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関税削減.com【HSコード分類事例の解説】

世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。

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河副太智

事前教示で関税率、原産地規則を確認

最終更新日2019年10月1日 By 河副太智 Leave a Comment

HSコードの特定は困難を伴う為、中途半端な知識にてこれを行い、
判断を誤ると通関審査時にHSコード特定誤りに伴う原産地規則解釈の誤りを
指摘されて特恵否認、更には過少申告加算税等のペナルティを課される
可能性があります。

このような指摘は過去数年分の輸入貨物も対象となりますので、HSコードの
特定や原産地規則の確認に誤りがあると深い痛手を負う事になります。
その為、このような状況を防ぐ為に事前教示の活用をお勧めします。

 

輸入貨物の事前教示(日本での関税)

 


※税関HPより

 

事前教示制度はHSコードの事前確認だけでなく、原産地規則の解釈に
ついてもあらかじめ税関の判断を書面にて発行してもらえる制度です。
(3年間有効)

このような制度を予め活用しておけば後々の審査においてトラブルになる事を
防ぐ事が可能となるうえ、将来的に発生するコスト計算の正確に算出できる
ようになるため、取引先に対しても有益な情報提示が可能になります。

事前教示制度は申請から回答書発行までは数週間かかり、
貨物の詳細に関する書類の提出や製造工程、用途の説明など細かな内容
を具体的に提示する必要がある為、事前教示の申請は取引前に早めに
行う事をお勧めします。

事前教示申請先

HS分類の事前教示
原産地規則の事前教示
関税評価の事前教示
減免税に係る事前教示

事前教示申請フォーム

 

事前教示に関する照会書(C-1000)Word記載要領
事前教示に関する照会書(原産地照会用)(C-1000-2)Word記載要領
事前教示に関する照会書(関税評価照会用)(C-1000-6)Word記載要領
事前教示に関する照会書(減免税照会用)(C-1000-22)Word記載要領
インターネットによる事前教示に関する照会書(C-1000-13)Word記載要領
インターネットによる事前教示に関する照会書(原産地照会用)(C-1000-16)Word記載要領
インターネットによる事前教示に関する照会書(関税評価照会用)(C-1000-19)Word記載要領
インターネットによる事前教示に関する照会書(減免税照会用)(C-1000-25)Word記載要領

 

Filed Under: HSコード

輸入貨物のHSコードを調べる

最終更新日2019年10月1日 By 河副太智 Leave a Comment

日本に輸入する貨物のHSコードを調べる際に必要となる資料は
主に以下の通りです。

■実行関税率表
■英語版実行関税率表
税関のHPに掲載されている品目別の関税率一覧。部類注規定もここから確認。

輸入貨物のHSコードを調べる

 

■webタリフ
■英語版webタリフ
上記の実行関税率表をシンプルに表示し、キーワード検索もできるツール。

輸入貨物のHSコードを調べる

■関税率表解説
実行関税率表の品目分類方法を細かく解説した資料。ここから分類例規も確認。

輸入貨物のHSコードを調べる

 

↓関税率表解説本文

輸入貨物のHSコードを調べる

↓分類例規

輸入貨物のHSコードを調べる

■事前教示回答事例
輸入者から税関に対し、品目分類の照会をした際の回答事例のデータベース。
日本の税関に対しては品目分類の事例として拘束力を持つ事がある為、
類似の事例がある場合は非常に参考になる。

↓検索画面

輸入貨物のHSコードを調べる

↓検索結果

輸入貨物のHSコードを調べる

 

※当該データベースは照会日から3年を経過すると削除されるので
自社に有利な事例は印刷して保管する事をお勧めします。

 

海外の税関にもこのような事前教示回答事例が存在します。
日本の税関に対しては直接の拘束力を持ちませんが、HS6桁レベルでの分類
であれば分類範囲は基本的には共通である為、豊富な分類事例を知る事ができる。

■米国税関(CBP)事前教示回答事例
輸入者から米国税関に品目分類の照会をした際の回答事例のデータベース。
日本の税関に対して品目分類の事例としての拘束力を持たないが
数十万件の回答事例が保存されており、HS6桁レベルでの分類であれば
分類範囲は基本的には共通である為、豊富な分類事例を知る事ができる。
(アメリカ向けの貨物のHS分類に関しては強力な事例となり得る。)

