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関税削減.com【HSコード分類事例の解説】

世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。

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RCEP

※効率的に関税削減を行うための図解マニュアルは こちらからダウンロード。

RCEP詳細

最終更新日2022年2月8日 By 河副太智 Leave a Comment

■加盟国
インドネシア、韓国、カンボジア、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、
ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス、日本、オーストラリア、
ニュージーランド、ブルネイ

RCEP協定文一覧
原産地規則
原産地規則の検索
品目別規則
日本側ステージング表
他国側ステージング表一覧

「自己申告制度」利用の手引き(明細書、関係書類の事例が豊富)
地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室
出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~
RCEP協定原産地規則について
RCEP協定に係る業務説明会Q&A

Filed Under: RCEP

中国製品に特恵関税率を適用(RCEP原産品申告書例)

最終更新日2021年1月10日 By 河副太智 Leave a Comment

RCEPを適用して中国からの輸入品目の関税削減を行うには複数の種類の
原産地証明書式が使用できる事が予想されます。

本記事では中国-ペルーFTAで運用されている原産品申告書の様式を紹介し
日本と中国での原産品申告書の書式がどのようなものになるかを検討したい
と思います。

中国語による原産品申告書例

英語による原産品申告書例

現時点ではRCEPにて使用する原産品申告書の書式は発表されておりませんが
概ね上記のような書式になるものと予想します。

また、正式に決定され次第追加報告させて頂きます。
※RCEPは中国語で”区域全面经济伙伴关系协定”と呼ばれます。

中国における第三者証明(商工会議所等)が発行する原産地証明書の取得方法は
こちらのページが参考になります。

RCEP原産地規則

中国政府によるRCEP解説ページ
原産地規則第三章(日本語)
原産地規則第三章(中国語)
原産地規則第三章(英語)
品目別原産地規則(日本語)
品目別原産地規則(中国語)
品目別原産地規則(英語)

RCEP譲許表(関税率一覧)

RCEPを適用する事によりどれほどの関税削減ができるのか、
また、即時撤廃ではなく段階的なスケジュールを経て関税削減が
行われる場合は譲許表を確認します。
中国政府HPに掲載されていた譲許表へのリンクは以下になります。

日本側譲許表(日本で発生する中国製品輸入に対する関税率)
中国側譲許表(中国で発生する日本製品輸入に対する関税率)
(当記事執筆時点ではRCEP未発行ですのであくまでも参考となります。)

中国側での事前教示申請

日本から輸出する品目が中国においてどのHSコードに分類されるかを
事前に特定する事は困難です。

そのため、中国側においてHSコードの事前教示を申請する場合は
中国側の代理人等に以下のページを参考にして申請代行をお願いする事を
お勧めします。

商品归类预裁定

 

Filed Under: FTA/EPA, RCEP

インドのRCEP交渉断固反対する酪農団体

最終更新日2021年1月10日 By 河副太智 Leave a Comment

日本のRCEP交渉は現在インドを含めた16カ国の参加を求めているが
昨年11月インドはRCEP交渉からの離脱を表明する事になりました。

その要因の一つと考えられるのがインド最大の酪農協同組合で
グジャラート州酪農協同組合連合会によるRCEP交渉の反対表明です。

同組合はRCEPで安価なオーストラリア産やニュージーランド産の乳製品
が市場に出回るようになれば、国内の酪農業が大打撃を受ける事を想定
しており、インドのRCEP交渉離脱に大きく影響を与えたのではないかと
考えます。

更にインドは中国からの安価な品目が大量に輸入される事に関しても
強く懸念を抱いている事もある事からインドを含めたRCEP締結には
まだまだ粘り強い交渉が必要になるでしょう。

参考:日本農業新聞

Filed Under: FTA/EPA, NEWS, RCEP

RCEP原産品申告書記入例

最終更新日2022年2月8日 By 河副太智 Leave a Comment

日本を含めた15カ国が参加する「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」が
2022年1月1日に発効しました。

本記事執筆時点での参加国は以下の15か国となります。

インドネシア、韓国、カンボジア、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、
ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス、日本、オーストラリア、
ニュージーランド、ブルネイ

RCEP加盟国間においては各国での輸入時に特恵関税率の適用が可能で
一般関税率よりも低い関税率での貿易取引ができるようになりました。

このRCEP特恵関税率を適用するには輸入品目がRCEP加盟国にて生産された
ものであることを証明する為に、輸入時に税関に原産地を証明する書類を
提出する必要があります。

RCEPにおいて原産地を証明する証明書は以下の3点があります。

(a) 発給機関(商工会議所等)により発給された原産地証明書 【第三者証明制度】
(b) 認定された輸出者による原産地申告 【認定輸出者制度】
(c) 輸出者又は生産者による原産地申告【輸出者・生産者による自己申告制度】

更に、日本における原産地証明は上記3種類に加え、「輸入者による原産地申告」
が追加されており、日本への輸入のみ、協定発効日から、「輸入者による原産地申告」
を原産地証明とみなすことができます。
(日本以外の締約国においては、協定が全ての署名国において発効した後、
導入を検討することとなっている。)。

