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関税削減.com【HSコード分類事例の解説】

世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。

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意見相違

※効率的に関税削減を行うための図解マニュアルは こちらからダウンロード。

小売り用セット品目のHSコード分類法

最終更新日2020年8月29日 By 河副太智 Leave a Comment

輸出入品目の中には複数の品目が一つのセットになっていることもあります。

例えば以下のような散髪器具4点が小売り用にセットになった品目の場合、HSコードは
どのように分類されるのでしょうか。

 

出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)

品目の内訳は
ヘアクリッパー(HS8510)、くし(HS9615)、ハサミ(HS8213)ブラシ(HS9603)となり、
その中でどの品目がセット品に対する重要な特性を与えているかがHS分類基準となります。

本事例ではヘアクリッパーが重要な特性を与えている事になると判断され、HSコード8510の
ヘアクリッパーに分類されることになりました。

もし、ハサミが非常に高価なものでかつ、散髪という目的を遂行するのに重要な要素を
持っていると判断されればハサミ(HS8213)に分類される可能性もあるかもしれません。

 

もう一つ事例を紹介します。

以下のようにスキンケア製品、マット、おむつ、お尻ふき、布製収納ケースが
一つになったような場合はどのようにHSコードの分類を行うのでしょうか。

出典:European Commission

先ほどの散髪器具とは異なり、何がセット品の中で重要な特性を持つのかを判断する事が
非常に困難な事例であると考えます。

本事例では複数の品目を収納する布製収納ケースが重要な特性を持つと判断され、携帯用
化粧道具入れ等(HS:4202.92)に分類される事になりました。

小売り用セット品目分類根拠

小売り用セット品目の分類根拠は通則3(b)(Ⅹ)において以下のように定義されています。

この通則の適用上、「小売用のセットにした物品」とは、次の物品をいう。
(a)異なる項に属するとみられる二以上の異なった物品から成るもので、
(b)ある特定の必要性を満たすため又はある特定の活動を行うため、
共に包装された産品又は製品から成り、かつ、
(c)再包装しないで、最終使用者に直接販売するのに適した状態に包装されている物品

上記で紹介した散髪用具とおむつセットを当てはめていくと
(a)散髪用具セットもおむつセットも異なるHSに分類される品目の集まりであり、
(b)散髪、おむつ交換という特定の活動のために共に包装されており、
(c)画像ではわかりませんが全ての品目が一つに梱包され、そのまま消費者に提供される
形で輸入されている

という形で通則3-(b)(X)の要件を満たしているため、セット品のうちの一つを代表にして
HSコードの分類が行える形になります。

小売り用セット品目として分類できない事例

以下の事例はポケットナイフと腕時計が小売り用セットとして輸入された品目です。

Source:CBP

本事例の場合は小売り用セット品目としては認められません、なぜならば先ほどの
通則3(b)(Ⅹ)の(b)の要件であるある特定の必要性を満たすため又はある特定の活動を
行うため、
共に包装された産品を満たしていないと考えるためです。

ポケットナイフと腕時計の2つを使って何か一つの目的を達成するというのはなかなか
考えにくいものであるため、本事例の品目は小売り用セット品目とはみなされず、
ポケットナイフと腕時計をそれぞれ分離課税対象として、2品目の申告となります。

小売り用セット品目をEPA関税削減対象にするには

小売り用セット品目をEPA締約国から輸入し、関税削減の対象とする場合、各EPAの
規定によって微妙に取り扱いが異なる部分がありますが、基本的にはセット品目全てが
原産地規則を満たす必要があると考えていた方がよいでしょう。
(※協定によりますがセット品の一部が非原産であっても価格構成によってはセット品目
全体を原産品として扱う救済規定があるEPAもあります。例:日メキシコ、日ぺルー、TPP等)

