国以外の国に有する意匠センターの経費を産品別に計上することなく、一般経費として計上する場合がある。この場合には、意匠センターの経費を当該意匠センターから利益を受けているすべての産品にあん分し、そのあん分された費用を単位当たりで輸入貨物の価格に加算することにより、第八条の規定による調整を輸入貨物について適切に行うことができる。
  6. 前記のとおり多様な事例が存在するため、適切なあん分方法の決定に当たっては、事例に応じて異なった要素が考慮される必要がある。
  7. 技術等の開発が複数の国に関係し、かつ、一定の期間を要するものである場合には、第八条の規定による調整は、輸入国以外の国において当該技術等に現実に付加された価額のみについて行われるべきである。

第八条1(c)の規定に関し、

1.第八条1(c)に規定するロイヤルティ及びライセンス料には、特許権、商標権及び著作権に係る支払額を含めることができる。もっとも、輸入貨物を輸入国において複製する権利に係る支払額は、課税価額の決定に当たり輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に加算してはならない。
2.輸入貨物を頒布し又は再販売する権利を取得するための買手による支払額は、輸入貨物の輸入国への輸出のための販売の条件とされていない限り、輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に加算してはならない。

第八条3の規定に関し、

第八条の規定により行われるべき加算について客観的かつ数値化されたデータがない場合には、第一条に規定する取引価額を決定することができない。この例としては、キログラム単位で輸入され、輸入の後に溶液にされた特定の産品について、輸入国におけるリットル単位での販売価格に基づいてロイヤルティが支払われる場合が挙げられる。ロイヤルティが一部については輸入貨物に基づき、また、一部については輸入貨物と無関係の要素に基づいて支払われている場合(例えば、輸入貨物が輸入国原産の材料と混合されたため輸入貨物を区別することが不可能となった場合、又は売手と買手との間の特殊な財政上の取決めとロイヤルティとの区別が不可能な場合)には、ロイヤルティについての加算を試みることは、不適当である。もっとも、ロイヤルティが輸入貨物のみに基づいているため計算が可能な場合には、現実に支払われた又は支払われるべき価格への加算が、可能となる。

第九条の規定に関する注釈

第九条の規定の適用上、「輸入の時」には、輸入申告の時を含めることができる。

第十一条の規定に関する注釈

  1. 第十一条は、輸入貨物について関税当局が行った関税評価について不服申立てをする権利を輸入者に与えている。輸入者は、不服申立てを、第一次的には関税当局に対して、最終的には司法機関に対して、することができる。
  2. 「不利益を受けることなく」とは、輸入者が不服申立ての権利を行使した事実のみを理由として、輸入者に罰金が科されないこと又は罰金を科するとの脅しがされないことを意味する。通常の裁判費用及び弁護料の支払は、罰金とはみなさない。
  3. 第十一条のいかなる規定も、加盟国が不服申立てに先立って関税の全額を納付することを要求することを妨げるものではない。

第十五条の規定に関する注釈 

第十五条4の規定に関し、

第十五条の規定の適用上、「者」には、適当な場合には、法人を含む。

第十五条4(e)の規定に関し、

この協定の適用上、一方の者が法律上又は事実上他方の者を拘束し又は指図する地位にある場合には、当該一方の者は、当該他方の者を支配しているものとみなされる。

附属書2 関税評価に関する技術委員会

  1. 加盟国によるこの協定の解釈及び適用の統一を技術的に確保するため、第十八条の規定により、関税協力理事会の主催する技術委員会を設置する。
  2. 技術委員会は、次の任務を有する。
    (a)加盟国の関税評価制度の日々の運用に起因する特定の技術的事項を検討し、及び提示された事実関係を考慮に入れた問題の適切な解決についての勧告的意見を述べること。
    (b)要請に応じ、この協定と関係のある関税評価に関する法令、手続及び慣行を検討し、並びにその検討の結果に関する報告を作成すること。
    (c)この協定の運用に関する技術的側面についての年次報告を作成し及び配布すること。
    (d)輸入貨物の関税評価に関する問題につき、加盟国又は委員会の要請する情報及び助言を提供すること。情報及び助言は、勧告的意見、解説又は説明ノートの形式によることができる。
    (e)この協定の受諾を国際的に推進するため、要請に応じ、加盟国に技術援助を行うこと。
    (f)第十九条の規定に基づき小委員会により付託される事項の検討を行うこと。
    (g)その他委員会により付託される任務を遂行すること。