これを【輸入者による自己申告制度】と呼びます。

本記事におきましてはこの輸入者による自己申告制度を利用した
RCEP原産品申告書の作成方法を解説します。

輸入者自己証明で提出する証明書

原産品申告書

輸入者自己証明による原産品申告書の例は以下のとおりです。
※日本税関への提出であっても英語で記入する必要があります。

出典:「自己申告制度」利用の手引き~RCEP協定~

RCEP原産品申告書のブランクのダウンロード

RCEP特恵関税率を適用する際、日本税関にはさらに「原産品申告明細」と
原産品申告明細書に記載した説明内容を確認するための「関係書類」の提出
が必要となります。

原産品申告明細

※日本税関への提出の場合日本語で記載可。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

記載例

出典:「自己申告制度」利用の手引き~RCEP協定~

RCEP原産品申告明細ブランクダウンロード

その他記載事例は「自己申告制度」利用の手引きに多数紹介されております。

関係書類

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

記載例
※日本税関への提出の場合日本語で記載可。

関係書類の作成事例は「自己申告制度」利用の手引きに多数紹介されております。

通常の通関書類に加えて上記3点の書類を添付すると、税関提出書類一覧の
イメージは以下のようになります。

各種自己証明書類記載要領

原産品申告書(前半)

RCEPの原産品申告書は日本税関に提出する場合であっても英語で記載する
必要がありますのでご注意下さい。


出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

項目①

固有の参照番号は申告書の作成者が管理する任意の整理番号を記載する。

項目②

項目②は認定輸出者作成の場合のみ記載。

項目③~⑤

項目③~⑤は輸出者、生産者及び輸入者又は荷受人に関する情報となり、
輸出者の氏名又は名称及び住所、生産者の氏名又は名称及び住所、
輸入者又は荷受人の氏名又は名称及び住所については必須の記載項目。
ただし、生産者の氏名又は名称及び住所が判明していない場合には
「NOT AVAILABLE」と記載する。

項目⑥

項目⑥は品名及び仕入書番号・日付産品を特定するために十分な記載とする。
仕入書番号・日付は輸入に際して発行されたものを記載する。
当該仕入書が輸出者又は生産者により発行されたものでない場合(第三者の
仕入書の場合)には、仕入書の発行者の氏名又は名称及び国名を
「10. Remarks」欄に記載する。

項目⑦

項目⑥は関税分類番号(HSコード)を記載する。
HSコードのバージョンは2012年版に従い6桁のHSを記載する

過去バージョンのHSを調べる際にはHSTrackerのsubheading visualizerが便利です。

原産品申告書(後半)

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

項目⑧

項目⑧は適用した原産性の基準を記載。
以下の記号から該当するものを記載します。

WO:完全生産品

PE: 原産材料のみから生産される産品

CTC: 関税分類変更基準

RVC: 付加価値基準(域内原産割合)

CR: 加工工程基準(化学反応)

ACU: 累積、

DMI: (僅少の非原産材料)

どの基準を選択するのか難解な部分ですので原産地基準の記事を参考にして下さい。
この基準を誤って選択すると事後確認において特恵関税率が否認される可能性が
ありますのでご注意下さい。

項目➉

項目➉は数量及びFOB価額を記載
FOB価額については、原産性の基準として域内原産割合が用いられて
いる場合のみ記載する。

項目⑪

その他の特記事項は、必須項目ではありません。

項目⑫

項目⑫は最初の原産地証明の情報を記載。協定第3・19条に基づき発給
された連続する原産地証明の場合には必須の記載項目。
当初の原産地証明の参照番号、発給年月日、発給国、RCEP原産国、
(該当する場合)認定輸出者の認定番号を記載する。

項目⑬

項目⑬は作成者による誓約。輸入者自己申告の場合はexport countryのみを
記載し、importing countryは記載不要。

作成者

本申告書は、輸入者、輸出者又は生産者が作成することができる
(該当するボックスにチェックを付すこと)。
また、輸入者に代えて輸入者の代理人が作成することができる。
なお、日本への輸入の場合には作成者の署名は不要。

項目⑨

項目⑨は「RCEP原産国」を記載。
本項目はRCEP原産地証明に必須の記載事項となり、現時点では
他のEPAには無い記載事項となっております。

本項目に国名を記載する事によってRCEP締約国内のどの国での
生産活動においてRCEP原産地規則を満たすのが明確になります。

このような必須記載事項がある理由はRCEP締約国の輸出元によって
RCEP特恵関税率に差が生じる場合があるためです。

出典:RCEP協定税率差マニュアル

 

例えばある製品をRCEP関税率を適用して日本に輸入する場合において
中国が最終原産国の場合、RCEP関税率10%が課税されるが、
これがベトナムが最終原産国の場合、関税率0%になる製品だと仮定します。

この場合、製品がRCEP原産品であるという事を証明するだけでは足りず
最終的にRCEP原産品として完成した国を特定する必要があります。
最終製造工程が完了した国によって関税率が変わる為、当該項目は正確な
内容を記載して下さい。

また、迂回輸入によって意図的にRCEP関税率を低く抑えようとする
行為を防止するためにも本項目は必要的記載事項となっております。

例として以下のイメージ図をご覧下さい。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

上記の例では中国からRCEP関税率を適用した場合、関税率が10%かかるので
大部分の製造工程を中国で行い、僅かな最終工程(生産行為とみなされない作
業等)をベトナムで行い、関税率を0%に抑えるイメージを表しています。