↓検索画面

輸入貨物のHSコードを調べる

↓検索結果

輸入貨物のHSコードを調べる

■欧州(EU)税関事前教示回答事例
輸入者から欧州税関に品目分類の照会をした際の回答事例のデータベース。
日本の税関に対して品目分類の事例としての拘束力を持たないが
EU加盟国全てに対して行われた品目分類照会の回答事例が保存されており、
HS6桁レベルでの分類であれば分類範囲は基本的には共通である為、
豊富な分類事例を知る事ができる。
また、画像付きの事例もあるのでとてもわかりやすい。
(EU向けの貨物のHS分類に関しては強力な事例となり得る。)

↓検索画面

輸入貨物のHSコードを調べる

↓検索結果

輸入貨物のHSコードを調べる

Filed Under: HSコード

原産品申告書作成は輸出者と輸入者どちらが行うべきか

最終更新日2019年9月30日 By 河副太智 Leave a Comment

TPPと日EU・EPAにて採用されている自己証明方式によって
輸出者、生産者、輸入者のいずれかが原産品申告書を作成し、
特恵関税率の適用を要求する事が可能となっております。

この場合「誰が原産品申告書を作成するか」という点で問題に
なる事があり得ます。

関税削減が最優先と考えればとりあえずお願いしやすい方に作成して
もらうという選択肢があるかと思いますが、原産品申告書作成者を
安易に選択すると企業秘密を外部に漏えいするリスクがあります。

これは原産品申告書作成時に企業秘密が漏えいするというよりは
関税削減から一定期間が経ってからやってくる税関からの事後確認
(検認)での原産性の立証作業の際に起こり得ます。

その理由としては税関の事後確認(検認)の相手方が企業秘密を
有する者ではない場合が想定できるからです。

例えば日本の企業が外国に輸出をして、相手国での関税削減の為に
相手国側の輸入者に原産品申告書を作成させた場合、相手国税関の
事後確認(検認)の対象は原産品申告書を作成した相手国の輸入者に
なりますので、貨物の製造工程、原料、価格などの情報を相手国の
輸入者が相手国側の税関に報告する必要があると考え、自社の情報を
丸ごと取引先である相手国輸入者に提供してしまうという事が考えられます。

輸出先国の輸入者に原産品申告書を作成依頼をする事は関連企業でない限り
一般的ではない事かと思いますが、基本的に輸入者が事後確認(検認)
において原産性を立証する重要なポジションに置かれる為、輸入者に
企業秘密を渡さず、輸出者、生産者が直接相手国税関に企業秘密が含まれる
製造工程を提供する立場になるためにはどのようにすれば良いかを事前に
検討する事は自己証明制度の活用において非常に重要であると考えます。

 

協定文から事後確認(検認)の対象者を確認する

協定によって事後確認(検認)の対象者は違いがある為、各協定文を
よく確認してから原産品申告書作成者を決定する事が重要です。

以下にTPPと日EU・EPAの事後確認(検認)に関する協定文を記載します。

 

TPPの事後確認(検認)対象者

TPPの事後確認(検認)に関する規定は以下の通りです。

TPP 第3.27条 原産品であることの確認

1
輸入締約国は、自国の領域に輸入される産品が原産品であるかどうかを決定するため、
次の1又は2以 上の手段により、関税上の特恵待遇の要求について
確認を行うことができる(略)

(a) 当該産品の輸入者に対し、情報について書面により要請すること。

(b) 当該産品の輸出者又は生産者に対し、情報について書面により要請すること。

(c)当該産品の輸出者又は生産者の施設に確認のための訪問を行うこと。

(略)

2
輸入締約国は、確認を行う場合には、輸入者、輸出者又は生産者から直接情報を
受領する。

3
輸入締約国は、関税上の特恵待遇の要求が輸出者又は生産者が作成した
原産地証明書に基づく場合において、1(a)の規定に基づいて行う情報についての
要請に対し、輸入者が当該輸入締約国に情報を提供せず、又は提供された情報が
関税上の特恵待遇の要求を裏付けるのに十分でないときは、当該要求を否認する前に、
1(b)又は(c)の規定に基づき、当該輸出者又は生産者に対し、当該要求を裏付ける
ための情報につ いて要請する。
当該輸入締約国は、6(e)に規定する期間内に当該確認(1(b)又は(c)の規定に
基づく当該輸出者又は生産者に対する追加的な要請を含む。)を完了する(注)。
注.締約国は、関脱上の特恵待遇の要求が輸入者の作成した原産地証明書に碁づいて
行われる場合には、輸出者若しくは生産者に 対して当該要求を裏付けるために
情報を要請すること又は輸出者若しくは生産者を過じた確認を完了することを
要求されない。

