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関税削減.com【HSコード分類事例の解説】

世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。

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意見相違

※効率的に関税削減を行うための図解マニュアルは こちらからダウンロード。

税関が敗訴したロッキングプライヤーのHSコード分類裁判

最終更新日2020年6月19日 By 河副太智 Leave a Comment

ロッキングプライヤーのHSコード分類を争点として
輸入者(Irwin Industrial Tool Company)が米国税関(CBP)を被告として訴訟提起し、
税関が敗訴した事例をCustoms Bulletinより引用して紹介します。

本事例では輸入者が「プライヤー」(HS:8203)として申告したロッキングプライヤーを
米国税関(CBP)が「レンチ」(HS:8204)であると判断し、両者の間に意見相違があり、
訴訟まで発展したという事例です。

本事例を読み解く前にまずレンチとプライヤーの違いを確認してみます。

レンチの例

ポーランド税関分類事例(HS:820412)PLBTIWIT-2019-001495

出典:EU Customs Union

モンキーレンチと呼ばれる調節機能のついたレンチです。
対象物を傷つけることなく回す事ができるのが特徴です。

 

プライヤーの例

ポーランド税関分類事例(HS:820320)PLBTIWIT-2020-000196

出典:EU Customs Union

先ほどのレンチとは異なり人間の手で握りしめる事により対象物を掴んで
回したり引き抜いたりする為、対象物が傷つきやすいのが特徴です。

 

訴訟対象のロッキングプライヤー

以下の画像の対象物が実際に裁判の対象となった品目です。

出典:Customs Bulletin

プライヤーとしての特徴である人の手で握りしめて対象物を傷つけながら
締め付け、レンチのような調節機能により締め付けたまま固定する事が可能
であるため、「プライヤー」(HS:8203)なのか「レンチ」(HS:8204)なのかで
判断に迷う部分ではあります。

 

裁判所(CIT)の判断

裁判所は米国税関(CBP)が主張するHSコード分類「レンチ」(HS:8204)の判断を退け、
輸入者が主張するHSコード分類「プライヤー」(HS:8203)の判断を認容するに至りました。

裁判所の意見としては当該品目は用途的には米国税関が主張するレンチに該当
するがHSコード分類の規定におけるレンチの定義に用途に関する規定が無いとして
用途よりも外見的特徴から「プライヤー」(HS:8203)に分類する事になりました。

 

EU税関のロッキングプライヤー判断事例

実際他の国の税関でロッキングプライヤーはどこに分類されているのかを
確認したところ、ポーランド税関に類似事例がありましたので紹介します。

ポーランド税関分類事例(HS:820320)PLBTIWIT-2019-000261

出典:EU Customs Union

本事例の対象品目は米国裁判所(CIT)で争われた品目とほぼ同種とみて
良いと考えます。

ポーランド税関では米国裁判所(CIT)と同じようにHSコード8203.20の
プライヤーに分類しています。

米国税関は裁判所の判断に不服があり控訴し、控訴裁判所においても敗訴
しておりますが、引き続きロッキングプライヤーはレンチに分類するという
考えは継続するようです。

Filed Under: HSコード, 各国税関による分類事例, 意見相違

「シートベルト部分品」のHSコード分類事例

最終更新日2020年6月25日 By 河副太智 Leave a Comment

「シートベルト部分品」のHSコード分類は構造や材質によって、
自動車部品以外のHSコードに分類される事があります。

用途は同じであるにも関わらず、複数のHSコードに分類されてしまうと、
分類する側に混乱を生じさせてしまうという問題やサプライチェーン上
でのEPAを適用した関税削減への悪影響が考えられます。

そこで、本記事では「シートベルト部分品」のHSコード分類事例を
種類別に紹介し、様々な事例を通じて「シートベルト部分品」分類先の
手がかりになる情報をお伝えします。

日本税関によるHSコード判例

「シートベルト部分品」に対する税関の事前教示による判例は以下の通りです。
(※本記事中の「判例」とは裁判所の判決ではなく税関による「判断事例」を指します。)

日本税関判例:巻取り装置のストッパー

登録番号 110003427
税関 名古屋
処理年月日 2010-10-14
一般的品名 自動車用シートベルト機構の部分品
税番 8708.29-000(分類当時のHSバージョン)

貨物概要:
鉄鋼製で内側全体にねじ切りがされたはね付のナット状のもので、自動車
用シートベルトの巻取り装置(スプール)の回転を制御するためのもの
製 法:鉄鋼をプレス加工して、中心をねじ切りして製造
材 質:鉄鋼(キルド鋼) 性 状:ナット状(左右にはね付)
サイズ:リング直径24mm(はねを含む直径32mm)、高さ15mm、
厚み3mm
用 途:自動車用シートベルトのスプール内(巻取り)軸のねじ部に取付ける
ストッパーとして使用。ストッパーのはねがスプール内の溝に勘合し、スプ
ールと一体となって回転する。ねじ部を移動したストッパーが壁面にあたる
ことでスプールの回転が停止し、シートベルトの引き出しを止める。