    一般

  3. 技術委員会は、特定の事項、特に加盟国、委員会又は小委員会により付託された事項に関する作業を妥当な期間内に完了するよう努める。第十九条4に定めるところにより、小委員会は、技術委員会の報告を受理する具体的な期間を定めるものとし、技術委員会は、その期間内に報告を提出する。
  4. 技術委員会は、適当な場合には、その活動につき、関税協力理事会事務局の援助を受けるものとする。

    代表

  5. 各加盟国は、技術委員会に代表を出す権利を有する。各加盟国は、技術委員会における自国の代表として、一人の代表及び一人又は二人以上の代表代理を指名することができる。技術委員会に代表を出した加盟国は、この附属書において「技術委員会の構成国」という。技術委員会の構成国の代表は、顧問を同席させることができる。世界貿易機関事務局は、オブザーバーの資格で会合に出席することができる。
  6. 関税協力理事会の構成国であって世界貿易機関の加盟国でない国は、技術委員会の会合に一人の代表及び一人又は二人以上の代表代理を出すことができる。これらの代表及び代表代理は、技術委員会の会合にオブザーバーとして出席する。
  7. 関税協力理事会の事務総局長(この附属書において「事務総局長」という。)は、技術委員会の議長の承認を得て、世界貿易機関の加盟国でなく関税協力理事会の構成国でもない国の代表及び貿易に関する政府間機関の代表に対し、オブザーバーとして技術委員会の会合に出席するよう招請することができる。
  8. 技術委員会の会合に対する代表、代表代理及び顧問の指名については、事務総局長に通報する。

    技術委員会の会合

  9. 技術委員会は、必要に応じ(少なくとも年二回)会合する。各会合の日程は、直前の技術委員会の会期において決定する。会合の日程は、技術委員会の構成国でその過半数の同意を得たものの要請により又は緊急の場合には、議長の要請により、変更することができる。技術委員会は、第一段に定める会合とは別に、第十九条の規定に基づき小委員会により付託された事項を検討するため必要に応じて会合する。
  10. 技術委員会の会合は、別段の決定がある場合を除くほか、関税協力理事会の本部において開催される。
  11. 事務総局長は、技術委員会のすべての構成国並びに6及び7に規定する国又は機関に対し、技術委員会の各会期の開始日を少なくともその三十日前に通報する。ただし、緊急の場合は、この限りでない。

    議題

  12. 各会期の仮議題は、事務総局長によって起案され、緊急の場合を除くほか、少なくとも当該会期の三十日前に、技術委員会の構成国並びに6及び7に規定する国又は機関に対し配布される。仮議題は、直前の技術委員会の会期中に仮議題に含めることが承認されたすべての事項、議長の発意により仮議題に含められたすべての事項及び事務総局長若しくは委員会により又は技術委員会のいずれかの構成国により仮議題に含めることが要請されたすべての事項から成るものとする。
  13. 技術委員会は、各会期の冒頭に、議題を決定するものとし、会期中いつでも、議題を変更することができる。

    役員及び議事

  14. 技術委員会は、構成国の代表のうちから、議長及び一人又は二人以上の副議長を選出する。議長及び副議長は、一年間在任するものとし、再選されることができる。議長又は副議長が技術委員会の構成国を代表しなくなった場合には、その資格は、自動的に終了する。
  15. 議長がいずれかの会合に欠席した場合には、副議長が議長を務める。この場合において、副議長は、議長と同一の権限を有し、同一の義務を負う。
  16. 議長は、技術委員会の構成国の代表としてではなく、議長として技術委員会の議事に参加する。
  17. 議長は、この附属書に定める規則により自己に付与された権限を行使するほか、各会合の開会及び閉会を宣言し、討議を指揮し、発言を許し、及びこの規則に従って議事を監督する。議長は、また、発言の内容が適当でないと認める場合には、発言者に対し注意を与えることができる。
  18. 代表団は、いかなる事項の討議中においても緊急動議を提出することができる。この場合において、議長は、直ちに裁定を下す。裁定について異議が提出された場合には、議長は、その裁定を会合の表決に付する。議長の裁定は、否決されない限り有効なものとする。
  19. 技術委員会の会合の庶務は、事務総局長又は事務総局長により指名された関税協力理事会事務局の職員が行う。

