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関税削減.com【HSコード分類事例の解説】

世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。

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FTA/EPA

※効率的に関税削減を行うための図解マニュアルは こちらからダウンロード。

魔法瓶の関税削減事例

最終更新日2019年12月3日 By 河副太智 Leave a Comment

日本で製造した「魔法瓶」をタイ向けに輸出する場合に、どのような
サプライチェーンを組む事によってタイでの関税削減を実現できるのか
実例を紹介します。

本事例ではタイでの関税削減を目的とする為、日タイEPAを適用して
輸出する事が前提となります。

製品の構成とHSコード

最終製品である「魔法瓶」のHSコードは9617.00に分類され、当該品目
を製造する際にEPA非締約国から調達した部分品を使用しています。

「魔法瓶」のHSコード9617.00に対する「日タイEPA品目別原産地規則」の
関税分類変更基準(CTC)は”CTH(項、HS頭4桁の変更)”と規定されている為、
使用する非原産材料のHSコードが「魔法瓶」のHSコードと頭4桁が異なれば
非原産材料を使用していてもEPA協定上の原産品としてみなされて、
関税削減が可能になります。

「魔法瓶」を製造する際に使用する非原産材料は以下の通りです。
①フタ
②ゴムパッキン
③ガラス製内部容器

上記の①から③のHSコードそれぞれが「魔法瓶」のHSコード9617.00と
頭4桁が異なれば日タイEPA上の原産品とみなされます。

そこでまずは「魔法瓶」のHS分類の規定を確認すると以下のように定義
されております。

 

これを見るとHSコード9617.00に分類されるのは「魔法瓶」だけでなく
「魔法瓶の部分品」もこのHSコードに分類される事になります。

その為、もし先ほどの非原産材料の①から③が「魔法瓶の部分品」に
分類されてしまうと日本国内で部品に対し、どのように加工をしたと
しても、HSコードに変化が出ない為、日タイEPA上での原産品とはみ
なされないという事になります。

そこでどのような部分品が「魔法瓶の部分品」としてみなされるのか
部分品の範囲が問題となります。

 

部分品の構成とHSコード

「魔法瓶」のHS9617.00の規定には「ガラス製の内部容器」は部分品
に含まれないとなっておりますので、非原産材料として使用する
「ガラス製の内部容器」は「その他のガラス製品」であるHSコード
7020.00に分類する事により品目別原産地規則を満たします。

そこでフタとゴムパッキンの分類先がポイントになります。

 

↓フタ

 

↓ゴムパッキン

 

上記のようにフタとゴムパッキンは形状が「魔法瓶」に適合するように
製造されています。その為「魔法瓶の部分品」の定義を確認する為に
9617項の解説を確認すると以下のような定義があります。

 

この項には、次の物品を含む。
(2)外部ケース、ふた及びカップ:金属、プラスチック等から作り、
魔法瓶その他の真空容器に使用するもの

 

この規定によりフタは「魔法瓶の部分品」としてHSコード9617.00に
分類され、ゴムパッキンも「~等から作り、魔法瓶に使用するもの」
にある「等」という文言によってゴム製もここに含まれるとされ、
「魔法瓶の部分品」としてHSコード9617.00に分類されると解します。

 

各品目と原産地規則上の種別を表にすると以下のようになります。

 

最終製品「魔法瓶」のHSコード 9617.00
日タイEPA品目別原産地規則“CTH”(4桁変更)
構成品名原産性原産地規則構成材料のHSコード
フタ非原産CTCを満たさない9617.00
ゴムパッキン非原産CTCを満たさない9617.00
ガラス製内部容器非原産CTCを満たす7020.00

フタとゴムパッキンの2点は最終製品「魔法瓶」のHSコードと
同じHSに分類される事になるので、これらを使用して日本国内にて
どのように高度な加工を施しても日本の原産品としてはみなされない
事になり、このままでは原産地規則を満たさず、タイ側での特恵関税
適用は不可となります。

 

部分品HSコードからの離脱

本事例の場合、タイでの輸入時に関税削減を実現するにはフタとゴム
パッキンのHSコードを「魔法瓶の部分品」から離脱させ、HSコードを
材質で分類し、フタのHSコードを3923.50「栓、ふた、キャップ…」に
分類し、パッキンのHSを4016.93「その他のシール」に分類する事が
できればCTCを満たす事になり、タイでの関税削減が可能になる為、
それぞれ離脱先である39類と40類の規定を確認してみます。

まず、39類注の規定2の除外規定を確認しますと⒵ で以下のように
規定されています。

この(z)に列挙されている品目はそもそも39類からは除かれるという
規定になりますので魔法瓶に使用するフタは残念ながら「魔法瓶の部
分品」から離脱はできないという事になります。

 