分類理由:
本品は、自動車用シートベルトのスプール内のねじ部に取付けられるストッ
パーであり、スプールと一体となって回転するシートベルトの引き出しを
制御する機構の一部と認められる。 本品は、自動車用シートベルトの機構に
専ら又は主として使用する部分品と認められることから、関税率表第17部
注3、同表第87.08項及び同表解説第87.08項の規定により、上記
のとおり分類する。

見解:
ナット状の品目という事で汎用性の有無を確認したい所ですが、
ベルトの動きを静止するための構造がシートベルトの部分品としての
決定要因になったと考えます。

出典:税関事前教示事例を一部加工して作成

 

諸外国税関によるHSコード判例

ポーランド税関判例: ベルトロッキング機構

登録番号 PLBTIWIT-2019-000343
税関 ポーランド
処理年月日 2019-03-25
一般的品名 a component of the seat belt mechanism
税番 7326.90(分類当時のHSバージョン)

本事例の品目は鋼鉄製の自動車用シートベルトのロッキング機構となり、
事故発生時にシートベルトをロックする部品です。

自動車用シートベルトの機構に専ら又は主として使用する部分品と考え
られそうですが、ポーランド税関はこれをHSコード7326のその他の鉄鋼
製品に分類しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:European Commission

ポーランド税関判例: ハウジング

登録番号 PLBTIWIT-2019-001122
税関 ポーランド
処理年月日 2019-08-19
一般的品名 SEAT BELTS HOUSING
税番 8308.90(分類当時のHSバージョン)

本事例の品目はシートベルトのバックルの受け側で、プラスチック、
鉄鋼プレート、スプリング、アルミ製部品からなります。

こちらも自動車用シートベルトの機構に専ら又は主として使用する部分品と
考えられそうですが非金属製のバックル(HSコード8308.90)に分類されて
います。

出典:European Commission HP

ルーマニア税関判例: ハウジング

登録番号 RO2017/001699
税関 ルーマニア
処理年月日 2017-5-4
一般的品名 SEAT BELTS HOUSING
税番 8308.90(分類当時のHSバージョン)

こちらも上記と同じくシートベルトのハウジングで、分類先も
非金属製のバックルとなっております。

出典:European Commission HP

 

HSコード分類最終見解

シートベルトは人命に関わる非常に重要な品目である為、内部構造は
複雑になっております。
HS分類においてもそれぞれのパーツが様々に分類される為、部品ごとに
細かく事例を検証する事が望ましいと考えます。

※本記事による各国の品目分類事例は参考のためのものであり、
一切の法的効果や税関の判断を拘束するものではありません。

関税削減の為の戦略的HSコード分類

EPA非締約国から”シートベルトロッキング機構”を調達し、
EPA締約国Aにて「シートベルト全体」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は”シートベルトロッキング機構”と
「シートベルト全体」のHSコードの分類先によって関税削減の対象に
なるかどうかが決まります(※CTCの場合)。

このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPAの規
則に沿って製造工程を検討し、かつ輸入国の税関がそれぞれの部分品と
最終製品のHSコード分類先をどう判断するか、交渉の余地はあるのか等
を考慮する事により、効率的な関税削減が実現できます。

本記事の事例では日本税関の分類方法では原産地規則上不利になりますが
諸外国の判断は原産地規則上有利と考えられますので、一つの国の税関の
判断に縛られる事なく、世界の税関の判断事例を広く把握する事がEPAを
適用した関税削減に重要な考え方になります。

Filed Under: 各国税関による分類事例, 意見相違, 自動車部品

マジックテープのHSコードは国によって異なる?

最終更新日2019年12月22日 By 河副太智 Leave a Comment

サプライチェーンの製造工程に非原産材料のマジックテープがあり、
関税削減の為にそのHSコードを調べる場合、マジックテープという
名称で探しても当該名称は商標登録された名称ですので実行関税率表や
解説では残念ながらそのような名称での記述はありません。

事前教示検索でも同様にマジックテープという名称では特にヒット
しませんでした。

このような場合、どのようなキーワードでHSの解説や事前教示を探す
かが重要なポイントになります。

出典:European Commission

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますがネットで調べたところ
マジックテープの一般名称は「面ファスナー」と呼ぶようです。
※Wikipediaより

関税率表や解説はお堅い名称で品目を特定している事もあるので
同じ品目であっても異なる名称で検索をすると永遠に答えに辿り
付かない事もあるので全く情報が出てこない場合はそもそも自分
が呼んでいる名称が関税率表で採用されていない可能性も考慮し、
類語で再検索する必要がある場合もあります。
(例:関税率表では「じゃがいも」ではなく「ばれいしょ」と呼ぶ等)