    定足数及び投票

  20. 技術委員会の定足数は、構成国の過半数とする。
  21. 技術委員会の各構成国は、一の投票権を有する。技術委員会の決定は、出席する構成国の少なくとも三分の二の多数による議決で行う。技術委員会は、特定の事項に関する投票の結果にかかわらず、当該事項につき関連の討議において表明された異なった意見を十分に明らかにする報告を、委員会及び関税協力理事会に対し行うことができる。前記の規定にかかわらず、技術委員会は、小委員会により付託された事項について、コンセンサス方式により決定を行う。小委員会により付託された問題について技術委員会において合意に至らなかった場合には、技術委員会は、当該問題の事実関係を詳細に述べ、かつ、技術委員会の構成国の見解を示す報告を提出する。

    言語及び記録

  22. 技術委員会の公用語は、英語、フランス語及びスペイン語とする。これらの三の言語のいずれかによって行われる演説又は発言は、すべての代表団が翻訳の省略につき合意をした場合を除くほか、直ちに他の公用語に翻訳される。公用語以外の言語で行われる演説又は発言は、翻訳の省略につき合意がされた場合を除くほか、英語、フランス語及びスペイン語に翻訳されるものとし、これらの公用語のいずれかへの翻訳は、当該演説又は発言を行った代表団により提供されなければならない。技術委員会の公文書には、英語、フランス語及びスペイン語のみを用いる。技術委員会による検討のために提出される覚書及び書簡は、いずれかの公用語によらなければならない。
  23. 技術委員会は、すべての会期の報告及び議長が必要と認める会合の議事録又は議事の要約を起草する。議長又は議長により指名された者は、委員会及び関税協力理事会の各会合において、技術委員会の活動について報告を行う。

附属書3

  1. この協定の適用の延期につき第二十条1の規定により開発途上加盟国に対し認められている五年の期間が、一部の開発途上加盟国にとって現実に不十分であることがあり得る。このような場合に、当該一部の開発途上加盟国は、同条1に規定する期間が満了する前に、当該期間を延長するための要請をすることができる。この場合において、要請をした開発途上加盟国がその要請について妥当な理由を明らかにしたときは、他の加盟国は、その要請に対し好意的な考慮を払う。
  2. 公定の最低課税価額に基づいて関税評価を行っている開発途上国は、加盟国により合意される条件に従って、限られた範囲内でかつ過渡的な期間内で、当該最低課税価額を引き続き適用するための留保を付することができる。
  3. 第四条ただし書の規定に基づき輸入者の行う要請に応じて関税評価方法の適用順序を逆にすることが真に困難であると認める開発途上国は、同条ただし書の規定について次の留保を付することができる。

    「…………国政府は、関税当局が第五条の規定に先立って第六条の規定を適用することに同意する場合においてのみ第四条ただし書の規定を適用することを定める権利を留保する。」