そのため小売り用セット品目をEPA関税削減対象とする場合にはセット品目一つ一つの
原産性を確認する必要が出てくるため非常に手間になる可能性があります。

Filed Under: 各国税関による分類事例, 意見相違

関税率表解説の”通常”や”例えば”という文言の解釈

最終更新日2020年8月12日 By 河副太智 Leave a Comment

HSコードの分類の際に参照する関税率表解説のには”通常”や”例えば”という
文言と共に分類される可能性の高い品目を列挙している事があります。

HSコード3808.94の消毒剤の解説(PDF19ページ)を確認すると以下のように
記載されています。

(Ⅳ)消毒剤
消毒剤は、通常、無生物体上にある好ましくないバクテリア、ウイルス
その他の微生物を死滅又は不可逆的に不活性化させる薬剤である。
消毒剤は、例えば、病院では壁等の掃除又は器具の殺菌に使用する。
これらは、また農業では種子の消毒に使用したり、好ましくない微生物を
抑制するために飼料の製造に使用する。

上記の解説を見ると「無生物体上」に使用される物が当該HSコードに分類される
と読めるので壁や器具等に使用される品目は当該HSコードに分類されます。

では人体に使用する消毒剤は当該HSコードに分類されるのでしょうか?
上記解説にある、”通常”や”例えば”という文言と共に紹介される事例以外の
品目が当該HSコードから除外されるのかどうかが問題になります。

そこで以下に各国税関によるハンドジェルの分類事例を紹介します。

 

リトアニア税関によるHSコード判断事例

税関:リトアニア
登録番号:LTBTI2018-DEC-3T-0025/14
日付:2018-12-13
HSコード:3808.94

出典:European Commission

本事例は”通常”や”例えば”という文言はあくまでも参考として捉え、
人体に使用するハンドジェルも消毒剤のHSコード3808.94に分類されています。

 

日本税関によるHSコード判断事例

出典:税関HP

本事例は除菌用のウェットティッシュですが、手に使用する目的である事から
先ほどの例と同じく”通常”や”例えば”という文言はあくまでも参考として捉えて
おり、消毒剤のHSコード3808.94に分類されています。

 

米国税関によるHSコード判断事例

米国税関(CBP)は上記2件とは異なる見解を示し、消毒用ハンドジェルを
化学品のその他(HSコード:3824.99)に分類しました。

 

出典:米国税関(CBP)

これは米国税関では”通常”や”例えば”という文言にある「無生物体上」に使用される
品目のみがHSコード3808.94に分類されるという考え方の上に成り立っているのでは
ないかと考えます。

米国税関はこのほかにもいくつかハンドジェル関連製品を事前教示にて3824.99に分類
しています。分類事例:N304365, N303248, N242763, N233860, N032988,  L89057

しかし、Customs Bulletin and Decisions Aug. 5, 2020,. によると米国税関は今まで
ハンドジェルのHSコードを3824.99に分類した事例を全てHSコード3808.94に変更する
と発表しました。

これは”通常”や”例えば”という文言が人体に使用する品目を除外する目的ではなかった
と判断した為です。

結論

その為、関税率表解説のには”通常”や”例えば”という文言はあくまでも例示であって
そこに列挙されている品目にHSコードの分類判断が拘束されるわけでは無いとの
結論が出せる事になります。

逆に”○○に限る”という文言がある場合は列挙された品目に限定されるという事に
なりますのでご注意ください。

Filed Under: HSコード, 各国税関による分類事例, 意見相違

HS分類ミスによる追徴課税

最終更新日2020年7月28日 By 河副太智 Leave a Comment

HSコード分類の規則はブラックボックスであるため、税関と輸出入者等の間での意見相違の発生や
分類ミスが発生することは珍しいことではありません。

実際にどれほどのHSコード分類の誤りが発生しているのか正確な件数を把握する事はできませんが
カナダ政府監査機関が発行するレポートに参考になる情報が掲載されておりました。

カナダ税関の発表によるとカナダに輸入される貨物のおよそ20%がHSコードの分類に誤りがあると
報告されています。

更に2015年~2016年の会計年度においては2100万CAD(カナダドル)の輸入者に対する追徴課税が
HSコード分類の誤りによって発生しているとの報告もあります。