また、40類注の規定2の除外規定を確認しますと(e) で以下のように
規定されています。

この(e)に列挙されている品目はそもそも40類からは除かれるという
規定になりますので96類に属する魔法瓶に使用するパッキンも「魔法
瓶の部分品」から離脱はできないという事になります。

これにより本事例の場合は「部分品からの離脱」は実現できません
のでCTCルールを満たさないという事になります。

しかし、ここで諦めずに他の方法を検討して何とか原産地規則を満た
す事ができないか検討してみます。

他の手段で原産地規則を満たす

本事例は非原産材料を使用して日本で製造した製品をタイ向けに
輸出し、タイ側での関税削減が目的となる事から「日タイEPA」だけ
ではなく他のEPAを適用して関税削減が実現できないかを考えます。

まず、非原産材料であるフタとパッキンの原産国を特定し、その
国を絡めたEPAが無いかどうかを確認します。

本事例で出てきた非原産材料であるフタとパッキンの原産国を
調査したところ「ベトナム産」である事が判明しましたので
サプライヤー証明書を準備した後に再度EPA適用の方法を検討します。

候補として挙がった方法が「日タイEPA」の適用を見送り、「日アセ
アンEPA」を適用して日本からタイに向けて輸出し、ベトナム産であ
る非原産材料を「日アセアンEPA」の「累積」規定を適用し、ベトナ
ム産のフタとパッキンを「日アセアンEPA」上の原産材料としてみな
すという方法です。

このように適用するEPAそのものを変更して原産地規則を満たす場合
は他のEPAに変更する事によって品目別原産地規則や特恵関税率がど
のように変化するかを入念に調査する必要があります。

幸い日本からタイに向けて輸出する場合は「日タイEPA」であろうが
「日アセアンEPA」であろうが品目別原産地規則も特恵関税率も変わ
らないという事が判明したのでベトナム産材料を原産品としてみなせ
る「累積」規定が適用できる「日アセアンEPA」が関税削減において
圧倒的に有利であるという事が判明しました。

 

このような複数のEPAの比較については以下の
RULES OF ORIGIN FACILITATORによる調査が有効です。
※最終決定は必ず条文を確認して下さい。

 

これにより原産地規則上の種別の表は以下のように変わります。

最終製品「魔法瓶」のHSコード 9617.00
日アセアンEPA品目別原産地規則“CTH”(4桁変更)
構成品名原産性原産地規則構成材料のHSコード
フタベトナム累積9617.00
ゴムパッキンベトナム累積9617.00
ガラス製内部容器非原産CTCを満たす7020.00

 

これによりベトナム産原料を使用して日本にて製造された「魔法瓶」
は無事にタイにおいて「日アセアンEPA」上の原産品とみなされ、
関税削減が可能となりました。

 

本事例から学ぶこと

本事例ではまず非原産材料が完成品と同じHSコードに分類された事
からCTCルールを満たさず躓いてしまいましたが、「部分品からの離脱」
を試みる事は非常に重要です。

「部分品」に分類されるかどうかという部分は審査官の考え方に大きく
左右される分野でもあるので解釈の仕方によっては「部分品」以外に
分類(※材質分類等)される事も多くありますので、事前に輸入国税関
と協議を行い、「部分品からの離脱」が可能かどうかを深く追求する
姿勢は非常に重要です。

本事例では残念ながら「部分品からの離脱」は実現できませんでしたが
思い切って他のEPAに切り替える事によって非原産材料を原産材料と
みなせる「累積」を適用する事によってうまく問題を切り抜ける事が
できました。

このような対処法は税関や商工会議所から積極的なアドバイスを期待
する事は難しいかと思いますので(担当者によりますが…)常に原産地
規則についての情報を収集する事が重要かと考えます。

Filed Under: CTC実例

複数のEPAを比較して無駄な関税支出を防ぐ

最終更新日2019年10月14日 By 河副太智 Leave a Comment

日本が締結しているEPAは年々増加しており、関税削減を検討する際に
一つのEPAだけを検討するだけでなく、複数のEPAの規定を調べて、
どのEPAが最も関税率が低いか、どのEPAの原産地規則が最も満たしや
すいかなどを比較検討する必要があります。

ネットで買い物をする際には他のショップの価格や条件等を比較してから
購入の決断をすると思いますが、これは関税削減においても同じで、
どのEPAを使用するかによって今後の利益に大きな影響を与える事に
なりますので関税削減検討時のEPA比較は非常に重要です。

輸入する品目が輸入の際に関税が課される品目である事が判明した場合は
EPA による関税削減の対象(関税譲許の対象)かどうかを確認します。
品目によっては関税削減の対象でない場合や原産地規則を満たさない場合が
ありますので、その場合は他のEPAを適用した場合はどうなるかも検討する
必要があります。ケースバイケースですが他のEPAの規定では原産地規則を
満たし、関税削減の対象になる場合も考えれらます。