    開発途上国がこの留保を付した場合には、他の加盟国は、第二十一条の規定の適用上、この留保に同意する。

  4. 開発途上国は、第五条2の規定について次の留保を付することができる。

    「…………国政府は、第五条2の規定(同条の規定に関する注釈を含む。)については、輸入者の要請の有無にかかわらず適用することを定める権利を留保する。」

    開発途上国がこの留保を付した場合には、他の加盟国は、第二十一条の規定の適用上、この留保に同意する。

  5. 一部の開発途上国は、総販売代理店、独占販売者及び権利専有者により輸入される貨物に第一条の規定を適用するに当たって困難に直面することがあり得る。開発途上加盟国が同条の規定を適用するに当たって現実に困難に直面した場合において、当該開発途上加盟国が要請したときは、適当な解決を図るため、その問題について検討が行われる。
  6. 関税当局が協定の規定を適用するに当たり、関税評価のために行われた陳述若しくは申告又は提出された文書が真実を述べたものであるかないか又は正確なものであるかないかについて検討することの必要性が第十七条の規定により認められている。また、例えば、輸入貨物の課税価額の決定に関連して、申告された又は文書により提出された貨物の価額の構成要素が十分かつ正確なものであるかないかについての関税当局による確認を目的とする検討が同条の規定により認められている。加盟国は、当該検討を行うに当たり、自国の法令及び手続に従い、輸入者に十分な協力を求める権利を有する。
  7. 現実に支払われた又は支払われるべき価格とは、買手が売手に対して又は買手が売手の負っている債務を弁済するために第三者に対して、輸入貨物の販売条件として現実に支払った又は支払うべきすべての額をいう。

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関税評価の根拠条例、協定文

最終更新日2018年2月7日 By 河副太智 Leave a Comment

関税評価はWTO加盟国が批准している協定及び関税定率法に沿って
課税価格の決定方法を定めています。

根拠法令はGATT関税評価協定(一般協定第7条)となり
WTOの協定文をベースに決定されます。

基本的な決まり事は上記協定文にて定義されておりますが
各国ごとに異なる取り扱い方法がある場合もあるので
事前に課税価格決定方法を確認する事をお勧めします。
評価に関する事前教示

 

関税評価の規定は非常に奥深く、全ての貿易形態に対して
課税価格を確定するのは非常に困難です。

長く通関士をやっていても知らないことだらけでした。

この部分を甘くみると後に事後調査で差額関税を過少申告加算税と
共に請求される可能性がありますのでご注意ください。

 

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輸入取引の認定と関税評価

最終更新日2017年12月8日 By 河副太智 Leave a Comment

申告価格、関税評価額を算出する際は誰が輸入者で誰が輸出者なのかを
しっかりと定義づける事が必要です。

通常の取引で輸入者と輸出者の2者しかいない場合は明らかですが
少し複雑な貿易形態になると誰と誰との取引が関税評価計算の対象に
なるのかがわかりにくくなります。

関税評価計算の対象は誰と誰との「輸入取引」なのかを検討します。
この「輸入取引」の対象を誤ると事後調査時に申告漏れ等が指摘され、
過少申告加算税の対象になるかもしれませんの注意が必要です。

 

どういった場合に「輸入取引」に該当し、
どういった場合に「輸入取引」に該当しないのか
いくつか例を紹介します

 

原則としての輸入取引

「輸入取引」の定義は以下のようになります。

本邦に拠点を有する者が買手として
貨物を本邦に到着させることを目的として
売手との間で行った売買であって、
現実にその貨物が本邦に到着することとなったものをいい、
通常、現実に貨物を輸入することとなる売買が該当します。

関税定率法第4条の1

 

つまり「日本から海外に代金を支払う人がいて
それによって貨物が日本に来る」という事実をもって
「輸入取引」という関係が成り立ちます。

 

 

特殊な貿易形態であればこの売り手が誰になるのか
海外に送金した額がそのまま関税評価計算の対象になるのか
誰のどの支払いによって日本に貨物が到着したのか
など色々検討する必要があります。

 

ここからは「輸入取引」が誰と誰との間の物ものかが
分かりにくい貿易形態を紹介します。

 

 

日本国内の取引先に支払う場合の「輸入取引」

評価申告事例1

※税関HPより引用

 

 

このケースは日本国内の買手が日本国内のA社から発行されたインボイスに
基づき貨物代金をA社に支払い、E国にあるA社の工場から
直接買手に輸送するという貿易形態です。

 

このような場合は国内のA社が「輸入取引」の相手となり、
A社に支払った額を基に申告をする事になります。

理由は日本に拠点を有する者(買手)は、
輸入貨物を日本に到着させることを目的としてA社と売買を行っており、
また、この売買により現実にその貨物が日本に到着することとなったものと
認められるからです。

 

逆委託加工貿易取引の「輸入取引」

 