TPPにて輸出者、生産者が原産品申告書を作成した場合

3.27条3項前段において輸入国税関による事後確認(検認)の対象は
まず輸入者となり、輸入者の回答が原産性を立証に至らない場合に
輸出者、生産者が事後確認(検認)の対象になると規定されています。

この場合、輸入者から直接輸出者、生産者に対し情報開示の要求をする事が
考えられますが、ここで輸入者に企業秘密を公開しなくても相手国税関に
直接情報の提示ができると考えられますので、取引先の輸入者に情報を
公開する前に直接相手国税関と接触するように対策をするべきです。

TPPにて輸入者が原産品申告書を作成した場合

3.27条3項の注において輸入国税関による事後確認(検認)の対象は
輸入者となり、輸入者の回答が原産性を立証に至らない場合に輸出者、
生産者に対する事後確認(検認)は行わなくても良いとする規定となる為、
輸入者の回答が不十分であるというだけで特恵関税率の適用が否認される
可能性が高くなる為、輸出者、生産者としては輸入者に原産地規則を満たす
事を立証する為に企業秘密を提供する必要が出てくる場合があります。

その為、輸入者に原産品申告書を作成してもらう場合は原産地規則を満たす事
を立証する為の製造工程や原料、調達費用などの情報を輸入者に開示しても
問題がないかどうかを確認する必要があります。
(基本的に輸入者が関連会社の場合以外では一般的ではありません)

 

 

日EU・EPAの事後確認(検認)対象者

日EU・EPAの事後確認(検認)に関する規定は以下の通りです。

日EU・EPA 第3.21条 原産品であるかどうかについての確認

1
輸入締約国の税関当局は、自国に輸入された産品が他方の締約国の原産品であるか
どうか又はこの章に定める他の要件を満たすかどうかを確認するため、
第3.16条に規定する関税上の特恵待遇の要求を行った輸入者に対して情報の提供を要求
することにより、危険性を評価する方法(無作為抽出を含む。)に基づく確認を
行うことができる。
輸入締約国の税関当局は、税関への輸入申告の時、産品の引取りの前又は産品の
引取りの後に確認を行うことができる。

(略)

4
輸入者は、輸入締約国の税関当局に対し、関税上の特恵待遇の要求が
第3.16条2(a)に規定する原産地に関する申告に基づくものである場合において、
要求された情報がその全てについて又は1若しくは2以上のデータの要素に関連して
輸出者から直接提供され得るときは、その旨を通報する。

 

日EU・EPAにて輸出者、生産者が原産品申告書を作成した場合

3.21条1項において輸入国税関による事後確認(検認)の対象はまず輸入者となり、
輸入者の回答が原産性を立証に至らず、輸出者か生産者が立証可能な場合はその旨
伝える事により輸出者、生産者が事後確認(検認)の対象となります。(3.21条4項)
※3.21条4項にて規定されている「第3.16条2(a)に規定する原産地に関する申告」が
輸出者、生産者作成という意味になります。

 

日EU・EPAにて輸入者が原産品申告書を作成した場合

3.21条1項において輸入国税関による事後確認(検認)の対象は輸入者となり、
輸入者の回答が原産性を立証に至らない場合における輸出者、生産者に対する
事後確認(検認)の要否に関しての規定は存在しません。

輸入者の回答が不十分であるというだけで特恵関税率の適用が否認
される可能性が高くなる為、輸出者、生産者としては輸入者に原産地規則を
満たす事を立証する為に企業秘密を提供する必要が出てくる場合があります。

その為、輸入者に原産品申告書を作成してもらう場合は原産地規則を満たす事
を立証する為の製造工程や原料、調達費用などの情報を輸入者に開示しても
問題がないかどうかを確認する必要があります。
(基本的に輸入者が関連会社の場合以外では一般的ではありません)