HSコード分類は貿易手続きの中では軽視されがちな分野ではありますが、万が一意見相違や誤りが
あれば重大な事故につながる恐れがあるため、極力事前教示制度等輸入国税関への相談は欠かさない
ようにしたいものです。

Filed Under: HSコード, 意見相違

ボルトとねじのHSコード分類法

最終更新日2020年7月4日 By 河副太智 Leave a Comment

ボルトとねじは似て非なるものでありますが、両者を明確に分ける定義は
曖昧な部分があります。その為、ボルトとねじのHSコードが異なり、かつ
関税率がそれぞれ異なる国の場合、両者の区別が明確にできていないと
税関との意見相違が発生し、思わぬトラブルに陥る事が考えられます。

例えば米国のHTSタリフ(以下HSコードと呼ぶ)の場合、ボルトとねじの
HSコードが異なり、かつ、関税率も大きく異なります。

その為、トラブルが頻出しているのか、米国税関(CBP)が発行する
Vehicles, Parts and Accessories Under the HTSUSの15pにてボルトとねじの
HSコード関する以下のような記述があります。

ねじによる締め金具にナットが付属しているというだけで
「ボルト」のHSコードが適切だと判断する者が多いが
ねじ締め金具にナットが付属していても「ねじ」のHSコー
ドに分類されるケースもある。
~略~
「ボルト」と「ねじ」の定義には様々な規則を用いることになる。

つまり見た目はボルトでも安易に申告すると状況によってはもっと関税率
の高いねじに分類変更されるかもしれませんよという注意喚起です。
※日本ではボルトとねじの関税率は同じ。

ボルトとねじのHS分類定義

HSコードを分類する際に参照する関税率表解説(HS:7318項)では以下のように
ボルトとねじの違いを定義しています。

ボルトは、ナットと組み合わされるように作られており、通常ねじの
切ってない軸の部分を有する。

これに対して金属用のねじは、締め付ける材料にねじ立てされた穴に
ねじ込まれるものであり、そのために、その長さの全体に通常、ねじ
が付け
られている。

この解説を参考にするとボルトとねじは以下のようにざっくりと分類ができます。
※本記事ではHTSをHSコードと記載

ボルト:

出典:CBP(米国税関)
登録番号:N090529
日付:2010-01-15
HSコード:7318.15.2065


関税率表解説による定義:ボルトは、ナットと組み合わされるように作られており、
通常ねじの切ってない軸の部分を有する。

ねじ:

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY H86189
日付:2005-01-20
HSコード:7318.15.8080

関税率表解説による定義:金属用のねじは、締め付ける材料にねじ立てされた穴にねじ込まれるものであり、そのために、その長さの全体に通常、ねじが付けられている。

上記実例を見ると関税率表解説のボルト、ねじに対する定義と実物はほぼ一致する
と考えてよいと考えますが、貿易実務では様々なタイプのボルト、ねじを扱う為、
必ずしも関税率表解説の定義によって分類されるという訳ではなく、実物の形状や
用途によって様々な分類方法が採用されます。
Vehicles, Parts and Accessories Under the HTSUSの15pにおいても関税率表解説の定義は
一部の特徴を定義しただけであり、実際は様々な規則を参考にし、状況に応じて両者
を区別するとあります。


出典:Vehicles, Parts and Accessories Under the HTSUS(CBP)

つまり、特殊な形状のボルトとねじのHSコードの分類に関しては意見相違の
リスクが高いという事がうかがえます。

そこで米国税関による事前教示回答事例を参考にどのような形状の締め金具が
ボルト、ねじに分類されるのかを確認してみます。

 

ボルトとねじのHSコード事前教示回答事例

以下に米国税関(CBP)によるHTSコード事前教示回答事例を紹介します。

 

ボルト HS:7318.15.20

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY H86191
日付:2001-12-19
HSコード:7318.15.2090

 

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY F88287
日付:2000-06-14
HSコード:7318.15.2090

 

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY D86443
日付:1999-01-14
HSコード:7318.15.2090

