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関税削減.com【HSコード分類事例の解説】

世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。

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河副太智

「インジェクター(燃料噴射装置)」のHSコード分類法

最終更新日2020年8月12日 By 河副太智 Leave a Comment

「インジェクター(燃料噴射装置)」のHSコードは「エンジンの部分品」に
分類されるのか「バルブ」に分類されるのかで混乱する事が考えられます。

このような混乱はサプライチェーン上でのEPAを適用した関税削減への
悪影響を発生させる事も考えられるため、本記事では「インジェクター」の
HSコード分類事例を種類別に紹介し、様々な事例を通じてHSコード分類先の
手がかりになる情報をお伝えします。

日本税関によるHSコード判例

「インジェクター」のHS分類判例の一部を紹介します。
(※本記事中の「判例」とは裁判所の判決ではなく税関による「判断事例」を指します。)

日本税関判例:エンジンの部分品

登録番号 116005299
税関 名古屋
処理年月日 2016-11-11
品名:エンジンの部分品
HSコード:8409.91(分類当時のHSバージョン)

貨物概要:
自動車用ガソリンエンジンに使用する燃料噴射装置構造:
本体内部に組み込まれた5種類の主要部品からなる(フィルタ)燃料入口に
位置する燃料のろ過材(スプリング)噴射口全閉時にニードルバルブを下方
に押し付けるコイルばね(ソレノイドコイル)電磁コイル(ニードルバルブ)
ソレノイドコイルの吸引力により噴射口を開閉するバルブ(ノズルプレート)
燃料を霧化する噴射口
性状:円筒形の本体からなるもので、噴射口の反対側先端部から中央部にかけて、
コネクタ付きのカバーで被覆されたもの
サイズ:最大径15mm、長さ85mm機能:ECUからの噴射信号(電気信号)に
よりソレノイドコイルに通電し、電磁力によりニードルバルブが吸引され上昇
することにより噴射口が開き、昇圧された燃料が ノズルプレートの噴孔より
霧化し噴射される
用途:自動車用エンジンの燃料噴射装置として使用
包装:60個/箱

分類理由:
本品は、自動車用のピストン式ガソリンエンジンの吸気ポートに取り付けられ、
ECUからの電気信号を受けて、加圧された燃料を霧化し噴射する装置である。
本品は、その性状及び機能等から、エンジンに専ら又は主として使用する部分
品と認められるため、関税率表第16部注2(b)、同表第84.09項及び同表解説第
84.09項の規定により、上記のとおり分類する。

出典:税関事前教示事例を一部加工して作成

見解:
関税率表第16部注2(b)では「特定の機械又は同一の項の複数の機械に専ら
又は主として使用する部分品は、これらの機械の項に属する。」との規定が
ある為、エンジンに使用されるインジェクターは「インジェクターの部分品」
に分類されました。

 

諸外国税関によるHSコード判例

米国税関判例: Fuel injectors

登録番号 N272053
税関 アメリカ ニューヨーク
処理年月日 January 28, 2016
一般的品名 Fuel injectors
HSコード 8481.80(分類当時のHSバージョン)

出典:米国税関CBP

事前教示には品番の記載もある事から以下のHyundai製のエンジンの
「35310」に該当するインジェクターが審査の対象である事がわかります。

2015 Hyundai Sonata Throttle Body & Injector

出典:HyundaiPartsDeal.com

見解:
先ほどの日本の事例とは異なり、輸入者が「エンジンの部分品」(HS:8409.91)を
検討していたにも関わらず米国税関は「弁」(HS:8481.80)に分類しました。
通則1を適用して「インジェクター」は8481項の規定に合致するというのが
米国税関の見解となっております。

 

ドイツ税関判例: High pressure injector

登録番号 DE16784/12-1
税関 ドイツ ハンブルグ
処理年月日 2012-10-30
一般的品名 High pressure injector
HSコード:8409.91(分類当時のHSバージョン)