 

日EU協定に基づくEU税関当局からの情報提供要請

Filed Under: FTA/EPA

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

最終更新日2019年9月22日 By 河副太智 Leave a Comment

関税削減をする為にはEPA締約国間での貿易取引である事を証明する為に
該当品目がどの国の原産なのかを特定し、税関に申告する必要があります。

この原産国を特定する方法にHSコードを使用するものがありますが、
HSコードに馴染みの無い方にとってはこの分野を極力避けて原産国の
特定をしたいと考えるかもしれません。

本記事では原産国を特定する方法にHSコード分類を極力避けた場合の
メリットとデメリットについて解説させていただきます。

 

価額を用いた原産国特定方法が好まれるが…

該当品目がどの国の原産なのかを特定する方法は品目にもよりますが
大まかに以下の3点に分類されます。

  1. 原料、製造コスト等の価額を用いて原産国を特定する方法
  2. HSを用いて原料から製品への変化を基準として原産国を特定する方法
  3. 原料から製品への製造工程そのものから原産国を特定する方法

上記3点の証明方法のうち、どれか一つを原産国の特定方法として任意に
選択できるという場合であれば1を選択したいと考えるかもしれません。

なぜならば2と3の方法は通関の専門知識が深く関わっており、対策しづらい
感じがしますが、1の方法は製造の工程で発生する費用の証明が主になる為
取り組みやすく感じるのが一般的な考えになるでしょう。

確かに価額を用いた原産国特定方法は証明手順が容易にイメージでき、
小学生レベルの算数で誰でも対応可能ではありますがデメリットが多いのも
事実です。

この両者を比較する為に以下の事例をご覧ください。
※3の製造工程で原産国を特定する方法は特定の品目に限られるので本記事では省略します。

 

絵画制作の事例で原産国証明方法を比較

 

B国に住む画家がC国から「絵具セット」をCIF1,000円で輸入しました。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

その画家はB国にてC国産の「絵具セット」を使用して絵画を作成。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

その後完成した「絵画」をA国にFOB5,000円で販売する事になりました。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

A国とB国はEPA締約国である為「絵画」がB国産として認められれば
A国にて関税削減の対象となります。

 

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

しかし、C国はA国ともB国ともEPA締約国ではありませんので
C国産の「絵具セット」を使用してB国で制作された絵画がB国産として
認められるには原産地規則を満たす必要があります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

この絵画がB国産として認められるには先ほどの1の価額を用いた方法と
2のHS分類による方法の2種類どちらか一方を満たせばよいという規定で
あった場合にそれぞれの方法のメリットとデメリットは以下になります。

 

1の価額を用いた方法を適用する場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」はCIF1,000円で
B国にて制作された後、A国向けFOB価格は5,000円になりましたので、
B国にて与えられた付加価値は80%になります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

価額を用いた方法で原産基準を満たすか否かの計算方法は協定によって
複数種類があります。本記事では最も一般的な控除方式の式で計算します。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

RVCとはRegional Value Contentの略で、産品が生産者の現地地域で
生産されている度合い(現地調達率)を示すパーセンテージです。

「絵画」の価格と「絵具セット」の価格を式に当てはめると
以下のようになります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

付加価値が80%となる為、定められた付加価値基準がこの値より下であれば
基準をクリアし、A国での輸入時に当該「絵画」はB国産とみなされ、
特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

 

付加価値基準を利用するメリット

■原料のHSコードの選定作業が無く、小学生レベルの算数で原産性を
証明できるので比較的容易に取り組むことができる

 

付加価値基準を利用するデメリット

■原産地規則を満たせても非原産材料の価格等が高騰した場合、
ある時点から付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
その結果原産性を満たさなくなる可能性がある。

■最終製品の価格が下落した場合も同じくある時点から
付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■為替の変動があった場合に非原産材料の価格と最終製品の価格間の
バランスが変わる事により付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■上記3点の変動を常に把握しなければいけない為、
取引毎に全ての費用を確認し続ける手間がある。

■輸出先、取引先等に原産材料の仕入れ値を知られてしまう可能性があり、
輸出先が関連会社で無い場合はハードルが高くなる。
(上記の例では画家が販売先に「絵具セット」の原価を公開する事になる)