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY G83591
日付:2000-11-01
HSコード:7318.15.20

 

機械用ネジHS:7318.15.40

出典:CBP(米国税関)
登録番号:N126430
日付:2010-10-14
HSコード:7318.15.4000

スタッドHS:7318.15.50

出典:CBP(米国税関)
登録番号:N034007
日付:2008-07-31
HSコード:7318.15.5060

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY H86190
日付:2001-12-19
HSコード:7318.15.5060

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY H86194
日付:2001-12-19
HSコード:7318.15.5060

 

ネジHS:7318.15.60

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY H88741
日付:2002-02-26
HSコード:7318.15.60

 

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY D88323
日付:1999-02-23
HSコード:7318.15.6060

 

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY G87524
日付:2001-03-12
HSコード:7318.15.6060

その他ネジ等HS:7318.15.80

出典:CBP(米国税関)
登録番号:NY G83167
日付:2000-10-16
HSコード:7318.15.8045

判断が困難な事例

見た目はボルトであってもその他ねじ等に分類

出典:CBP(米国税関)
登録番号:N034003
日付:2008-07-31
HSコード:7318.15.8065

本事例の品目は照会者がボルトとして事前教示申請を行ったものであり、
見た目からもボルトのHS:7318.15.20に該当するようにも見えますが、その他の
ねじ等のHS:7318.15.80に分類されました。

なぜボルトのHSである7318.15.20から除外されたのか詳しい理由の記載はありま
せんが、当該品目の用途はブッシングをフロントサスペンションアームに結合さ
せるという目的で使用されるという事など様々な要素を考慮し、ボルトの定義に
沿わないと判断され、その他のねじ等のHSである7318.15.80に分類されたのでは
ないかと考えます。

見た目はボルトであっても自動車部品に分類

出典:CBP(米国税関)
登録番号 N057558
処理年月日 2009-5-5
品名:bolt-shaped piece of zinc
HSコード:8708.80

本事例の品目は見た目は汎用性のあるボルトに見える為、HSコード7318.15に
分類されてもよさそうですが米国税関では自動車用部品に分類されています。

理由としてはサスペンション(懸架装置)のトーコントロールシステムに使用さ
れる事が明らかであることから通則1を適用し、項の規定に従ってHSコード8708.80
に分類される事になりました。

先ほどの登録番号:N034003の事例もサスペンションに使用される金具では
ありますが、本品目はサスペンション機能への関わりが大きいと判断されたためか
自動車部品の懸架装置部品に分類されています。

米国税関とチェコ税関での意見相違

自動車用ヘッドライトの位置を調整するボルト(ネジ)のHSコード分類において
米国税関とチェコ税関の間で意見相違のある事例を紹介します。

チェコ税関の事例

登録番号 CZ40-0816-2017
税関 オロモウツ
処理年月日 2017-07-21
品名: THREADED SCREWS
HSコード:3926.90(分類当時のHSバージョン)

出典:European Commission

本事例の品目は自動車ヘッドライトのLEDの高さを調節するボルト(ネジ)であり
材質はプラスチック製という事でHSコードはプラスチック製品のその他3926.90に
分類される事になりました。

本事例の別の分類候補として電気式の照明機器の部分品としてHSコード8512.90も
検討されましたが、照明そのものの機能ではないとして材質分類での判断となりました。※本事例では16部注1(g)を適用してプラスチック製の汎用品と判断している為、
本品目の材質が鉄鋼製であれば7318.15に分類されるものと考えます。

米国税関の事例

上記のチェコ税関の事例とは異なり、米国税関では自動車用ヘッドライト調整用
ボルト(ネジ)を自動車用部品として分類しています。

登録番号 HQ 086396
税関 ワシントンDC
処理年月日 1990-4-27
品名: Headlamp adjusting screw
HSコード:8708.99(分類当時のHSバージョン)