車のエンジンに使用される高圧インジェクター

出典:European Commission

見解:
本事例は日本と同じ見解で関税率表第16部注2(b)を適用し、
エンジンの部分品(HS:8409.91)に分類されました。

 

HSコード分類最終見解

多くの部分品に言えることですが「何かの部分品」に分類されるのか
あるいは「特定の項の規定に合致する品目」に分類されるのかという点
は国によって考え方が異なる為、上記のように複数のHS分類候補がある
場合があります。

国による意見相違はHS分類において永遠の課題であり、完全な解決は
非常に難しい所ではありますが、事前に複数の税関の事前教示例を
確認する事により、国家間での意見相違のリスクの高い品目かどうか
を判断する事は可能かと思います。

本事例では日本、ドイツは同じ意見であり、米国は違う解釈をしている
という事から上記3国以外の国に「インジェクター」を輸出する場合は
「相手国ではどのように分類するのかを深く検討する必要がある」と
事前にフラグを立てる事が重要になります。

関税削減の為の戦略的HSコード分類

EPA非締約国から”インジェクター”を調達し、
EPA締約国Aにて「エンジン」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は”インジェクター”と「エンジン」のHSコードの
分類先によって関税削減の対象になるかどうかが決まります。
(※CTCの場合、原料と製品のHSが離れていればいるほど有利になる為)

このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPA規則
に沿って製造工程を検討し、かつ輸入国の税関がそれぞれの部分品と
最終製品のHSコード分類先をどう判断するか、交渉の余地はあるのか等
を考慮する事により、効率的な関税削減が実現できます。

一つの国の判断に縛られる事なく、世界の税関の判断事例を広く
把握する事がEPAを適用した関税削減に重要な考え方になります。

Filed Under: 各国税関による分類事例, 意見相違, 自動車部品

税関が敗訴したロッキングプライヤーのHSコード分類裁判

最終更新日2020年6月19日 By 河副太智 Leave a Comment

ロッキングプライヤーのHSコード分類を争点として
輸入者(Irwin Industrial Tool Company)が米国税関(CBP)を被告として訴訟提起し、
税関が敗訴した事例をCustoms Bulletinより引用して紹介します。

本事例では輸入者が「プライヤー」(HS:8203)として申告したロッキングプライヤーを
米国税関(CBP)が「レンチ」(HS:8204)であると判断し、両者の間に意見相違があり、
訴訟まで発展したという事例です。

本事例を読み解く前にまずレンチとプライヤーの違いを確認してみます。

レンチの例

ポーランド税関分類事例(HS:820412)PLBTIWIT-2019-001495

出典:EU Customs Union

モンキーレンチと呼ばれる調節機能のついたレンチです。
対象物を傷つけることなく回す事ができるのが特徴です。

 

プライヤーの例

ポーランド税関分類事例(HS:820320)PLBTIWIT-2020-000196

出典:EU Customs Union

先ほどのレンチとは異なり人間の手で握りしめる事により対象物を掴んで
回したり引き抜いたりする為、対象物が傷つきやすいのが特徴です。

 

訴訟対象のロッキングプライヤー

以下の画像の対象物が実際に裁判の対象となった品目です。

出典:Customs Bulletin

プライヤーとしての特徴である人の手で握りしめて対象物を傷つけながら
締め付け、レンチのような調節機能により締め付けたまま固定する事が可能
であるため、「プライヤー」(HS:8203)なのか「レンチ」(HS:8204)なのかで
判断に迷う部分ではあります。

 

裁判所(CIT)の判断

裁判所は米国税関(CBP)が主張するHSコード分類「レンチ」(HS:8204)の判断を退け、
輸入者が主張するHSコード分類「プライヤー」(HS:8203)の判断を認容するに至りました。

裁判所の意見としては当該品目は用途的には米国税関が主張するレンチに該当
するがHSコード分類の規定におけるレンチの定義に用途に関する規定が無いとして
用途よりも外見的特徴から「プライヤー」(HS:8203)に分類する事になりました。