■価格に関する証明書類が多くなる為、事後調査や検認の際に税関から
求められる資料が多くなり、非常に手間がかかる。

 

関税分類変更基準を満たす場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」のHSは3213で
B国にて制作された後、A国向け「絵画」のHSは9701になります。

このようにB国での加工作業により関税分類の変更という現象を基準に
して原産国を特定する事が可能になり、A国での輸入時に当該「絵画」はB
国産とみなされ、特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

関税分類変更基準を利用するメリット

■一度最終製品と原料のHSコードを確定し、原産地規則を満たせば
価格や為替変動の影響を受けて原産性を失う事が無い。

■取引毎の確認の手間が省ける。

■事後調査や検認時にも原産性の証明が付加価値基準に比べて
容易になる。

関税分類変更基準を利用するデメリット

■HSコードの選定作業専門知識が必要となる為、新規貨物を扱う際に
手間がかかる。

結論

1の価額を用いた方法と2のHS分類による方法のどちらか一方を選択できる場合
私個人的には2のHS分類による変更基準を満たして原産性を立証する方が
長い目で見れば良いのではないかと考えます。

中には1の価額を用いた方法でないと原産性を立証できない品目もあります。
例えば非原産材料の車の部分品を加工して、付加価値のある車の部品に
する場合等どうしても2のHS分類による変更基準が使用できないケースもありますので
実務上はケースバイケースにならざるを得ないでしょう。

しかし、品目の特性上1と2の両方の方法で対応可能な品目である場合は
2のHS分類による方法の方がメリットが多くありますので関税削減対策を
効率的に行うにはHSコードによる品目分類の知識が非常に重要になります。

Filed Under: FTA/EPA, HSコード

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

最終更新日2020年1月25日 By 河副太智 Leave a Comment

EPA締約国の原産品かどうかを判断する基準である原産地規則では
「関税分類変更基準(CTC)」か「付加価値基準(VA)」のどちらか一方を
満たせばEPA締約国の原産品とみなすという規定が多くあります。
※品目によって基準は異なり、基準が一つだけの場合や両方満たす必要がある場合等様々あります。

例として日タイEPAでの自動車部品の原産地規則を挙げます。

第8716.90号の産品への他の項の材料からの変更
又は、
原産資格割合が40パーセント以上であること
(第8716.90号の産品への関税分類の変更を必要としない。)

 

「第8716.90号の産品への他の項の材料からの変更」という文言が
「関税分類変更基準(CTC)」
を指して、
「原産資格割合が40パーセント以上」という文言が
「付加価値基準(VA)」を指している事になります。

 

この2つのうちどちらか一方を満たせば原産地規則を満たすという
条件下であればどちらを満たす方が容易なのかを検討すべきです。

本記事ではこの両者の違いを「絵画」の製造工程に例えてみます。

VAとCTCの違いを絵画制作で例えてみる

B国に住む画家がC国から「絵具セット」をCIF1,000円で輸入しました。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

 

その画家はB国にてC国産の「絵具セット」を使用して絵画を作成。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

 

その後完成した「絵画」をA国にFOB5,000円で販売する事になりました。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

 

A国とB国はEPA締約国である為「絵画」がB国産として認められれば
A国にて関税削減の対象となります。

 

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

しかし、C国はA国ともB国ともEPA締約国ではありませんので
C国産の「絵具セット」を使用してB国で制作された絵画がB国産として
認められるには原産地規則を満たす必要があります。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

このような場合にはA国とB国で締結されているEPA協定で定められている
「絵画」(HS9701)に対する品目別原産地規則を確認します。

仮に「絵画」(HS9701)に対する品目別原産地規則が以下であった場合

「関税分類変更基準(CTC)HS4桁変更」
あるいは
「付加価値基準(VA)40パーセント以上」
のどちらか一方を満たす場合はB国産とみなす

どちらの規定をクリアする方が容易なのかをそれぞれ検討してみます。

 

付加価値基準を満たす場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」はCIF1,000円です。
当該絵具を用いてB国にて絵画が制作された後、A国向けに販売。
この時のFOB価格は5,000円になりましたので、B国にて与えられた付加価値は
80%になります。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

付加価値基準を満たすか否かの計算方法は協定によって複数種類があります。
本記事では最も一般的な控除方式の式で計算します。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