照会品目の画像はありませんが解説を読むと本品の特徴として、ネジに
ナイロン製のハウジングが取り付けられ、これらは恒久的に結合しているようです。
用途は自動車用ヘッドライトのビームを調整するためのものであり、先ほどのチェコ
税関の事例の品目と材質は異なるものの用途は同種と考えてよいと考えます。

本事例では汎用性と材質を考慮しHSコード7318も候補の一つではありましたが
最終的に自動車用部品のHSコード8708.99に分類されました。

その理由としては7318項解説(A)にある「物品の組立て又は締め付けに使用」する
ものではないという事を根拠として7318項から除外しています。

更に7318項解説(A)(c)では7318項の除外規定が設定されており、そこには
ねじ機構(伝動用その他機械の運動部分として使用されるもの。)と規定されて
いるため自動車用部品として分類する事が適切であると判断する事になり、
汎用性のある品目として分類したチェコ税関の考え方が異なります。

EPAを適用して関税削減を行う場合の注意点

EPAを適用してサプライチェーン上の関税削減を行う場合、ボルトやねじの
HSコードを検討する場面は少なくないと考えますので非原産材料として
これらを使用する場合は特定の機器の部分品と判断されないかどうかを事前
によく検討しないと原産地規則を満たさないと税関より指摘される可能性が
あります。

上記で紹介した事例のように明らかに見た目はボルトであっても特定の機器
の部分品等に分類される事例は多くありますのでボルト、ねじの通関は事前
に注意が必要です。

Filed Under: HSコード, 各国税関による分類事例, 意見相違

ボルトのHSコード分類法

最終更新日2020年7月4日 By 河副太智 Leave a Comment

EPAを活用した関税削減を検討する際に部分品のHSコードの分類先は非常に
重要な意味を持つ事があります。

最終製品の部分品であってもHSコードの分類上「何かの部分品」として
分類されるのかあるいは「材質」「個別用途」などによって分類されるのかが
非常に曖昧である事が多いのが部分品の特徴です。

本記事では世界各国の税関による事前教示回答事例からネジのHSコード
分類事例をいくつか紹介させて頂きます。

ドイツ税関によるHSコード判断事例

登録番号 DE11518 / 16-1
税関 ハノーバー
処理年月日 2017-7-20
品名:THREADED SCREWS
HSコード:7318.15(分類当時のHSバージョン)

上記品目は第15部注2に規定される「卑金属製のはん用性の部分品」に該当するものであることからHSコード7318.15に分類されました。(全長:約41.6 mm、ねじ径:約9.1 mm)
基本的にボルト(ネジ)は7318項に分類される事が一般的です。

出典:European Commission

米国税関によるHSコード判断事例

登録番号 N057558
税関 ニューヨーク
処理年月日 2009-5-5
品名:bolt-shaped piece of zinc
HSコード:8708.80(分類当時のHSバージョン)

出典:CBP

本事例の品目は見た目は汎用性のあるボルトに見える為、先ほどのドイツ税関の
事例のようにHSコード7318.15に分類されてもよさそうですが米国税関では自動車
用部品に分類されています。

理由としてはサスペンション(懸架装置)のトーコントロールシステムに使用さ
れる事が明らかであることから通則1を適用し、項の規定に従ってHSコード8708.80
に分類される事になりました。

米国税関とチェコ税関での意見相違

自動車用ヘッドライトの位置を調整するボルト(ネジ)のHSコード分類において
米国税関とチェコ税関の間で意見相違のある事例を紹介します。

チェコ税関の事例

登録番号 CZ40-0816-2017
税関 オロモウツ
処理年月日 2017-07-21
品名: THREADED SCREWS
HSコード:3926.90(分類当時のHSバージョン)

出典:European Commission

本事例の品目は自動車ヘッドライトのLEDの高さを調節するボルト(ネジ)であり
材質はプラスチック製という事でHSコードはプラスチック製品のその他3926.90に
分類される事になりました。

本事例の別の分類候補として電気式の照明機器の部分品としてHSコード8512.90も
検討されましたが、照明そのものの機能ではないとして材質分類での判断となりました。※本事例では16部注1(g)を適用してプラスチック製の汎用品と判断している為、
本品目の材質が鉄鋼製であれば7318.15に分類されるものと考えます。