 

EU税関のロッキングプライヤー判断事例

実際他の国の税関でロッキングプライヤーはどこに分類されているのかを
確認したところ、ポーランド税関に類似事例がありましたので紹介します。

ポーランド税関分類事例(HS:820320)PLBTIWIT-2019-000261

出典:EU Customs Union

本事例の対象品目は米国裁判所(CIT)で争われた品目とほぼ同種とみて
良いと考えます。

ポーランド税関では米国裁判所(CIT)と同じようにHSコード8203.20の
プライヤーに分類しています。

米国税関は裁判所の判断に不服があり控訴し、控訴裁判所においても敗訴
しておりますが、引き続きロッキングプライヤーはレンチに分類するという
考えは継続するようです。

Filed Under: HSコード, 各国税関による分類事例, 意見相違

自己証明で原産性立証書類を一切提出しない場合

最終更新日2020年2月27日 By 河副太智 Leave a Comment

昨今のEPAにおいては自己証明制度が主流となりつつあり、輸出入
企業自身が作成する原産品申告書を税関に提出し、関税削減の恩恵
を受けることになりますが、もし原産品申告書以外に原産性を主張
する証明が存在しない場合はどのように扱われるのでしょうか。

原産品申告書は輸出入企業が望むままに記入、作成する事ができる為
申告書の内容の信憑性を証明できない場合の取り扱いが問題になります。

本記事ではチョコレートを輸入する企業が自己証明制度を利用して
関税削減の恩恵を受けて輸入するものの、原産品申告書にて主張した
内容の証拠を一切提示できなかった場合の事例を紹介します。

自己証明で原産性立証書類を一切提出しない場合

輸入者Aは複数種類のチョコレートを輸入する企業で、自己証明制度
を活用して特恵関税の適用を受けておりました。

適用するEPAにおいて定められたチョコレート(HSコード:1704.90)の
品目別原産地規則はCTHとなり、かつ4類及び17類の非原産材料を使用
した場合はその価額が産品の工場渡し価額の45%を超えないことが条件
となっていますが税関の審査部門がこの点について疑義がを持った事か
ら輸入者に対し成分の詳細と価格情報を要求する事になりました。
しかし、輸入者は十分な情報を税関に提出できませんでした。

そこで税関は更に輸入者を通じて輸出者から直接情報を入手するように
働きかけましたがそれでも詳細情報の入手は実現できませんでした。

そこで日本税関は輸出国税関に検認を要請し、当該チョコレートの
原産性関する情報を得ようと試みましたが、検認においても原産性を
立証する為の十分な情報は得られませんでした。

その為、本事例においては税関の質問に対する原産性の立証ができない
という理由で特恵関税の適用を否認されるという結論に至りました。

自己証明制度であるからといって原産品申告書から原産性を主張するだけ
では不十分であり、原産品申告書の内容を証明する情報をいつでも税関に提出
できるよう準備しておくことが重要であるということがわかります。

自己証明制度においては根拠なき主張をしたくなる誘惑が目の前に
たくさん転がっていますが検認や事後調査はいつ行われても不思議では
ありませんので、日々情報の整理を心掛ける事が重要です。

Filed Under: FTA/EPA, 検認、事後確認

「オイルフィルター」のHSコード分類法

最終更新日2020年6月25日 By 河副太智 Leave a Comment

「オイルフィルター」のHSコードは「自動車の部分品」に分類されるのか
フィルターの材質によって分類先が変わるのか、など迷う点が多いです。

このような混乱はサプライチェーン上でのEPAを適用した関税削減への
悪影響を発生させる事も考えられるため、本記事では「オイルフィルター」の
HSコード分類事例を種類別に紹介し、様々な事例を通じてHSコード分類先の
手がかりになる情報をお伝えします。

日本税関によるHSコード判例

「オイルフィルター」のHS分類判例の一部を紹介します。
(※本記事中の「判例」とは裁判所の判決ではなく税関による「判断事例」を指します。)