このような行為はRCEPの運用上フェアではありませんので必要的記載事項に
厳密なルールに沿ってRCEP原産国を明記する必要があります。

実際に複数のRCEP締約国内において製造工程をまたぐ場合、どの国名を
記載するべきかの基準は以下のとおりです。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

協定附属書Ⅰの輸入締約国の約束の表の付録に特定された原産品100品目(PDF27P)
へのリンクから輸入品目が一覧に該当するかどうかを確認し、以下のフローチャート
からRCEP原産国を特定して下さい。

出典:RCEP協定税率差マニュアル

詳しくはRCEP協定税率差マニュアルをご参照ください。

原産地基準

RCEP原産品申告書の項目⑧には原産地基準を記載する事になります。

原産地基準とはどのようにしてRCEP締約国にて製造され、原産性を得た
産品であるかを示す記号になります。

大雑把に言うとRCEP締約国にて完全に生産された製品なのか
RCEP非締約国から調達した原料、部品を使用してRCEP締約国にて
完成した製品なのかという区別をつけるための基準です。

原産地基準は以下の7種類があります。

  • WO:完全生産品
  • PE: 原産材料のみから生産される産品
  • CTC: 関税分類変更基準
  • RVC: 付加価値基準(域内原産割合)
  • CR: 加工工程基準(化学反応)
  • ACU: 累積
  • DMI: (僅少の非原産材料)

以下それぞれの原産地基準について解説します。

WO:完全生産品

完全生産品とはRCEP締約国内において完全に得られ、又は生産される
産品の事を指します。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

「完全に得られ、又は生産される産品」とはRCEP締約国において
完全に生産された物の事です。詳しくは完全生産品解説ページをご覧ください。

輸入品目がRCEP締約国の完全生産品である場合、項目⑧に”WO”と
記載することになります。

 

PE: 原産材料のみから生産される産品

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

原産材料のみから生産される産品は完全生産品とニュアンスは似て
いますが少しだけ違います。

原産材料のみから生産される産品とはRCEP締約国の一次原料を使用
して製造された品目ではあるが、二次原料以降の原料の元を辿って
いくととRCEP締約国以外の国から調達した原料がどこかに含まれて
いる品目が対象です。

上記の例ではRCEP締約国から調達した一次原料であるトマトケチャップと
その他の材料を使用してドレッシングを製造していますが、トマトケチャ
ップ自体の構成はRCEP非締約国から調達した二次原料であるトマトから
製造しています。

この場合、トマトからトマトケチャップに加工される事により、
HSコードがトマト07類からケチャップ21類に変更されており、
関税分類変更基準を満たしている事からケチャップはRCEP締約国産と
みなされる事になり、ドレッシングもRCEP締約国産となります。
※関税分類変更基準についてはこちらを参照

また、以下の例ではカップ麺の原料(麺等)は締約国から調達した
ものとなっているが麺自体の原料(二次原料)は非締約国から調達
した小麦粉となっています。

この場合も小麦粉が加工されて麺になっている事から関税分類変更基準
が満たされ、麺がRCEP原産材料とみなされ、最終製品であるカップ麺は
原産材料のみから生産される産品となりRCEP締約国産とみなされる事になります。

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

詳しくは原産材料のみから生産される産品解説ページをご覧ください。

輸入品目がRCEP締約国の原産材料のみから生産される産品である場合、
項目⑧に”PE”と記載することになります。

CTC: 関税分類変更基準

「関税分類の変更の基準」とは
RCEP締約国以外の国から調達した一次原料のHSコードと
RCEP締約国で完成した製品のHSコードが2,4,6桁レベルで変わる程度の
加工がRCEP締約国内で行われている場合に適用できる基準です。

加工によってHSコードが2桁レベルで変更する事例を紹介します。
以下の事例は革靴を原料から製品まで加工する事例をHSコードの変化を
交えて表しています。

ChapterというのはHSコードの頭2桁(類)を意味します。
最初は「牛(01類)」→「原皮(41類)」→「靴(64類)」という形でHSコードの
頭2桁が加工により変化していくのがわかります。

 

もう一点、加工によってHSコードが2桁レベルで変更する事例を紹介します。
以下の事例は「本」を原料から製品まで加工する事例をHSコードの変化を
交えて表しています。

「樹木(06類)」→「木材(44類)」→「パルプ(47類)」→「紙(48類)」→「本(49類)」
という形でHSコードの頭2桁が加工により変化していくのがわかります。

このように加工によってHSコードの頭2桁が変化する事を関税分類変更基準において
「CC」と呼びます。

 

次に、加工によってHSコードが4桁レベルで変更する事例を紹介します。
以下の事例は「鉄線」を原料から製品まで加工する事例をHSコードの変化を
交えて表しています。

HeadingというのはHSコードの頭4桁(項)を意味します。
加工によって「銑鉄(7201)」→「ビレット(7207)」→「棒(7213)」→「線(7217)」
というようにHSコードが4桁レベルで変更していくのがわかります。