逆委託加工貿易 関税評価
※税関HPより引用

日本の輸入者がE国に冷凍食品の原料を送り、更に加工賃を支払い
冷凍食品の製品を製造させて日本に輸入する逆委託加工契約の場合
この2者間では「輸入取引」に該当します。

加工賃に加え、原材料を無償で提供しているのであれば
原材料の価格も関税評価として加算する必要があります。

 

保税倉庫蔵置中に転売された場合の「輸入取引」

 

保税倉庫蔵置中に転売された場合の「輸入取引」関税評価

※税関HPより引用

日本にあるB社とE国のA社の取引によって冷凍エビが輸入されました
その輸入エビをB社手配で保税倉庫に保管している間に
外国貨物(通関前)の状態で日本のC社に転売しました。

このような場合「輸入取引」はB社とA社になります。
税関への申告名義はC社になりますが
申告価格はB社とA社間での支払い代金となります。

C社とB社との売買は、本邦到着後の「国内取引」となり、
「輸入取引」には該当しません

 

 

特殊関係にある者との問屋契約

特殊関係にある者との問屋契約 関税評価

※税関HPより引用

 

上記の例は日本の輸入者がE国のA社と問屋関係という特殊な関係にあり
一般的な売買契約とは異なります。

日本の輸入者は国内のユーザーにA社製品を販売し、
利益や経費を引いた額をE国のA社に支払います。

この場合は日本の輸入者とA社間の取引は「輸入取引」に該当しません。

輸入貨物は問屋契約に基づき現実に輸入されるのですが、
問屋契約はその貨物を日本に到着させることを目的として行われた
売買契約以外のものである為、当該輸入貨物は
関税定率法第 4 条第 1 項に規定する「輸入取引」にしません。

 

その為申告価格は輸入者がE国のA社に支払った額ではなく
別の方法で課税価格を決定する事になります。

 

※ 問屋契約(といやけいやく)

商法第 551 条において
「問屋とは自己の名義を用いて他人の為に物品を販売又は買入をする者を言う」
と規定されており、売買契約とは異なる契約です。

 

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関税評価と事後調査

最終更新日2017年12月8日 By 河副太智 Leave a Comment

輸入申告をするにあたって基本的にインボイスに記載された価格を申告しますが
インボイス金額だけを申告すれば良いという訳ではありません。

関税制度の仕組みは非常に複雑でして
インボイスに記載された価格以外の金額も含めて申告しなくてはならない
場合が多数あります。

 

こういったものを関税評価と呼びます。
通関士ですら内容を把握するのに非常に苦労する内容ですが、
この分野に関しましては輸出入者様の知識に委ねられている部分が
非常に大きいので常に注意が必要です。

 

本来申告しなくてはいけなかったインボイス価格以外の金額を
輸入申告価格に含めないで申告した場合は
定期的に行われる税関事後調査でほぼ確実に指摘を受け
本来の関税額に加え、過少申告加算税、重加算税、延滞税が後日
請求される事になり、輸入者様に多大なる損害を与えます。

関税評価に関する解説は直接関税削減というテーマに直接結びつく物では
ありませんが、こういった事後調査の指摘によって予想外の損失を
予め防ぐという点では間接的に関税削減につながるかと思います。

 

関税評価に関する知識は貿易をするからといって
親切に誰かが教えてくれる物ではありません。

殆どの場合は事後調査委にて追徴課税を受けた後で
「知らなかった」という輸入者様が大多数を占めます。

 

中には申告を依頼している通関士が教えてくれるようなケースも
あるのでしょうがなかなかそこまでしてくれる親切な通関士は
少ないかもしれません。

 

関税評価に関しては輸出入者様自身が理解する必要があります。

 

しかし身構える必要はありません。

基本的に事後調査で指摘される評価申告漏れは
ほとんどが似たような内容です。

 

もちろん特殊で非常に難解な規則もありますがそういった事情のある
輸出入者様は少数かと思われますので
事後調査で指摘の多い評価申告漏れの予想ポイントを予め掴んでおけば
多くの評価申告漏れは事前に防げるものばかりです。

 

以下関税評価に関して分かり易く解説しようと思います。

事後調査実施状況

 

税関による事後調査は輸出入者様を対象に定期的に行われます。

こちらは平成22年度までの追徴税額の合計です。

 

税関事後調査追徴課税額推移

 

当記事執筆中の現在において発表されている
平成27年度の追徴課税額は約160億円となっており、
平成22年度の約50億円から大幅に増えております。

追徴額は年々増えている傾向にあります。

平成27年度の輸入事後調査資料を見ますと
調査を行った輸入者の数は4,302者でそのうち申告漏れのあった
輸入者は2977者となっており、
約70%の輸入者が申告漏れの対象となっております。

その中でも申告漏れの原因のトップを占めるので評価申告漏れです。

 

 

どのような評価申告漏れをしている?