また、関税削減の対象であっても他のEPAを利用した場合は更に低い特恵関税率
が適用されている場合もありますし、今後段階的に特恵関税率が低くなる場合は
将来の収益を見据えてどのEPAを活用するかなど検討する事は多くあります。

関税削減を検討する際に必ず検討しておきたいポイントは以下の通りです。
①そもそも関税がかかる品目なのか。
②EPAで関税削減の対象になるか。
③他のEPAで更に低い関税率を適用できないか。
④段階的に関税率が下がる場合はどのEPAが将来的に良いか。
⑤原産地規則を満たす事ができるか。
⑥他のEPAで原産地規則を満たせるか。

上記検討項目をそれぞれ解説させて頂きます。

 

そもそも関税がかかる品目なのか。

本来の関税率が0%であれば関税削減の必要が無い為、原産品申告書の作成も
不要となります。それにもかかわらず本来の関税率が0%であるという事を知
らずに延々と原産地規則と向き合い、ありもしない特恵関税率を求めて大変
な時間をロスしてしまうケースもありますので、「日本に輸入する貨物」も
「日本以外の国に輸入される貨物」も、そもそも関税がかかる品目なのか
どうかを事前に確定する事は基本となります。

 

日本に輸入される品目の場合

例えば日本に自動車を輸入する場合は実行関税率表で確認すると以下の
赤丸で囲んだ部分で示されるように関税が発生しない事がわかります。

出典:税関HP実行関税率表

日本以外で輸入される品目の場合

関税率の設定は各国によって異なります。
以下にアイルランド、インドネシア、インドにて自動車に課される関税率を比較します。

出典:WorldTariff

インドネシアの場合

出典:WorldTariff

インドの場合

出典:WorldTariff

 

EPAで関税削減の対象になるか。

日本に輸入される品目の場合

例えば日本にコートを輸入する場合は実行関税率表で確認すると以下の
赤丸で囲んだ部分で示されるように関税が発生する事がわかります。

そして、実行関税率表右側に移動するとEPAを適用する事により、
先ほどの関税がゼロになる事がわかります。

 

日本以外で輸入される品目の場合

先ほどのインドで自動車を輸入する際に課される関税率ですが、
こちらもどのEPA等を活用すれば関税削減が可能かを知る事が可能です。

出典:WorldTariff

上記の例の場合インドにて自動車に課される関税はタイからの輸入の場合に
ASEANインド自由貿易協定(AIFTA)を適用する事により関税がゼロになる事
がわかります。

このようにして通常輸入の際に関税が発生する品目に対し関税削減の
機会があるかどうかを確認する事も非常に重要です。

 

他のEPAで更に低い関税率を適用できないか。

複数のEPAの関税率を比較するには各協定をくまなく読み込む必要があり、
大変手間のかかる作業になりますが、これを行わないと意味もなく高額な
関税を支払う事になりかねません。

以下の税率は日本がタイから鳥卵(HS0408.11)を輸入する際に課される
関税率の比較です。(2019年本記事執筆時点での関税率)

 

同じタイからの輸入であっても適用するEPAによって特恵関税率が
異なる事があります。

日アセアンEPAの特恵関税率を適用して鳥卵を輸入する場合、
関税率は18.8%から5.9%に関税削減されるので喜ばしい事ですが、
日タイEPAを適用すれば更に低い関税率3.5%が適用されます。

適用するEPAつまりは原産地証明書のフォームが異なるだけで
これほどの差が出てしまうのであればEPAごとの関税率調査は必須
であると言えます。

 

段階的に関税率が下がる場合はどのEPAが将来的に良いか。

ある品目を輸入しようとする場合に適用できるEPAが2つあり、
それぞれの特恵関税率を調べた場合に、一方の関税率は11%で
もう一方が12%であった場合は関税率11%のEPAを利用しようと
考えるかと思います。

しかし、現時点での関税率を調べるだけでなく将来の関税率も
視野に入れる事をお勧めします。

 

例えば以下の例ではEPAによる特恵関税率が11%から始まり、
段階的に特恵関税率が低くなり、最終的に2024年に0%になります。

 

以下の例では特恵関税率が12%から始まっているので、最初の時点では
上記の例と比較すると不利な関税率ではありますが、最終的に2015年
の時点で関税が0%になります。

その為、複数のEPAを比較した場合、一方がある一時点で有利な関税率
であったとしても数年後にはもう一方のEPAの方が有利になる逆転現象が
生じる品目もありますので、段階的に関税率が下がる品目の場合は
将来の関税率を視野に入れ、ある時点で使用するEPAを変更するなどの
計画を練る事も非常に重要です。

 