米国税関の事例

上記のチェコ税関の事例とは異なり、米国税関では自動車用ヘッドライト調整用
ボルト(ネジ)を自動車用部品として分類しています。

登録番号 HQ 086396
税関 ワシントンDC
処理年月日 1990-4-27
品名: Headlamp adjusting screw
HSコード:8708.99(分類当時のHSバージョン)

照会品目の画像はありませんが解説を読むと本品の特徴として、ネジに
ナイロン製のハウジングが取り付けられ、これらは恒久的に結合しているようです。
用途は自動車用ヘッドライトのビームを調整するためのものであり、先ほどのチェコ
税関の事例の品目と材質は異なるものの用途は同種と考えてよいと考えます。

本事例では汎用性と材質を考慮しHSコード7318も候補の一つではありましたが
最終的に自動車用部品のHSコード8708.99に分類されました。

その理由としては7318項解説(A)にある「物品の組立て又は締め付けに使用」する
ものではないという事を根拠として7318項から除外しています。

更に7318項解説(A)(c)では7318項の除外規定が設定されており、そこには
ねじ機構(伝動用その他機械の運動部分として使用されるもの。)と規定されて
いるため自動車用部品として分類する事が適切であると判断する事になり、
汎用性のある品目として分類したチェコ税関の考え方が異なります。

まとめ

HSコードの分類システムそのものは世界共通ではありますが、各国によって判断
基準が異なる事は多々あります。
個人的にEUや日本は材質分類を積極的に行う反面、米国税関は何かの部分品に分
類する事例が多いように感じます。

特に部分品に対する国家間における意見相違は顕著に発生するため、サプライチ
ェーンに与える影響は甚大です。

単純に部分品を日本に輸入する場合であれば「何かの部分品」として分類
されれば関税ゼロで輸入する事ができる場合が多いのですが、EPAを適用して
関税削減の恩恵を目的とした場合、部分品以外のHSコードに分類される方が
原産地規則を満たしやすくなるため、分類判断は情況によって有利になったり
不利になったりします。

その為各国の事前教示分類事例から分類動向を調査を行う事は製品の製造工程の
検討段階で行う事が重要と考えます。

Filed Under: HSコード, 各国税関による分類事例, 意見相違

「インジェクター(燃料噴射装置)」のHSコード分類法

最終更新日2020年8月12日 By 河副太智 Leave a Comment

「インジェクター(燃料噴射装置)」のHSコードは「エンジンの部分品」に
分類されるのか「バルブ」に分類されるのかで混乱する事が考えられます。

このような混乱はサプライチェーン上でのEPAを適用した関税削減への
悪影響を発生させる事も考えられるため、本記事では「インジェクター」の
HSコード分類事例を種類別に紹介し、様々な事例を通じてHSコード分類先の
手がかりになる情報をお伝えします。

日本税関によるHSコード判例

「インジェクター」のHS分類判例の一部を紹介します。
(※本記事中の「判例」とは裁判所の判決ではなく税関による「判断事例」を指します。)

日本税関判例:エンジンの部分品

登録番号 116005299
税関 名古屋
処理年月日 2016-11-11
品名:エンジンの部分品
HSコード:8409.91(分類当時のHSバージョン)

貨物概要:
自動車用ガソリンエンジンに使用する燃料噴射装置構造:
本体内部に組み込まれた5種類の主要部品からなる(フィルタ)燃料入口に
位置する燃料のろ過材(スプリング)噴射口全閉時にニードルバルブを下方
に押し付けるコイルばね(ソレノイドコイル)電磁コイル(ニードルバルブ)
ソレノイドコイルの吸引力により噴射口を開閉するバルブ(ノズルプレート)
燃料を霧化する噴射口
性状:円筒形の本体からなるもので、噴射口の反対側先端部から中央部にかけて、
コネクタ付きのカバーで被覆されたもの
サイズ:最大径15mm、長さ85mm機能:ECUからの噴射信号(電気信号)に
よりソレノイドコイルに通電し、電磁力によりニードルバルブが吸引され上昇
することにより噴射口が開き、昇圧された燃料が ノズルプレートの噴孔より
霧化し噴射される
用途:自動車用エンジンの燃料噴射装置として使用
包装:60個/箱