資料によると関税評価の申告漏れが多かった品目は
電気機器、機械類、衣類などにおいて多く発生しています。

その原因としましては必要材料を海外の製造者に無償提供し、
その無償提供した貨物の価格を輸入申告時に
税関に申告しなかったという理由が大多数を占めます。

 

機器、機械などの一部は日本で製造した物を無償で相手国に送り、
その一部を使用して製造した方が有利な場合であったり、
あるいは第三国から仕入れた原料となる生地を製造所となる
相手国に事前に無償で送り、その生地を裁断して衣類を製造する
というパターンが想定されます。

両者共に無償材料は輸入申告時に評価申告の対象です。

 

関税評価の申告漏れの具体例

 

1.輸入者が無償提供した材料費の評価申告漏れ

美容関連機器を輸入している者が
この機器の製造に必要な材料を無償で提供しており、
その材料費は本来申告価格に含めるべきでしたが、
これを含めずに申告した事が事後調査にて発覚

この輸入者の申告漏れの課税価格は約9億円となり
加算税等追徴税額は7,456万円となりました。

 

2.輸入者が支払った価格調整金(インボイス価格以外の貨物代金)

医療機器を輸入している者が輸出者との取り決めにより
過去2年間の間に輸入した貨物について遡及して価格調整を行い、
増額となった金額を輸出者側に支払っていました。

この価格は評価額に含めるべきでしたが
それを行わず、事後調査にて発覚

 

この輸入者の申告漏れの課税価格は約200億円となり
加算税等追徴税額は11億7,643万円となりました。

 

3.処分制限のある貨物

太陽電池モジュールを輸入している者が輸出者との間で
取引形態別に輸入貨物の価格を決めていました。

この輸入者はグループ会社に販売する貨物については
一般顧客に販売する貨物よりも低い価格で購入しており、
その低い価格にて輸入申告を行っておりました。

この場合には本来輸入時に申告すべき申告額は
グループ会社に販売する貨物価格を一般顧客に販売する額にして
計算する必要がありました。

誰に販売するかという点で申告価格を決めるのではなく
本来の貨物代金の額にて申告する必要があったという事が
事後調査にて発覚

 

この輸入者の申告漏れの課税価格は約92億円となり
加算税等追徴税額は6億2,903万円となりました。

 

 

関税評価の原則

 

ではここから関税評価の解説を行っていきます。
全てを本格的に解説をすると気の遠くなるような時間が必要ですので
ここでは重要な点だけを抽出して大まかに解説します。

 

 

関税評価の原則

※税関セミナー資料より引用

 

 

上記の表の左側「現実支払価格」というのは
大まかに以下のようになります。

①仕入書(インボイス)価格
②開発費など仕入書の金額以外に貨物に対し支払った価格
③申告価格から引いても良い価格(割引等)
④輸入申告後に輸出者等に追加で支払う価格等

 

 

上記表の右側にある「加算要素」とは現実支払い価格に加算する
必要のある価格の一例です。

 

①運賃(海上、航空共に)
②仲介料(国内外問わず)、梱包費用等
③無償で製造者に送った原料(値引きの場合は値引き額)
④ロイヤルティ、ライセンス料
⑤販売、売上げ収益の一部を売手に支払う価格

 

 

上記はあくまでも一例ですが、これらを押さえておけば
かなりの部分の関税評価申告漏れを防ぐ事ができます。

 

 

現実支払価格とは

現実支払価格について詳しく解説します。

一般的に輸入の場合は以下のようになっている事が多いです。

 