原産地規則を満たす事ができるか。

関税削減を検討している品目の部品や原料に非原産材料が使用
されている場合は完成品がEPA締約国産とみなされて関税削減の対象
となるか、EPA非締約国産とみなされて関税削減の対象外となるかは
原産地規則を満たすかどうかによって判断される事になります。

その為、輸出国と輸入国の間で締結されているEPA協定文の
「原産地規則」「品目別原産地規則」の章をよく確認し、
EPA非締約国から調達した非原産材料をどの程度加工すれば
原産地規則を満たし、関税削減の対象になるかを調べる必要が
あります。

 

他のEPAで原産地規則を満たせるか。

輸入する品目の原産地規則を確認したところ、製造工程上どうしても
原産地規則を満たせず、関税削減の対象にできない場合があります。

そのような場合には当該製造国と輸入国の間で別のEPAを締結して
いないかどうかを確認し、別のEPAがある場合はそちらの原産地規則も
確認してみる事をお勧めします。

同じ製造国、同じ輸入国であっても適用するEPAが違えば原産地規則
が異なる事も十分あり得る事ですので、このような場合には初回に
検討したEPAで原産地規則を満たせなくても、別のEPAでは原産地
規則を満たせるかもしれません。

 

以下に例としてマレーシア産の「プラスチック製品のその他(HS:3926.90)」
に該当する品目を日本に輸入する場合のEPA別原産地規則を比較します。

日本とマレーシアは本記事執筆時点では3つのEPAを締結しております。
(日マレーシアEPAと日アセアンEPAとTPPの3つ)
その為、あるEPAでは原産地規則を満たさないが別のEPAでは原産地
規則を満たすという現象が起き得ます。

マレーシア産プラスチック製品のその他(HS:3926.90)の原産地規則の比較
日マレーシアEPA日アセアンEPATPP
他の項の材料からの変更又は、
原産資格割合が40%以上(cc又はva)
他の項の材料からの変更又は、
原産資格割合が40%以上(cc又はva)
他の項の材料からの変更
(ccのみ)

マレーシア産の「プラスチック製品のその他」を日本に輸入する際、
TPPを適用した場合に考慮できる原産地規則は「関税分類変更基準(CCルール)」
のみとなり、製造工程における価額を考慮した原産地規則である「付加価値
基準(vaルール)」は適用されません。

もし当該品目が「関税分類変更基準(CCルール)」を満たす事ができない代わりに
製造工程における価額を考慮した原産地規則である「付加価値基準(vaルール)」
にて規定されている閾値40%を満たす事ができる品目であれば、TPPではなく、
日マレーシアEPAや日アセアンEPAを適用して輸入する事を検討する必要があります。

 

このような事から複数のEPAが関わる国家間での貿易取引においては
どのEPAを適用する事が利益を上げる為に最も有益であるかを検討する
事は非常に重要な事であります。

これを調べずに貿易取引を延々と続けてしまうと本来不要な関税を支払う
事になり、基本的に税関からの積極的な個別アドバイスは期待できませんので
手間ではありますが初回貿易取引を含め、定期的なEPA比較は非常に重要です。

Filed Under: FTA/EPA

関税削減は消費税削減にも繋がる。

最終更新日2019年10月4日 By 河副太智 Leave a Comment

令和元年10月より「飲食料品」以外の輸入貨物に対する消費税率が
10%になりました。

輸入貨物に課される消費税は特殊な事例を除き削減する事はできませんが
関税削減する事により間接的に消費税削減が可能になります。

「飲食料品」以外の品目を輸入する場合は今一度関税削減への取り組みを
検討する事をお勧め致します。

本記事では関税率と消費税率の関係について解説させて頂きます。

 

適用開始前の消費税率との比較は以下の通りです。

出典:税関HP

以下に標準消費税率10%が適用される貨物の関税消費税の計算例を紹介します。

出典:税関HP

CIF価格が534,795円の品目に関税率が14%かかる場合
関税74,700円
消費税47,500円
地方消費税13,300円
となり、関税消費税の合計は135,500円となります。

 

ここで同じ貨物に対してEPA等の特恵関税率を適用して関税率が0%と
なった場合は以下のような計算になります。

この場合
関税0円
消費税41,600円
地方消費税11,700円
となり、関税消費税の合計は53,300円となります。

 

同じ品目であっても関税削減がされると以下のように消費税削減
につながります。

関税率14%EPA特恵関税率0%
消費税47,500円41,600円
地方消費税13,300円11,700円

 

日本とEPAを締結する国や地域は年々増加している事から消費税増税分に
対する埋め合わせの対策として特恵関税率を適用した関税削減対策を
ご検討される事をお勧めします。

Filed Under: FTA/EPA

原産品申告書作成は輸出者と輸入者どちらが行うべきか

最終更新日2019年9月30日 By 河副太智 Leave a Comment

TPPと日EU・EPAにて採用されている自己証明方式によって
輸出者、生産者、輸入者のいずれかが原産品申告書を作成し、
特恵関税率の適用を要求する事が可能となっております。