もう一点、加工によってHSコードが4桁レベルで変更する事例を紹介します。
以下の事例は「絹織物」を原料から製品まで加工する事例をHSコードの変化を
交えて表しています。

加工によって「コットン(5201)」→「ヤーン(5205)」→「絹織物(5208)」
というようにHSコードが4桁レベルで変更していくのがわかります。

このように加工によってHSコードの頭4桁が変化する事を関税分類変更基準において
「CTH」と呼びます。

更にHSコードが加工によって6桁レベルで変更する場合は関税分類変更基準において
「CTSH」と呼びます。

 

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

詳しくは関税分類変更基準の類、項、号解説をご覧ください。

加工によるHSコード変更の程度についての詳細は以下をご覧ください。
HSコードの桁数が2桁変更していれば基準をクリア(CC)
HSコードの桁数が4桁変更していれば基準をクリア(CTH)
HSコードの桁数が6桁変更していれば基準をクリア(CTSH)

 

以下にきゅうりの酢漬けの関税分類変更基準例を紹介します。

第三国(非締約国産)のきゅうりをRCEP締約国内にて酢漬けをした場合に
日本で輸入する際にRCEPの特恵関税率が適用できるかを調べる場合は
RCEP品目別規則を確認して最終製品であるきゅうりの酢漬けのHSに対する
品目別分類規則を調べます。

きゅうりの酢漬けのHSは2001から始まるのでRCEP品目別規則の
62PにあるHS2001の品目別規則を確認すると関税分類変更基準が
“CC”となっていることが確認できます。

これはRCEP非締約国から調達した原料のHSコードとRCEP締約国にて
完成した品目のHSコードの桁数が2桁変更していれば基準をクリア(CC)
という意味になります。

きゅうりのHSコードの頭2桁は07となり、きゅうりの酢漬けのHSの頭
2桁は20となりますのでRCEP締約国での加工によって品目別規則にて
指定された基準をクリアした事になりますので、本品目はRCEP非締約国
から調達した原料から製造されていても最終的にRCEP締約国の産品とし
てみなされる事になります。

輸入品目がRCEP締約国の関税分類変更基準を満たす産品である場合、
項目⑧に”CTC”と記載することになります。

RVC: 付加価値基準(域内原産割合)

付加価値基準とは非締約国から調達した原料にRCEP締約国内で加工を
行い、与えられた金銭的付加価値によって原産性を判定する基準です。

以下の例では非締約国から調達した10万円分の非原産材料にRCEP
締約国である日本で加工を行い、複数の付加価値が与えられる事に
よって20万円の冷蔵庫が完成しています。

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

冷蔵庫のHSコードは8418.10から始まるのでRCEP品目別規則の256Pを
見るとRVC40と記載があります。

これは最終製品がRCEP締約国において40%以上の付加価値が与え
られていれば非締約国から調達した原料が含まれていてもRCEP
締約国原産品としてみなされるという意味になります。

以下の計算例は品目別規則にて定められている40%の閾値を超えるか
どうかの計算方法は控除方式と積み立て方式の2つがあり、一般的には
控除方式で計算されることになります。

※非原産材料の価格を10万円、完成後の産品の価格を20万円とした場合

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

輸入品目がRCEP締約国の付加価値基準を満たす産品である場合、
項目⑧に”RVC”と記載することになります。

CR: 加工工程基準(化学反応)

加工工程基準とは特定の加工工程が施された場合に原産品として認定する方法で、
主に化学品の原産地基準判定に用いられます。

RCEP協定における化学反応とは「分子内の結合を切断し、かつ、新たな分子内の
結合を形成することまたは分子内の原子の空間的配列を変更することにより、
新たな構造を有する分子を生ずる過程(生化学的なものを含む)」と定義されます。
ただし、以下の3点は化学反応とはみなされないので注意が必要です。
①水その他の溶媒への溶解、
②溶媒(溶媒水を含む。)の除去、
③結晶水の追加または除去

↓加工工程基準を満たす化学反応の例

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

輸入品目がRCEP締約国の加工工程基準を満たす産品である場合、
項目⑧に”CR”と記載することになります。

ACU: 累積

RCEP締約国の原産品が他のRCEP締約国における産品の生産に材料として
使用される場合に、当該他の締約国の原産材料とみなすことができる
「モノの累積」 が採用されている。

例えばオーストラリアで製造した品目があり、その原料に日本産のものが
含まれていた場合、オーストラリアも日本も共にRCEP締約国であるため
日本から調達した原料を用いても完成品はRCEP締約国原産品となります。

以下オレンジジャムの製造における累積の適用例を紹介します。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

上記の例ではオレンジジャムを製造する際にRCEP非締約国から3つの原料を
調達しています。

オレンジジャムの関税分類変更基準は”CC”となっておりRCEP締約国での加工
においてHSコードの頭2桁の変更が必要となります。

非締約国から調達したオレンジ08類と砂糖17類は加工によって20類に変更
されているのでHSコードの頭2桁が変更になっておりますので関税分類変更基準
を満たすことになりますが、レモン果汁だけは20類であり、完成品のジャムも
同じく20類であるため関税分類変更基準を満たしていないという事になります。