関税評価の現実支払い価格

※税関セミナー資料より引用

 

 

5万円の貨物の取引の為、5万円を送金しますので
申告価格も5万円となり、そこに関税、消費税がかかります。

 

 

 

輸入貨物の価格が値引きされていた場合、
現実支払い価格は値引き後の価格になります。

 

現実支払い価格の値引き

※税関セミナー資料より引用

 

インボイス価格は5万円ですが、初回購入割引や数量割引などがあれば
値引き後の送金額で申告ができます。

 

 

しかし、この値引きに関してですがどのような理由で値引きになっているかが
ポイントになります。

 

以下のような場合は値引きされていても申告価格には影響しません。

例:
1,クレーム求償額(過去の輸入貨物等、現在の輸入貨物に関係のない割引)
2.賠償金との相殺
3.貸付金、立替金との相殺
4.有償提供した機械の代金との相殺等
5.旧モデル値引き、季節値引き、代理店値引き

 

 

関税評価割引が不適用

 

現実支払価格は原則として上記のように算出します。
他にも例外はございますが一般的には
上記のような取引に多く該当するかと思います。

 

 

加算要素一覧

 

加算要素の全体図を表すと以下のようになります。

 

※税関セミナー資料より引用

 

 

 

貨物のデザイン費用

 

貨物のデザインや設計図に関しては日本国内で開発された物であれば
加算要素にはなりませんが、これらを海外から調達した場合は
加算要素になります。

 

また、間違えやすいのが日本人がこれらを海外で開発したケースです。
日本人であれば加算しないように思われがちですが、
どこで開発されたかがポイントですのでこのような場合は加算となります。

 

 

関税評価、デザイン費用の加算

※税関セミナー資料より引用

 

 

 

権利に関わる費用の支払い

 

権利に関する支払いはその支払いがなければ輸入ができないという場合に
加算要素となります。

 

 

※税関セミナー資料より引用

 

特許権、意匠権商標権、意匠権、実用新案権、著作権等がありますが
これらが輸入貨物に関わらないものや、
その支払いが無くても取引(輸入)ができる場合等は加算要素になりません。

 

 

関税評価ライセンス費用の加算

※税関セミナー資料より引用

 

商標等に関する費用を支払わなければ輸入ができないようなケースです
商標使用料などに支払うロイヤルティも
申告価格に加算する必要があります。

 

 

事前に評価申告について相談する

 

HSコードを申告前に税関に相談する事前教示制度というのは
多くの方が利用しているかと思いますが
この事前教示制度には評価加算の方法についても適用があります。

評価申告金額の確定は恐ろしく難解な部分もありますので
複雑な貿易形態の取引がある場合は利用する事をお勧めします。

 

以下、分類別の税関への事前教示の件数です。
2016年に関税評価に関して文書で質問をした方が8件しかおりません。
(口頭での質問は事後調査時にて回答内容は尊重されません。)

常に事後調査における追徴税のトップの原因が評価漏れである事が
なんとなるわかるような気がします。

 

事前教示制度推移

※税関資料より引用

 

 

 

以下評価申告関係の税関HPへのリンクです。

評価申告における事前教示案内ページ

評価申告事前教示事例

 

事後調査で発覚する評価申告の誤りはどの位?

 

以下は少し古い情報ですが、事後調査における追徴課税の原因のグラフです。

 

評価申告申告漏れグラフ

(1)貨物代金別払い
(2)無償提供等
(5)運賃等別払い

上記3点が評価申告による追徴課税の原因です。

 

 

 

関税評価に関しての結論

ここまで大まかに関税評価について解説しましたが、
これは代表的なほんの一部に過ぎません。

 

関税評価の内容は非常に難解で幅広いものです。
それらを全て理解するのは学者レベルの研究が必要かもしれません。

しかし、上記で紹介した内容だけでも把握できれば
多くの場合、事後調査にて申告漏れを指摘される可能性が
大幅に減ることになりますし、
事前に通関士や税関の評価部門に確認するという行動が起こせます。

 

「知らなかった」と言って大きな損害を被るくらいなら
事前にしっかりご自身の貿易形態を確認してみてはいかがでしょうか?

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