この場合「誰が原産品申告書を作成するか」という点で問題に
なる事があり得ます。

関税削減が最優先と考えればとりあえずお願いしやすい方に作成して
もらうという選択肢があるかと思いますが、原産品申告書作成者を
安易に選択すると企業秘密を外部に漏えいするリスクがあります。

これは原産品申告書作成時に企業秘密が漏えいするというよりは
関税削減から一定期間が経ってからやってくる税関からの事後確認
(検認)での原産性の立証作業の際に起こり得ます。

その理由としては税関の事後確認(検認)の相手方が企業秘密を
有する者ではない場合が想定できるからです。

例えば日本の企業が外国に輸出をして、相手国での関税削減の為に
相手国側の輸入者に原産品申告書を作成させた場合、相手国税関の
事後確認(検認)の対象は原産品申告書を作成した相手国の輸入者に
なりますので、貨物の製造工程、原料、価格などの情報を相手国の
輸入者が相手国側の税関に報告する必要があると考え、自社の情報を
丸ごと取引先である相手国輸入者に提供してしまうという事が考えられます。

輸出先国の輸入者に原産品申告書を作成依頼をする事は関連企業でない限り
一般的ではない事かと思いますが、基本的に輸入者が事後確認(検認)
において原産性を立証する重要なポジションに置かれる為、輸入者に
企業秘密を渡さず、輸出者、生産者が直接相手国税関に企業秘密が含まれる
製造工程を提供する立場になるためにはどのようにすれば良いかを事前に
検討する事は自己証明制度の活用において非常に重要であると考えます。

 

協定文から事後確認(検認)の対象者を確認する

協定によって事後確認(検認)の対象者は違いがある為、各協定文を
よく確認してから原産品申告書作成者を決定する事が重要です。

以下にTPPと日EU・EPAの事後確認(検認)に関する協定文を記載します。

 

TPPの事後確認(検認)対象者

TPPの事後確認(検認)に関する規定は以下の通りです。

TPP 第3.27条 原産品であることの確認

1
輸入締約国は、自国の領域に輸入される産品が原産品であるかどうかを決定するため、
次の1又は2以 上の手段により、関税上の特恵待遇の要求について
確認を行うことができる(略)

(a) 当該産品の輸入者に対し、情報について書面により要請すること。

(b) 当該産品の輸出者又は生産者に対し、情報について書面により要請すること。

(c)当該産品の輸出者又は生産者の施設に確認のための訪問を行うこと。

(略)

2
輸入締約国は、確認を行う場合には、輸入者、輸出者又は生産者から直接情報を
受領する。

3
輸入締約国は、関税上の特恵待遇の要求が輸出者又は生産者が作成した
原産地証明書に基づく場合において、1(a)の規定に基づいて行う情報についての
要請に対し、輸入者が当該輸入締約国に情報を提供せず、又は提供された情報が
関税上の特恵待遇の要求を裏付けるのに十分でないときは、当該要求を否認する前に、
1(b)又は(c)の規定に基づき、当該輸出者又は生産者に対し、当該要求を裏付ける
ための情報につ いて要請する。
当該輸入締約国は、6(e)に規定する期間内に当該確認(1(b)又は(c)の規定に
基づく当該輸出者又は生産者に対する追加的な要請を含む。)を完了する(注)。
注.締約国は、関脱上の特恵待遇の要求が輸入者の作成した原産地証明書に碁づいて
行われる場合には、輸出者若しくは生産者に 対して当該要求を裏付けるために
情報を要請すること又は輸出者若しくは生産者を過じた確認を完了することを
要求されない。

TPPにて輸出者、生産者が原産品申告書を作成した場合

3.27条3項前段において輸入国税関による事後確認(検認)の対象は
まず輸入者となり、輸入者の回答が原産性を立証に至らない場合に
輸出者、生産者が事後確認(検認)の対象になると規定されています。

この場合、輸入者から直接輸出者、生産者に対し情報開示の要求をする事が
考えられますが、ここで輸入者に企業秘密を公開しなくても相手国税関に
直接情報の提示ができると考えられますので、取引先の輸入者に情報を
公開する前に直接相手国税関と接触するように対策をするべきです。

TPPにて輸入者が原産品申告書を作成した場合

3.27条3項の注において輸入国税関による事後確認(検認)の対象は
輸入者となり、輸入者の回答が原産性を立証に至らない場合に輸出者、
生産者に対する事後確認(検認)は行わなくても良いとする規定となる為、
輸入者の回答が不十分であるというだけで特恵関税率の適用が否認される
可能性が高くなる為、輸出者、生産者としては輸入者に原産地規則を満たす
事を立証する為に企業秘密を提供する必要が出てくる場合があります。