しかし、このレモン果汁をRCEP締約国のひとつであるタイから輸入した原料と
いう事になると「累積」という制度が適用され、原産地規則を満たし、
RCEP原産品とみなされる事になります。

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

上記、豪州で生産されたジャムの例では、タイで生産されたレモン果汁に累積を
適用していますが、これはレモン果汁の生産に使われた全材料(レモン)が
第2009.89号(レモン果汁のHS番号)の品目別規則のうち「CC」を満たすことが
確認できるため、当該レモン果汁をタイ原産品であると認定しています。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

 

累積の規定にはさらに詳細な規定があり、ロールアップとトレーシングという
考え方を適用して原産品としてみなすかどうかという事を検討する必要がある
場合があります。

ロールアップ

あるRCEP締約国の原産品が、他のRCEP締約国における生産に原材料として使用
される場合には、当該他国の100%原産材料と見なすことが可能。

例えば以下の図のようにRCEP締約国B国で完成した品目の部材が
RCEP締約国のA国と非締約国C国から調達した部材によって完成した場合、
A国から調達した部材には50%非締約国から調達した部材が含まれていますが
A国内での加工により原産地基準を満たしているため非原産材料価格の
50%も含めて全てA国原産となり、A国から調達した部材100%全てがRCEP締約国
から調達した部材としてみなされるという規定がロールアップと言います。

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

トレーシング

逆に上記の例のA国で原産地基準を満たしていない場合、A国から調達した
部材のうち50%だけをB国において累積という形で完成品の一部にRCEP原産材料
として組み込むという規定がトレーシングとなりますがRCEPではトレーシングの
規定は存在していない為、もしA国において関税分類変更基準を満たしていない場合
はB国から調達した部材100%が非原産材料として扱われる事になります。

輸入品目の原料の一部がRCEP締約国から調達し、累積を満たす産品である場合、
項目⑧に”ACU”と記載することになります。

DMI: (僅少の非原産材料)

僅少の非原産材料とは品目別規則の関税分類変更基準(CC,CTH,CTSH)を
満たさない非原産材料があった場合でも、その使用が僅かな場合は、その産品を
RCEP締約国の原産品と認めることができる救済規定となります。

非原産材料の使用が僅かであるかどうかという判断基準はHSコードの類ごとに
よって変わります。

以下の例はオーストラリアで製造されるオレンジジャムの原料にRCEP非締約国から
調達した3つの原料についての僅少の非原産材料の適用事例です。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

オレンジジャムの原料であるレモン果汁が関税分類変更基準を満たしていないので
このままではオレンジジャムはRCEP原産品としてみなされないのですが、
レモン果汁の価額が$5となっており、オレンジジャムの価額$100の10%以下で
あるという事からレモン果汁は僅少の非原産材料とみなされ、オレンジジャムは
RCEP原産品とみなされる事になります。

※僅少の非原産材料適用における注意点

僅少の規定を適用する場合の要件は、関税分類変更基準を満たさない全ての非原産材料
の価額の合計が最終産品のFOB価額の10%以下であることです。
つまり、関税分類変更基準を満たさない非原産材料が複数ある場合においては、それら
の合計金額がFOB価額の10%以下であることが要件となります。

前ページの例で、レモン果汁に加えて、非原産のオレンジ果汁(第20類)も材料として
使っていた場合は、 CC(類の変更)を満たさないレモン果汁とオレンジ果汁の価額の
合計が、ジャムのFOB価額の10%以下である必要があります。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

輸入品目の原料の一部が関税分類変更基準を満たしていない場合で、
僅少の非原産材料の要件を満たす産品である場合、
項目⑧に”DMI”と記載することになります。

積送基準

原産品が次のいずれかの条件を満たす場合には、原産品としての資格は維持されます。
(a) 輸出締約国から輸入締約国へ直接輸送される場合
(b) 第三国(非締約国又は経由国である締約国(以下「中間締約国」という。)を経由
する場合で、以下の(ⅰ)及び(ⅱ)の要件を満たす場合
(ⅰ)第三国において更なる加工(※)が行われていないこと
(ⅱ)第三国にある間、税関当局の監督の下に置かれていること
(※)物流に係る活動(例えば、積卸し、蔵置、原産品を良好な状態に保存するため
又は輸送するために必要な他の作業)は除く。

RCEP加盟国間で貨物を直送する場合は問題ありませんが、輸送途上でRCEP非締約国
である第三国や加工等直接関連の無い中間締約国を経由する場合、積送基準の要件を
満たすことを証明する書類を輸入締約国の税関に提出する必要があります。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

日本への輸入においては、関税法施行令第61条第1項第2号ロに規定する「運送
要件証明書」となり、具体的には以下のような書類があります。
・ 通し船荷証券の写し(Through B/L)
・ 税関その他の権限を有する官公署が発給した証明書
・ その他の税関長が適当と認める書類

上記のその他の税関長が適当と認める書類の例は以下のとおりです。

  • 輸出締約国から第三国及び第三国から日本への運送関係関連書類(船荷証券等)
  • 倉庫の管理責任者等による非加工の証明書類
  • 税関監督下の倉庫への搬出入記録の写し等