RVCとはRegional Value Contentの略で、産品が生産者の現地地域で
生産されている度合い(現地調達率)を示すパーセンテージです。

「絵画」の価格と「絵具セット」の価格を式に当てはめると
以下のようになります。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

付加価値が80%となる為「付加価値基準(VA)40パーセント以上」という
要件はクリアし、A国での輸入時に当該「絵画」はB国産とみなされ、
特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

 

付加価値基準を利用するメリット

■原料のHSコードの選定作業が無く、小学生レベルの算数で原産性を
証明できるので比較的容易に取り組むことができる

 

付加価値基準を利用するデメリット

■原産地規則を満たせても非原産材料の価格等が高騰した場合、
ある時点から付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
その結果原産性を満たさなくなる可能性がある。

■最終製品の価格が下落した場合も同じくある時点から
付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■為替の変動があった場合に非原産材料の価格と最終製品の価格間の
バランスが変わる事により付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■上記3点の変動を常に把握しなければいけない為、
取引毎に全ての費用を確認し続ける手間がある。

■輸出先、取引先等に原産材料の仕入れ値を知られてしまう可能性があり、
輸出先が関連会社で無い場合はハードルが高くなる。
(上記の例では画家が販売先に「絵具セット」の原価を公開する事になる)

■価格に関する証明書類が多くなる為、事後調査や検認の際に税関から
求められる資料が多くなり、非常に手間がかかる。

 

関税分類変更基準を満たす場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」のHSは3213で
B国にて制作された後、A国向け「絵画」のHSは9701になります。
それによりB国で発生した関税分類変更はHS4桁レベルでの変更となり、
「関税分類変更基準(CTC)HS4桁変更」という要件を満たし、
A国での輸入時に当該「絵画」はB国産とみなされ、
特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

 

関税分類変更基準を利用するメリット

■一度最終製品と原料のHSコードを確定し、原産地規則を満たせば
価格や為替変動の影響を受けて原産性を失う事が無い。

■取引毎の確認の手間が省ける。

■事後調査や検認時にも原産性の証明が付加価値基準に比べて容易になる。

関税分類変更基準を利用するデメリット

■HSコードの選定作業専門知識が必要となる為、新規貨物を扱う際に手間がかかる。

 

結論

付加価値基準と関税分類変更基準のどちらか一方を選択できる場合には
私個人的には関税分類変更基準を満たして原産性を立証する方が長い目で
見れば良いのではないかと考えます。

もちろん全ての品目の原産性立証方法を関税分類変更基準にするべきとは
考えません。
中には付加価値基準でないと原産性を立証できない品目もあります。

例えば非原産材料の「車の部分品」を加工して、付加価値のある「車の部分品」
を製造する場合など、どうしても関税分類変更基準が使用できないケースも
ありますので実務上はケースバイケースにならざるを得ないでしょう。

関税分類変更基準での検討は慣れないととっつきにくいと思いますが
メリットが多くありますので付加価値基準と関税分類変更基準のどちらか一方を
選択できる場合には関税分類変更基準での証明によるメリットをご検討
頂ければと考えます。

Filed Under: FTA/EPA

ロールアップで原産地規則を満たす

最終更新日2019年9月12日 By 河副太智 Leave a Comment

「ロールアップ」とは非原産材料を使用した原料を締約国内において
複数の加工工程を経た場合に原産地規則が満たしやすくなる規定です。

多国間が絡むEPAでグローバルサプライチェーンを組まれている場合に
非常に有利になる規定となりますので是非参考にしてください。

ロールアップの概要

以下の図はロールアップ規定の概要を表しています。

ロールアップで原産地規則を満たす

※経済産業省セミナースライドより引用

このままではわかりづらいと思いますのでそれぞれ分解して解説します。

上記の図は日本で生産された貨物をFTA/EPA締約国に輸出し、
相手国で特恵関税の恩恵を受けるというパターンです。

上記スライドの左側の完成品の部分を見てみましょう

 

ロールアップで原産地規則を満たす

 

FOB価格は$1,200となっており、このうちの①と②の合計$500の部分が
非原産材料となっており、③と④はの合計$400の部分が原産材料となっています。

そして③に関しては一部非原産材料が含まれているにも関わらず、
全て原産材料として扱われております。

そこで非原産材料を含む部品③がなぜ原産品となるのかを説明します。

 