その為、輸入者に原産品申告書を作成してもらう場合は原産地規則を満たす事
を立証する為の製造工程や原料、調達費用などの情報を輸入者に開示しても
問題がないかどうかを確認する必要があります。
(基本的に輸入者が関連会社の場合以外では一般的ではありません)

 

 

日EU・EPAの事後確認(検認)対象者

日EU・EPAの事後確認(検認)に関する規定は以下の通りです。

日EU・EPA 第3.21条 原産品であるかどうかについての確認

1
輸入締約国の税関当局は、自国に輸入された産品が他方の締約国の原産品であるか
どうか又はこの章に定める他の要件を満たすかどうかを確認するため、
第3.16条に規定する関税上の特恵待遇の要求を行った輸入者に対して情報の提供を要求
することにより、危険性を評価する方法(無作為抽出を含む。)に基づく確認を
行うことができる。
輸入締約国の税関当局は、税関への輸入申告の時、産品の引取りの前又は産品の
引取りの後に確認を行うことができる。

(略)

4
輸入者は、輸入締約国の税関当局に対し、関税上の特恵待遇の要求が
第3.16条2(a)に規定する原産地に関する申告に基づくものである場合において、
要求された情報がその全てについて又は1若しくは2以上のデータの要素に関連して
輸出者から直接提供され得るときは、その旨を通報する。

 

日EU・EPAにて輸出者、生産者が原産品申告書を作成した場合

3.21条1項において輸入国税関による事後確認(検認)の対象はまず輸入者となり、
輸入者の回答が原産性を立証に至らず、輸出者か生産者が立証可能な場合はその旨
伝える事により輸出者、生産者が事後確認(検認)の対象となります。(3.21条4項)
※3.21条4項にて規定されている「第3.16条2(a)に規定する原産地に関する申告」が
輸出者、生産者作成という意味になります。

 

日EU・EPAにて輸入者が原産品申告書を作成した場合

3.21条1項において輸入国税関による事後確認(検認)の対象は輸入者となり、
輸入者の回答が原産性を立証に至らない場合における輸出者、生産者に対する
事後確認(検認)の要否に関しての規定は存在しません。

輸入者の回答が不十分であるというだけで特恵関税率の適用が否認
される可能性が高くなる為、輸出者、生産者としては輸入者に原産地規則を
満たす事を立証する為に企業秘密を提供する必要が出てくる場合があります。

その為、輸入者に原産品申告書を作成してもらう場合は原産地規則を満たす事
を立証する為の製造工程や原料、調達費用などの情報を輸入者に開示しても
問題がないかどうかを確認する必要があります。
(基本的に輸入者が関連会社の場合以外では一般的ではありません)

 

日EU協定に基づくEU税関当局からの情報提供要請

Filed Under: FTA/EPA

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

最終更新日2019年9月22日 By 河副太智 Leave a Comment

関税削減をする為にはEPA締約国間での貿易取引である事を証明する為に
該当品目がどの国の原産なのかを特定し、税関に申告する必要があります。

この原産国を特定する方法にHSコードを使用するものがありますが、
HSコードに馴染みの無い方にとってはこの分野を極力避けて原産国の
特定をしたいと考えるかもしれません。

本記事では原産国を特定する方法にHSコード分類を極力避けた場合の
メリットとデメリットについて解説させていただきます。

 

価額を用いた原産国特定方法が好まれるが…

該当品目がどの国の原産なのかを特定する方法は品目にもよりますが
大まかに以下の3点に分類されます。

  1. 原料、製造コスト等の価額を用いて原産国を特定する方法
  2. HSを用いて原料から製品への変化を基準として原産国を特定する方法
  3. 原料から製品への製造工程そのものから原産国を特定する方法

上記3点の証明方法のうち、どれか一つを原産国の特定方法として任意に
選択できるという場合であれば1を選択したいと考えるかもしれません。

なぜならば2と3の方法は通関の専門知識が深く関わっており、対策しづらい
感じがしますが、1の方法は製造の工程で発生する費用の証明が主になる為
取り組みやすく感じるのが一般的な考えになるでしょう。

確かに価額を用いた原産国特定方法は証明手順が容易にイメージでき、
小学生レベルの算数で誰でも対応可能ではありますがデメリットが多いのも
事実です。

この両者を比較する為に以下の事例をご覧ください。
※3の製造工程で原産国を特定する方法は特定の品目に限られるので本記事では省略します。

 

絵画制作の事例で原産国証明方法を比較

 

B国に住む画家がC国から「絵具セット」をCIF1,000円で輸入しました。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

その画家はB国にてC国産の「絵具セット」を使用して絵画を作成。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

その後完成した「絵画」をA国にFOB5,000円で販売する事になりました。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