但し、課税価格の総額が20万円以下の場合は、提出省略が可能となります。

出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~

 

軽微な工程及び加工

産品を生産するために、非原産材料に対して行われる単純な作業「軽微な工程や加工」
については、その産品に原産品としての資格を与えるための十分な作業又は加工とはみ
なされません。

軽微な工程や加工の定義は以下のとおりです。

(a) 輸送又は保管のために産品を良好な状態に保つことを確保する保存のための工程
(b) 輸送又は販売のために産品を包装し、又は提示する工程
(c) ふるい分け、選別、分類、研ぐこと、切断、切開、破砕、曲げること、
巻くこと又はほどくことから成る単純な処理
(d) 産品又はその包装にマーク、ラベル、シンボルマークその他これらに類する識別
表示を付し、又は印刷する工程
(e) 産品の特性を実質的に変更しない水又は他の物質による単なる希釈
(f) 生産品の部品への分解
(g) 動物をとさつする工程
(h) 塗装及び研磨の単純な工程
(i) 皮、核又は殻を除く単純な工程
(j) 産品の単純な混合
(k) (a)から(j)までに規定する二以上の工程の組合せ

仮に上記の作業により品目別規則(PSR)を満たしたとしても、原産品とは認め
られないので注意が必要です。

書類の保存義務

RCEP協定及び国内法令により、日本においては、以下の書類保存義務があります。

輸入者の保存義務

輸入の許可の日の翌日から5年間、以下の書類を保存。
保存すべき書類は、選択した申告制度によって異なる。

 第三者証明制度、認定輸出者制度
原産地証明書、認定輸出者による原産地申告

 輸出者又は生産者による自己申告制度
原産品申告書及び申告書作成者等から提供を受けている
産品が原産品であることを証明するために必要な追加的な資料
(「RCEP原産国」の確認のための関係書類を含む)

 輸入者による自己申告制度
原産品申告書を含め、産品が原産品であることを証明するために
必要な全ての記録(「RCEP原産国」の確認のための関係書類を含む)
※ 輸入申告の際に税関へ提出した書類については、保存義務の対象外。

輸出者・生産者の保存義務

輸出者・生産者の自己申告の場合は作成の日から3年間、第三者証明制度
及び認定輸出者制度を利用した輸出者・生産者は、発給・作成の日の翌日
から3年間、以下の書類を保存。

 原産地証明書・認定輸出者による原産地申告・原産品申告書の写し
 産品が原産品であることを証明するために必要な全ての記録
(「RCEP原産国」の確認のための関係書類を含む。)。

事後確認、検認手続

RCEP締約国からの輸入品目に対し、原産地証明を提出して特恵関税率を適用後
税関から当該品目がRCEP締約国の原産品かどうかを輸入者に対し事後確認を行う
事があります。(税関事後調査で同時に行われる可能性もあります。)

この際にRCEP締約国の原産品であるという事を証明する事ができなかった場合、
過去5年分の特恵関税率の適用が否認され、一般関税率との差額関税、過少申告
加算税、延滞税等が追徴される可能性があります。
また、仮装・隠ぺい等による手口で原産性を偽っていた場合は更に重加算税が
課される可能性もあります。

RCEP協定においては、輸入締約国の権限ある当局は以下の方法により、
輸入された産品が原産品であるか否かを確認することが認められている。
(a) 輸入者に対して追加の情報について書面により要請する方法
(b) 輸出者又は生産者に対し、追加の情報について書面により要請する方法
(c) 輸出締約国の発給機関又は権限のある当局に対し、追加の情報について
書面により要請する方法
(d) 輸出締約国の輸出者又は生産者の施設を確認のために訪問する方法
(e)その他締約国が合意する方法

輸入者による原産地証明の場合、上記手段のうち(a)のみ実施可能。
それ以外の制度においては、第三者証明制度であっても自己申告制度であっても
手段は同じ。実施順については、(d)の訪問による確認は(c)の実施後にのみ実施
するとされている以外、特段の規定はない。

出典:地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室

締約国は、自国の輸出産品に係る原産品であるかどうかの確認のための単一の
連絡部局(コンタクトポイント)を指定することができると規定されております。

日本が輸出国として、相手国(輸入国)から輸出国検証の要請を受ける場合も、
コンタクトポイントを通じて受理することとなっています。

相手国が日本の輸出者・生産者に対して情報提供を要請する場合にも、コンタクト
ポイントへ要請の送付が行われることとなっており、その場合、利用された証明制
度に応じ、以下の機関から輸出者・生産者の方に連絡いたします。

 第三者証明制度・認定輸出者制度利用の場合
日本商工会議所
経済産業省貿易経済協力局貿易管理部原産地証明室

 輸出者・生産者による自己申告制度利用の場合
財務省関税局関税課原産地規則室

原産品であるかどうかについての確認に係る各締約国の連絡部局(コンタクト
ポイント)について相手国から、上記機関を介さず直接情報提供要請の連絡が
あった場合は、利用された証明制度に応じ、各機関にご相談ください。

第三者証明制度・認定輸出者制度 :経済産業省(原産地証明室)
輸出者・生産者による自己申告制度:財務省(原産地規則室)

 