ロールアップで原産地規則を満たす

 

 

完成品の製造を行い、輸出するのはA社となり

その完成品の部品③($300)は日本国内のB社から調達した貨物となります。
この部品③は完成品から見れば一次製品となります。
そしてこの一次製品はサブパーツYという二次製品を第三国から輸入して製造されています。

B社の一次製品の価格は$300となり
その内の$200($100+$50+$50)が原産価格となり
$100が非原産価格となります。

付加価値基準で考えた場合、この一次製品の原産地割合は66%となり、基準値の
40%を超えている為、この一次製品は完成品からみれば原産の貨物と判断されます。

つまり非原産貨物$100のサブパーツYも含めて原産品としてカウントできる為、
原産地規則を満たしやすくなるという有益な規定です。

※ロールダウンとは逆の考え方になりますのでご注意ください。

 

TPPのロールアップ規定

TPP原産地規則協定文においてのロールアップ規定は以下の通りです。

第3.6条 生産に使用される材料
1.各締約国は、非原産材料について、この章に規定する
要件を満たすような更なる生産が行われる場合に おいて、
その後に生産された産品が原産品であると決定するときは
当該非原産材料は、当該産品の生産者によって生産されたか
どうかにかかわらず、
原産材料として取り扱われることを定める。

 

日タイEPAのロールアップ規定

日タイEPAにおいてのロールアップ規定は以下の通りです。

第28条 原産品 7項
産品が締約国の原産品であるか否かを決定するため、4(b)の規定に従って
原産資格割合を算定するに当たり、当該産品のVNMには、当該産品の
生産に当たって使用される当該締約国の原産材料の生産において
使用される非原産材料の価額を含めない。

 

ロールアップの活用事例

更にもう少し詳しくロールアップの活用事例を紹介します。

まず最初にAという工場があり、最終製品の「部品A」を製造しております。

 

このA工場では一部非原産材料を使用して「部品A」を製造しております。

当該部品の付加価値基準は「原産材料を60%以上使用」となっている為、
40%を非原産材料、60%を原産材料という割合で製造し、付加価値基準を
満たす部品を製造しているという事になります。

 

そしてA工場で作られた部品Aの価額は$100となり、
A工場と同じ国にあるB工場にて更に加工される事になります。

ここでB工場が受け取った$100の部品Aは非原産材料を含んでいますが
A工場での加工の際に付加価値基準を満たしている為、B工場では
この部品A$100分全てを「原産材料」とみなす事ができます。(※ロールアップ)

その為、B工場がこの部品Aを更に加工して輸出するという場合には
更に多くの非原産材料を追加で使用した最終製品Bの製造が可能です。

 

もし最終製品Bの付加価値基準が「原産材料を60%以上使用」であれば
B工場はA工場から仕入れた部品Aを全て原産材料として加工ができるので
以下の図のように非原産材料を最大で更に40%分上乗せが可能となります。

A工場から仕入れた部品Aの価額が$100で、ここに最大限の非原産材料を
使用する場合、最終製品Bの価格が$166.66であれば付加価値基準の
40%である$66.66分の非原産材料を使用して加工する事が可能です。

Roll-Up principle for Intermediate Material

Retrieved from:Comparative Study on Preferential Rules of Origin

このように見ると最終製品Bの付加価値基準で許容される非原産材料の
割合は本来であれば40%にすぎませんが、A工場で使用していた
非原産材料の割合も含めて考えると実質的には64%分の非原産材料を
使用しても原産地規則を満たすという事になります。

A工場で製造された部品Aの価額$100の内訳
非原産材料$40
原産材料$60

B工場で製造された最終製品Bの価格$166.66の内訳
非原産材料$66.66
原産材料$100(実質的にはA工場加工時の原産$60非原産$40でロールアップ)

 

少々わかりづらい規定ではありますが、
多国間EPAでグローバルサプライチェーンを組む場合で、各製造工程に
それぞれ非原産材料を使用する場合には非常に有益な規定となります。

ロールアップ規定は各協定によって異なる部分もあり、日チリEPAや
ATIGA等規定自体が存在しない協定もありますので、導入を検討する際は
それぞれ各協定のご確認をお願いします。

Filed Under: FTA/EPA

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