A国とB国はEPA締約国である為「絵画」がB国産として認められれば
A国にて関税削減の対象となります。

 

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

しかし、C国はA国ともB国ともEPA締約国ではありませんので
C国産の「絵具セット」を使用してB国で制作された絵画がB国産として
認められるには原産地規則を満たす必要があります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

この絵画がB国産として認められるには先ほどの1の価額を用いた方法と
2のHS分類による方法の2種類どちらか一方を満たせばよいという規定で
あった場合にそれぞれの方法のメリットとデメリットは以下になります。

 

1の価額を用いた方法を適用する場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」はCIF1,000円で
B国にて制作された後、A国向けFOB価格は5,000円になりましたので、
B国にて与えられた付加価値は80%になります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

価額を用いた方法で原産基準を満たすか否かの計算方法は協定によって
複数種類があります。本記事では最も一般的な控除方式の式で計算します。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

RVCとはRegional Value Contentの略で、産品が生産者の現地地域で
生産されている度合い(現地調達率)を示すパーセンテージです。

「絵画」の価格と「絵具セット」の価格を式に当てはめると
以下のようになります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

付加価値が80%となる為、定められた付加価値基準がこの値より下であれば
基準をクリアし、A国での輸入時に当該「絵画」はB国産とみなされ、
特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

 

付加価値基準を利用するメリット

■原料のHSコードの選定作業が無く、小学生レベルの算数で原産性を
証明できるので比較的容易に取り組むことができる

 

付加価値基準を利用するデメリット

■原産地規則を満たせても非原産材料の価格等が高騰した場合、
ある時点から付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
その結果原産性を満たさなくなる可能性がある。

■最終製品の価格が下落した場合も同じくある時点から
付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■為替の変動があった場合に非原産材料の価格と最終製品の価格間の
バランスが変わる事により付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■上記3点の変動を常に把握しなければいけない為、
取引毎に全ての費用を確認し続ける手間がある。

■輸出先、取引先等に原産材料の仕入れ値を知られてしまう可能性があり、
輸出先が関連会社で無い場合はハードルが高くなる。
(上記の例では画家が販売先に「絵具セット」の原価を公開する事になる)

■価格に関する証明書類が多くなる為、事後調査や検認の際に税関から
求められる資料が多くなり、非常に手間がかかる。

 

関税分類変更基準を満たす場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」のHSは3213で
B国にて制作された後、A国向け「絵画」のHSは9701になります。

このようにB国での加工作業により関税分類の変更という現象を基準に
して原産国を特定する事が可能になり、A国での輸入時に当該「絵画」はB
国産とみなされ、特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

関税分類変更基準を利用するメリット

■一度最終製品と原料のHSコードを確定し、原産地規則を満たせば
価格や為替変動の影響を受けて原産性を失う事が無い。

■取引毎の確認の手間が省ける。

■事後調査や検認時にも原産性の証明が付加価値基準に比べて
容易になる。

関税分類変更基準を利用するデメリット

■HSコードの選定作業専門知識が必要となる為、新規貨物を扱う際に
手間がかかる。

結論

1の価額を用いた方法と2のHS分類による方法のどちらか一方を選択できる場合
私個人的には2のHS分類による変更基準を満たして原産性を立証する方が
長い目で見れば良いのではないかと考えます。

中には1の価額を用いた方法でないと原産性を立証できない品目もあります。
例えば非原産材料の車の部分品を加工して、付加価値のある車の部品に
する場合等どうしても2のHS分類による変更基準が使用できないケースもありますので
実務上はケースバイケースにならざるを得ないでしょう。

しかし、品目の特性上1と2の両方の方法で対応可能な品目である場合は
2のHS分類による方法の方がメリットが多くありますので関税削減対策を
効率的に行うにはHSコードによる品目分類の知識が非常に重要になります。

Filed Under: FTA/EPA, HSコード

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

最終更新日2020年1月25日 By 河副太智 Leave a Comment

EPA締約国の原産品かどうかを判断する基準である原産地規則では
「関税分類変更基準(CTC)」か「付加価値基準(VA)」のどちらか一方を
満たせばEPA締約国の原産品とみなすという規定が多くあります。
※品目によって基準は異なり、基準が一つだけの場合や両方満たす必要がある場合等様々あります。

例として日タイEPAでの自動車部品の原産地規則を挙げます。

第8716.90号の産品への他の項の材料からの変更
又は、
原産資格割合が40パーセント以上であること
(第8716.90号の産品への関税分類の変更を必要としない。)

 

「第8716.90号の産品への他の項の材料からの変更」という文言が
「関税分類変更基準(CTC)」
を指して、
「原産資格割合が40パーセント以上」という文言が
「付加価値基準(VA)」を指している事になります。

 