RCEP関連リンク集

RCEP協定文一覧
原産地規則
原産地規則の検索
品目別規則
日本側ステージング表
他国側ステージング表一覧

「自己申告制度」利用の手引き(明細書、関係書類の事例が豊富)
地域的な包括的経済連携協定 概要 令和3年12月財務省関税局経済連携室
出典:RCEP物品貿易について~原産地規則中心に~
RCEP協定原産地規則について
RCEP Q&A1
RCEP Q&A2

Filed Under: FTA/EPA, RCEP

RCEP年内妥結は見送り

最終更新日2021年1月10日 By 河副太智 Leave a Comment

日本、中国、韓国とASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国16カ国による
世界人口のおよそ半分を占める自由貿易経済圏RCEPの年内妥結はインドと
中国などとの意見が合わずに見送りする方向で一致したようです。

インドが懸念する貿易赤字取引国は
インドネシア、タイ、中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド
の7か国となっており、
特に2017-2018年において以下の4か国に対する貿易赤字が顕著です。

対中国赤字約630億ドル
対韓国赤字約110億ドル
対インドネシア赤字約120億ドル
対オーストラリア赤字約100億ドル

RCEPがインドに要求する関税撤廃率は92%ですが
これらの国に対する更なる貿易赤字を懸念したインドは
中国その他懸念国に対し関税撤廃率を74%とし、
その他のRCEP加盟国に対しては関税撤廃率の上限を86%に設定したいとの
要望があったようです。

このような関税撤廃率の要求の見返りにインドはサービス関連、
特に他国からの高度技術者の受け入れ条件を緩和する方向で交渉に
望んでいるようです。

※ソース元The WIREより

トランプ政権に立ち向かうべく急ピッチで進められているRCEPですが
まだ交渉しなければいけない分野がいくつか残りそうです。

 

 

 

Filed Under: FTA/EPA, NEWS, RCEP

中国製品の関税削減が可能に

最終更新日2021年2月22日 By 河副太智 Leave a Comment

中国製品を日本に輸入する際に税関で関税が課されますが、これを削減
できたら利益率を大幅に上昇できる可能性があります。

関税削減の方法は複数ありますが一般的には以下の2つがあります。
①EPA(経済連携協定)を適用して輸入
②GSP(一般特恵関税制度)を適用して輸入

このうち②の方法は2019年4月に廃止されましたので現在まで中国製品の
輸入時にかかる関税削減の方法はほぼ無しという状況ですが、2020年11月15日
RCEPという名称のEPA(上記で紹介した①の経済連携協定)に日本、中国を含む
15か国が署名しました。

これにより2021年内には中国産の品目の関税削減が再度別の形で実現する事に
なります。

以下の譲許表を確認すると中国製品のHSコード別に削減できる関税率を確認
する事ができます。
日本側譲許表(日本で発生する中国製品輸入に対する関税率)

例えばHSコード640340.012に分類される中国製品の靴の場合、関税は
「30%又は4,300円/足のうちいずれか高い税率」というように高関税が設定
されていますが、RCEPを適用する事により一律20.6%に関税削減が可能となり、
その後毎年関税率は19.5%,18.5%,17,5%と下がって行き、RCEP発動から21年後には
関税0になるという事が以下の譲許表からわかります。

輸入している中国製品のHSコードが判明していれば上記の譲許表から
どの位関税削減が可能なのかを確認する事をお勧めします。
※現時点ではまだ協定発効はしていないので上記関税率はあくまでも予定ですので
ご注意ください。

 

本記事執筆時点ではまだRCEPの運用は準備段階にあるため、まだ中国製品の
関税削減は行えませんが、制度が整い次第中国製品の関税削減法を本HPにて
詳しく紹介させて頂きますので宜しくお願い致します。

 

現在は廃止された中国製品一般特恵関税

※以下2019年4月1日時点の記事「2019年4月から中国特恵関税が卒業」
税関HPより中国,メキシコ,タイ,マレーシア,ブラジルの5か国は2019年4月から
「平成31年度に卒業基準(※)により卒業した国」として発表されました。

 

中国特恵関税卒業廃止

 

特恵関税適用除外要件

特恵関税の趣旨は先進国が開発途上国の産品に対して、⼀般の税率より
低い関税率(特恵税率)を適⽤する制度ですので、該当の経済成長が
一定基準に到達すれば「卒業」となり、特恵関税制度の対象から外れます。

特恵関税卒業の基準は以下の2つです。

①3年連続で「⾼所得国」に該当した国
②3年連続で、「⾼中所得国」以上に該当し、世界の総輸出額に占める
当該国の輸出額の割合が1%以上である国

税関HP特恵関税制度の卒業要件の見直しについてを参照

また、アルゼンチン産のグレーンソルガムについては
平成31年4月1日から平成34年3月31日まで、
特恵税率の適用対象から除外される事になります。

 


※税関資料より引用
※2018年12月16日現在での資料

自分の貨物は特恵除外対象になる?