日本税関判例:液体のろ過器に分類された事例

登録番号 110005586
税関 東京
処理年月日 2010-12-24
品名:オイルフィルター
HSコード:8421.23(分類当時のHSバージョン)

貨物概要:
鉄製プレートに取り付けられた紙製のろ過材を、鉄製ケースに装填して
製品にした自動車用オイルフィルター
製 法:蛇腹状に折った濾紙の両端にスチール製プレートを取り付け、
スチール製外装ケースに装填したもの。オイル流入口側の内部にはシリコ
ーンゴム製逆止弁が取り付けられ、反対側内部にはスチール製スプリング
が挿入されている。
材 質:ろ過材-セルロース繊維(木材パルプ)、合成繊維(ポリエチレンテ
レフタレート)、フェノール樹脂 外装ケース、プレート及びスプリング-ス
チール 逆止弁-シリコーンゴム
サイズ:直径68.4mm×高さ85mm
用 途:自動車エンジンオイル用のオイルフィルター

分類理由:
本品は、紙製のろ過材にスチール製プレートを取り付け、スチール製外装ケ
ースに装填して製品にした自動車用オイルフィルターである。 本品は、自動車
用内燃機関の潤滑油のろ過機であり、関税率表第84.21項及び同表解説第
84.21項の規定により、上記のとおり分類する。 なお、本品は、同表第17
部注2(e)の規定により同部から除外されることから、同表第87類の自動車
の部分品には分類されない。

出典:税関事前教示事例を一部加工して作成

見解:
オイルフィルターのHSコードというと以下の記事で紹介したように材質によって
HSコードの分類先を検討する場合もあります。

「清浄機用フィルター」のHSコード分類法

本事例ではろ過材は紙製ではありますが、スチール製プレートが取り付けられて
いるため、液体のろ過機に分類されたと考えられます。8421項の解説参照。

また、17部注2(e)においてろ過機は自動車部品のHSコードからは
除外される対象となっている為自動車部品のHSコードには分類されません。

 

諸外国税関によるHSコード判例

イギリス税関判例: GALVANIZED OIL FILTER

登録番号 GB500688166
税関 イギリス サウスエンド
処理年月日 2009-10-09
一般的品名 GALVANIZED OIL FILTER
HSコード 8421.23(分類当時のHSバージョン)

本事例の品目は亜鉛めっき鉄製のオイルフィルターです。
取付具等は無く、フィルターのみである為、材質分類を検討して鉄製品が
属する15部の規定を確認したところ16部、17部の品目が除外されている為、
ろ過機(HS:8421.23)への分類に至ったのではないかと考えます。

出典:European Commission

 

オーストリア税関判例: OIL FILTER HOUSING

登録番号 AT2006/000472
税関 オーストリア ウィーン
処理年月日 2006-10-11
一般的品名 OIL FILTER HOUSING
HSコード:8421.99(分類当時のHSバージョン)

本品目はアルミ製のオイルフィルターのハウジングとなり、一見自動車
部品にも見えますが「自動車用ろ過機の部分品」という事でHSコード
8421.99に分類されました。

出典:European Commission

HSコード分類最終見解

フィルター関係のHSコード分類は非常にややこしい為、材質や形状を
よく調査した上で様々な判例を比較する必要があります。

特に、繊維製品のフィルターの場合は59類の注7の(b)の定義にて
「技術的用途に供する種類の紡織用繊維製品」という規定がある為、
材質分類になる可能性が高い為、上記事例とは別に考える必要があります。

関税削減の為の戦略的HSコード分類

EPA非締約国から”フィルター”を調達し、
EPA締約国Aにて「ろ過機」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は”フィルター”と「ろ過機」のHSコードの
分類先によって関税削減の対象になるかどうかが決まります。
(※CTCの場合、原料と製品のHSが離れていればいるほど有利になる為)

このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPA規則
に沿って製造工程を検討し、かつ輸入国の税関がそれぞれの部分品と
最終製品のHSコード分類先をどう判断するか、交渉の余地はあるのか等
を考慮する事により、効率的な関税削減が実現できます。

一つの国の判断に縛られる事なく、世界の税関の判断事例を広く
把握する事がEPAを適用した関税削減に重要な考え方になります。

Filed Under: HSコード, 各国税関による分類事例

「革製ハンドルカバー」のHSコード分類法

最終更新日2020年6月25日 By 河副太智 Leave a Comment

「革製ハンドルカバー」のHSコード分類は構造や材質によって、
「革製品に該当するHSコード」や、「自動車の部分品(ハンドル)」
など複数の分類先があります。

用途は同じであるにも関わらず、複数のHSコードに分類されてしまうと
分類する側に混乱を生じさせてしまうという問題やサプライチェーン上
でのEPAを適用した関税削減への悪影響が考えられます。

本記事では「革製ハンドルカバー」のHSコード分類事例を種類別に紹介し、
様々な事例を通じてHSコード分類先の手がかりになる情報をお伝えします。

日本税関によるHSコード判例

「革製ハンドルカバー」のHS分類判例の一部を紹介します。
(※本記事中の「判例」とは裁判所の判決ではなく税関による「判断事例」を指します。)

日本税関判例:ハンドル用部品分類された事例

登録番号 110005512
税関 東京
処理年月日 2010-12-24
自動車ハンドル用革製部品
HSコード:8708.94(分類当時のHSバージョン)

貨物概要:
自動車ハンドル用部品として使用するために特定の形状に加工した革製のシート
性 状:なめし加工された革を自動車ハンドルを覆う形状に裁断、穴あけ加工し、
両端に縫製用の糸の取り付け及び両面テープ 貼りの加工を施したもの。
材 質:牛革(シート部分) サイズ:約30cm×約33.5cm
用 途:乗用自動車ハンドルの部分品 梱 包:50セット(左右各1枚で1セット)
で1箱のカートン入り

分類理由:
本品は、自動車ハンドル用として特定の形状に裁断加工された革で、自動車ハンドル
に取り付けることによりその一部を構成するものであり、専ら自動車に使用する物品
と認められる。 したがって、本品は、関税率表第17部注3及び同表解説第17部総
説(III)並びに同表第87.08項及び同表解説第87.08項の規定により、
ハンドルの部分品として上記のとおり分類する。

出典:税関事前教示事例を一部加工して作成

見解:
裁断、穴あけ加工が施され、自動車用ハンドルに取り付けるという目的が
明白である事から革製品には分類されず、自動車用ハンドル部品に分類されました。

 

諸外国税関によるHSコード判例

ドイツ税関判例: STEERING WHEELS

登録番号 DE9149/15-1
税関 ドイツ
処理年月日 2015-05-19
一般的品名 STEERING WHEELS
HSコード 8708.94(分類当時のHSバージョン)

本事例の品目も先ほどの日本の事例(登録番号:110005512)と同じように
自動車ハンドルを覆う形状に裁断、穴あけ加工等がされており、自動車用
ハンドルに取り付けるという目的が明白である事から革製品には分類されず、
自動車用ハンドル部品に分類されました。

出典:European Commission

 

ポーランド税関判例: FULL GRAINS LEATHER

登録番号 PLPL-WIT-2014-01186
税関 ポーランド ワルシャワ
処理年月日 2014-09-04
一般的品名 FULL GRAINS LEATHER FOR steering wheel cover
HSコード:4205.00(分類当時のHSバージョン)

本事例では上記2点とは違った判例で、ハンドル用に裁断してあるにも
かかわらず、その他の革製品(HSコード:4205.00)に分類されました。

出典:European Commission

品目詳細を訳すと
「本品は自動車用のハンドルカバーであり、牛革のフルグレインレザーを裁断、
染色し、ハンドルカバーの形に生成された物である。」となります。

HSコード分類最終見解

ポーランド税関の品目事例は日本、ドイツの品目事例とあまり変わらないので
HS分類が矛盾しているようにも見えますが、個人的な意見ではポーランド税関の
事例は「フルグレインレザー」を使用しているという部分が特徴的であると考えます。
※革にも様々なグレードがあり、「フルグレインレザー」とは体毛の真下の生皮の
繊維が最も密な部分から取れる「革」になめされる前の「皮」の事です。