この2つのうちどちらか一方を満たせば原産地規則を満たすという
条件下であればどちらを満たす方が容易なのかを検討すべきです。

本記事ではこの両者の違いを「絵画」の製造工程に例えてみます。

VAとCTCの違いを絵画制作で例えてみる

B国に住む画家がC国から「絵具セット」をCIF1,000円で輸入しました。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

 

その画家はB国にてC国産の「絵具セット」を使用して絵画を作成。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

 

その後完成した「絵画」をA国にFOB5,000円で販売する事になりました。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

 

A国とB国はEPA締約国である為「絵画」がB国産として認められれば
A国にて関税削減の対象となります。

 

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

しかし、C国はA国ともB国ともEPA締約国ではありませんので
C国産の「絵具セット」を使用してB国で制作された絵画がB国産として
認められるには原産地規則を満たす必要があります。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

このような場合にはA国とB国で締結されているEPA協定で定められている
「絵画」(HS9701)に対する品目別原産地規則を確認します。

仮に「絵画」(HS9701)に対する品目別原産地規則が以下であった場合

「関税分類変更基準(CTC)HS4桁変更」
あるいは
「付加価値基準(VA)40パーセント以上」
のどちらか一方を満たす場合はB国産とみなす

どちらの規定をクリアする方が容易なのかをそれぞれ検討してみます。

 

付加価値基準を満たす場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」はCIF1,000円です。
当該絵具を用いてB国にて絵画が制作された後、A国向けに販売。
この時のFOB価格は5,000円になりましたので、B国にて与えられた付加価値は
80%になります。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

付加価値基準を満たすか否かの計算方法は協定によって複数種類があります。
本記事では最も一般的な控除方式の式で計算します。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

RVCとはRegional Value Contentの略で、産品が生産者の現地地域で
生産されている度合い(現地調達率)を示すパーセンテージです。

「絵画」の価格と「絵具セット」の価格を式に当てはめると
以下のようになります。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

付加価値が80%となる為「付加価値基準(VA)40パーセント以上」という
要件はクリアし、A国での輸入時に当該「絵画」はB国産とみなされ、
特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

 

付加価値基準を利用するメリット

■原料のHSコードの選定作業が無く、小学生レベルの算数で原産性を
証明できるので比較的容易に取り組むことができる

 

付加価値基準を利用するデメリット

■原産地規則を満たせても非原産材料の価格等が高騰した場合、
ある時点から付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
その結果原産性を満たさなくなる可能性がある。

■最終製品の価格が下落した場合も同じくある時点から
付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■為替の変動があった場合に非原産材料の価格と最終製品の価格間の
バランスが変わる事により付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■上記3点の変動を常に把握しなければいけない為、
取引毎に全ての費用を確認し続ける手間がある。

■輸出先、取引先等に原産材料の仕入れ値を知られてしまう可能性があり、
輸出先が関連会社で無い場合はハードルが高くなる。
(上記の例では画家が販売先に「絵具セット」の原価を公開する事になる)

■価格に関する証明書類が多くなる為、事後調査や検認の際に税関から
求められる資料が多くなり、非常に手間がかかる。

 

関税分類変更基準を満たす場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」のHSは3213で
B国にて制作された後、A国向け「絵画」のHSは9701になります。
それによりB国で発生した関税分類変更はHS4桁レベルでの変更となり、
「関税分類変更基準(CTC)HS4桁変更」という要件を満たし、
A国での輸入時に当該「絵画」はB国産とみなされ、
特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)を比較

 

関税分類変更基準を利用するメリット

■一度最終製品と原料のHSコードを確定し、原産地規則を満たせば
価格や為替変動の影響を受けて原産性を失う事が無い。

■取引毎の確認の手間が省ける。

■事後調査や検認時にも原産性の証明が付加価値基準に比べて容易になる。

関税分類変更基準を利用するデメリット

■HSコードの選定作業専門知識が必要となる為、新規貨物を扱う際に手間がかかる。

 

結論

付加価値基準と関税分類変更基準のどちらか一方を選択できる場合には
私個人的には関税分類変更基準を満たして原産性を立証する方が長い目で
見れば良いのではないかと考えます。

もちろん全ての品目の原産性立証方法を関税分類変更基準にするべきとは
考えません。
中には付加価値基準でないと原産性を立証できない品目もあります。

例えば非原産材料の「車の部分品」を加工して、付加価値のある「車の部分品」
を製造する場合など、どうしても関税分類変更基準が使用できないケースも
ありますので実務上はケースバイケースにならざるを得ないでしょう。

関税分類変更基準での検討は慣れないととっつきにくいと思いますが
メリットが多くありますので付加価値基準と関税分類変更基準のどちらか一方を
選択できる場合には関税分類変更基準での証明によるメリットをご検討
頂ければと考えます。

Filed Under: FTA/EPA

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