分類理由:
本品は、自動車用のピストン式ガソリンエンジンの吸気ポートに取り付けられ、
ECUからの電気信号を受けて、加圧された燃料を霧化し噴射する装置である。
本品は、その性状及び機能等から、エンジンに専ら又は主として使用する部分
品と認められるため、関税率表第16部注2(b)、同表第84.09項及び同表解説第
84.09項の規定により、上記のとおり分類する。

出典:税関事前教示事例を一部加工して作成

見解:
関税率表第16部注2(b)では「特定の機械又は同一の項の複数の機械に専ら
又は主として使用する部分品は、これらの機械の項に属する。」との規定が
ある為、エンジンに使用されるインジェクターは「インジェクターの部分品」
に分類されました。

 

諸外国税関によるHSコード判例

米国税関判例: Fuel injectors

登録番号 N272053
税関 アメリカ ニューヨーク
処理年月日 January 28, 2016
一般的品名 Fuel injectors
HSコード 8481.80(分類当時のHSバージョン)

出典:米国税関CBP

事前教示には品番の記載もある事から以下のHyundai製のエンジンの
「35310」に該当するインジェクターが審査の対象である事がわかります。

2015 Hyundai Sonata Throttle Body & Injector

出典:HyundaiPartsDeal.com

見解:
先ほどの日本の事例とは異なり、輸入者が「エンジンの部分品」(HS:8409.91)を
検討していたにも関わらず米国税関は「弁」(HS:8481.80)に分類しました。
通則1を適用して「インジェクター」は8481項の規定に合致するというのが
米国税関の見解となっております。

 

ドイツ税関判例: High pressure injector

登録番号 DE16784/12-1
税関 ドイツ ハンブルグ
処理年月日 2012-10-30
一般的品名 High pressure injector
HSコード:8409.91(分類当時のHSバージョン)

車のエンジンに使用される高圧インジェクター

出典:European Commission

見解:
本事例は日本と同じ見解で関税率表第16部注2(b)を適用し、
エンジンの部分品(HS:8409.91)に分類されました。

 

HSコード分類最終見解

多くの部分品に言えることですが「何かの部分品」に分類されるのか
あるいは「特定の項の規定に合致する品目」に分類されるのかという点
は国によって考え方が異なる為、上記のように複数のHS分類候補がある
場合があります。

国による意見相違はHS分類において永遠の課題であり、完全な解決は
非常に難しい所ではありますが、事前に複数の税関の事前教示例を
確認する事により、国家間での意見相違のリスクの高い品目かどうか
を判断する事は可能かと思います。

本事例では日本、ドイツは同じ意見であり、米国は違う解釈をしている
という事から上記3国以外の国に「インジェクター」を輸出する場合は
「相手国ではどのように分類するのかを深く検討する必要がある」と
事前にフラグを立てる事が重要になります。

関税削減の為の戦略的HSコード分類

EPA非締約国から”インジェクター”を調達し、
EPA締約国Aにて「エンジン」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は”インジェクター”と「エンジン」のHSコードの
分類先によって関税削減の対象になるかどうかが決まります。
(※CTCの場合、原料と製品のHSが離れていればいるほど有利になる為)

このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPA規則
に沿って製造工程を検討し、かつ輸入国の税関がそれぞれの部分品と
最終製品のHSコード分類先をどう判断するか、交渉の余地はあるのか等
を考慮する事により、効率的な関税削減が実現できます。

一つの国の判断に縛られる事なく、世界の税関の判断事例を広く
把握する事がEPAを適用した関税削減に重要な考え方になります。

Filed Under: 各国税関による分類事例, 意見相違, 自動車部品

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