上記5か国からの特恵関税制度が停止予定である事はわかったが
実際にご自身が扱っている貨物の関税率が今後どうなるのかわからないと
いう場合は普段通関をお願いしている通関業者様に聞くのが一番です。

また、ご自身で調べたい場合は普段通関業者からもらっている許可書を確認し、
各欄のHSコードの下部にある原産地の欄のコードを確認します。

原産地の項目に4桁のアルファベット「WK〇〇」とあれば
そもそも特恵関税を適用していない貨物なので今回の特恵卒業とは
関連しない事になります。

しかし、この「WK」の部分が「GS」であり、かつ中国、メキシコ、タイ、
マレーシア、ブラジル原産である場合は31年度から特恵関税適用対象外に
なる可能性がありますので注意が必要です。

※「WK」の意味は 国定・WTO協定
※「GS」は一般特恵 の意味

 

どの品目が特恵関税の対象?

HSコードから一般特恵関税の対象かどうかを確認する方法は
税関HPの実行関税率表を確認します。

一覧の中から最上段にある最新の実行関税率表を選択すると
各品目の類ごとに分かれた一覧が出てきます。

第〇〇類というのはHSコードの頭2桁で(例:頭2桁が01であれば1類)
該当する類にある「税率」をクリックします。

 

 

「税率」のページでHSコード9桁レベルで同じ品名を見つけたら
「特恵GSP」の欄にある税率を確認します。

ここに記載されている税率が一般特恵の関税率となりますので
特恵卒業の対象となった場合は基本的にはその左側にある
WTO協定の税率に移行すると考えられます。
※但し、ここに特恵関税率が記載されていても特恵税率が適用できない
国もあるので詳細は当記事の続きをご覧ください。

 

 

国別の特恵除外品目に注意

上記の実行関税率表上で特恵関税が設定されていても
国別・品目別特恵適用除外措置の対象品目に記載されている国原産の品目は
特恵関税率が適用できない場合もありますのでご注意ください。

 

例えばカフスボタン(HS7117.11-010)を中国から輸入する場合、
実行関税率表を見ると特恵欄に無税とあるので中国の原産地証明書があれば
関税はゼロになると考えてしまいますが、、、

 

 

 

実際に国別・品目別特恵適用除外措置の対象品目を見ると

 

HS7117に属する品目は特恵関税率の設定はありますが
中国産の場合は適用できませんという事になります。
これはつまりHS7117から始まる品目全て(7117.11-010と7117.11-020)が
中国産の場合は特恵関税率の対象から外れるという事になります。

HSコードが判明していても特恵関税率適用可否の判断はこのように
非常にややこしいので、通関業者や税関に問い合わせする事をお勧めします。

 

※以下の記事は2018年4月12日に書いた内容です。

平成30年度特恵関税制度の見直しで中国産品目の特恵関税制度が
一部廃止となり、平成30年4月1日以降の申告では以下の
特恵適用除外措置リストに掲載されている貨物の特恵関税の適用が
受けられなくなりました。

中国はすでに発展途上国ではない事が明らかですので
中国産の特恵関税制度除外措置は今後どうなるのでしょうか?

 

結論から言いますと
中国、タイ、メキシコ、マレーシア、ブラジル
の5か国の特恵関税制度が平成31年度から除外対象になる可能性が
高いと考えられます。

 

平成31年度(2019年4月)の中国特恵関税に関する記事が
貿易と関税 (2018年4月号)第781号にありましたので
以下に引用させて頂きます。

今後の指針になるでしょう。

 

特恵関税適用除外措置に伴う個別品目の関税率の見直し

中国特恵関税が廃止

(資料5)特恵関税制度に関する改正について説明する。
内容は大きく二つに分かれている。

1点目は、昨年度改正で行った特恵関税制度の見直しを受けて、
個別品目の税率変更を行うものである。
もう1点は、特恵税率適用の前提となる原産地確認を
徹底するための制度的な手当てである。

まずl点目、資料5に示しているが、そもそも特恵関税綱度は、
途上国の開発支援のために、開発途上国からの輸入品に対して、
一般の税率より低い関税率である特恵税率を適用する制度である。

 

しかし現在、特恵税率が適用される品目の輸入状況を見ると
途上国の中でも比較的所得の高い高中所得の一部の国、
極端にいえば中国からの輸入品に適用が偏在している。

これは、特恵関税制度の趣旨から鑑みて
いかがなものかということから、昨年度改正において、
特恵税率の適用除外となる要件の見直しを行ったところである。

 

中国特恵関税が廃止

〈参考1〉特恵関税の適用除外措置(新要件)(資料6)
具体的には資料6に示している。この表のうち、
朱書き部分が昨年度の改正で見直した条件になっている。
表の一番上の左側に「全面卒業」とあるが、こちらは従来、
高所得国からの産品であれば特恵税率は適用しない、
すなわち特恵制度から全面卒業するという条件になっていた。

しかし、昨年度改正において、「高中所得国」かつ
「世界の総輸出額に占める当該国の輸出額の割合が1%以上である国」
すなわち、ある程度輸出競争力を持つ国を除く
という条件を新規に追加した。

こうした国々からの産品も全面卒業させることに
したわけだが、この新しい件を適用することで、

平成31年度から中国等の5カ国が適用除外となる見込みである。

貿易と関税 (2018年4月号)通巻第781号より引用

 

 

 

Filed Under: FTA/EPA, RCEP, 一般特恵関税, 中国

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