実際の品目を見ていないので確信は持てませんが自動車部品というよりは革の特徴
が強く出ていた品目ではないかと推測します。

関税削減の為の戦略的HSコード分類

EPA非締約国から”革”を調達し、
EPA締約国Aにて「ハンドル」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は”革”と「ハンドル」のHSコードの
分類先によって関税削減の対象になるかどうかが決まります。
(※CTCの場合、原料と製品のHSが離れていればいるほど有利になる為)

このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPA規則
に沿って製造工程を検討し、かつ輸入国の税関がそれぞれの部分品と
最終製品のHSコード分類先をどう判断するか、交渉の余地はあるのか等
を考慮する事により、効率的な関税削減が実現できます。

一つの国の判断に縛られる事なく、世界の税関の判断事例を広く
把握する事がEPAを適用した関税削減に重要な考え方になります。

Filed Under: HSコード, 各国税関による分類事例, 自動車部品

EPA検認事例(非原産ココアパウダーで特恵が否認された例)

最終更新日2020年2月27日 By 河副太智 Leave a Comment

EPAを適用して関税削減を行う際に必要な原産地証明の内容に誤りが
あるにもかかわらず特恵関税が適用され、後日税関の検認や事後調査
の対象になった場合はどうなるのか、実例を紹介します。

輸入者AはEPA締約国B国からココアパウダーを輸入する際に当該品目は
B国とのEPA上の締約国原産品であるという内容の原産地証明を税関に提出し、
特恵関税の適用を受ける事になりました。

EPA検認事例(非原産ココアパウダーで特恵が否認された例)

※ココアパウダー(HSコード1805.00)の品目別原産地規則例は以下の通りです。

第一八・〇五項又は第一八・〇六項の産品への当該各項以外の項の材料から
の変更(非原産材料である第一八・○一項のカカオ豆を使用する場合には、
東南アジア諸国連合の加盟国である第三国において収穫され、採取され、又は
採集される場合に限る。)(※規定内容は協定によって異なるので注意)

輸入申告時には当該ココアパウダーには非原産材料であるカカオ豆(HS1801)が
使用されているが当該品目は東南アジア諸国連合の加盟国から調達したもので
あるため、品目別原産地規則は満たすという申告内容でした。

そこで事後の調査において税関が輸入者にカカオ豆の配合詳細を確認したところ
以下の成分構成であることを確認しました。

E国 (東南アジア諸国連合の加盟国) (30%),
F国 (東南アジア諸国連合の加盟国) (40%),
アフリカ (30%).

上記成分配合を見るとE国とF国は東南アジア諸国連合の加盟国であるため、
問題はありませんが、アフリカ原産のカカオ豆については当該品目の品目別
原産地規則を満たさないのではないかという疑いを持つ事になりました。

そこで更に輸入者に調査を行うも、進展が得られなくなってしまったため
輸出国であるB国に対し検認要請を行う事になりました。

調査の結果当該「カカオ豆」は品目別原産地規則を満たすものではない事が
判明し、当該品目は特恵否認の対象となり、輸入者Aは適切な修正、追徴関税
の支払いを余儀なくされることとなりました。

本事例では輸入者が意図して行ったのかどうかは不明ですが、税関の調査に
対し、カカオ豆の一部がアフリカ産である事を自身で証明している所から鑑みる
と単なる知識不足が原因でこのような結果になってしまったのではないかと考えます。

出典:GUIDE TO COUNTER ORIGIN IRREGULARITIES (EXCLUDING FRAUD)

 

Filed Under: FTA/EPA, 検認、事後確認

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