そこで税関の事前教示検索ページで「面ファスナー」というワード
で検索してみると以下のような事例を見つける事ができました。

 

ただ少し気になるのが分類されたHSコードが9606.10となっている
という部分です。

HSコード9606.10の規定では「プレスファスナー、スナップファスナー
及びプレススタッド並びにこれらの部分品」となっており、
面ファスナー(マジックテープ)は ファスナーの仲間としてみなさ
れているという事です。

「ファスナー」という用途から9606.10に分類されたのかと思いますが
どうも個人的に腑に落ちませんので海外の税関ではどうなのかを
調べてみました。

まずは米国税関CBPの事前教示を確認すると車いすサポート用の
面ファスナーが5806.10(パイル状の細幅織物)に分類されています。
(英語での事前教示ではMagic TapeやVelcroとは言わず
hook and loop fastenerと呼んでいます。)

次にEU税関事前教示を確認するとこちらもやはり5806.10に分類
されている事例があります。

日本の事前教示対象貨物は画像が無いので断定的な事は言えませんが
ほぼ同じ品目だと思いますのでファスナーという用途で分類するか
材質で分類するかという点で国ごとに異なる判断基準があるのかも
しれません。

サプライチェーン上に非原産材料のマジックテープがある場合、
国ごとに事前確認をした方が良いかもしれません。
(日本だけ特殊なのかもしれませんが…)

 

Filed Under: HSコード, 意見相違

家庭用機器と加工機械のHSコード分類(3Dペンの事例)

最終更新日2019年11月30日 By 河副太智 Leave a Comment

HSコードの分類は絶対的なものではなく、審査する人の考え方に
よって変動する事が多く、国によって分類先が異なる事も多々
あります。

今回は米国税関CBPにおける「3Dペン」の分類事例について紹介
させて頂きます。

上記のような「3Dペン」は主に子供を対象とした家庭内で使用される
機器で、プラスチック原料を電熱で溶かして様々な形を創作する事
ができます。

米国税関(CBP)は2013年12月18日に当該機器の対する事前教示において
本品は家庭用で使用する物として「家庭用電熱機器(HS:8516.79)」に
分類しました。事前教示番号:N248177

しかし、その後5年ほどが経過した2019年10月7日、米国税関(CBP)は上記
決定を変更し、「プラスチックを材料とする物品の製造機械(HS:8477.80)」
に分類すると発表しました。事前教示番号: H293445

変更の理由は「家庭内で使用される機器ではあるが、商用環境や
教育現場でも使用できる事から”家庭内”に限定する必要はない」という
ことでHSコード8477項の規定「プラスチックを材料とする物品の製造
機械」が最も適していると判断したようです。

本来この製品は子供が家庭内で使用する事だけが想定されていて、
その後に建築デザイン、アートデザイン、ものづくり、プラスチック部品
の修理・接着、教育、各種アイデアの展示といった分野への可能性が
見出されたのかもしれません。

そうであれば「家庭用電熱機器(HS:8516.79)」から「プラスチックを材料と
する物品の製造機械(HS:8477.80)」へのHSコード分類の変更は時代と共に
変化する人間の認識に対して相対的に変動する面もあると考える事ができ
るのではないでしょうか。

このような現象を目の当たりにすると関税削減におけるHSコードの分類に
おいては書面による事前教示が非常に重要であると痛感します。

Filed Under: HSコード, 意見相違

関税削減と逋脱(脱税)の隙間

最終更新日2021年5月21日 By 河副太智 Leave a Comment

関税率はどのHSコードに分類されるかによって変わりますので
輸入者としてはできる限り関税率の低い品目にあてはめたいと考えます。

製造工程の変更等によって関税率の低いHSコードに分類できるのであれば
原則に従って目標とする分類先を目指す事は企業努力として大事な事です。

こういった関税削減活動をタリフエンジニアリングと呼びますが、
あまり行き過ぎた対処法はしばしば税関側と揉める事があるようです。

 

“There’s plenty of gray area in tariff classifications,”
“It’s far more of an art than a science.”
グレーゾーンの多いHS分類、それは科学を遥かに超えた芸術である

マイアミ州弁護士Deborah Stern様 chicagotribuneより引用

 

今回紹介する事例は「貿易と関税 2019年1月号」に掲載されている
米フォード社による貨物自動車の関税削減についてです。

米国での貨物自動車の関税率

日本に自動車を輸入する場合は基本的に関税はかかりませんが
米国側が自動車を輸入する場合は関税がかかります。

これが一般的な乗用車の場合、関税率は2.5%となっておりますが
貨物自動車の場合の関税率は25%と10倍に跳ね上がります。

 

↓普通乗用車HS8703の関税率(2.5%)

自動車の関税削減の裁判例

 

↓貨物乗用車HS8704の関税率(25%)

自動車の関税削減の裁判例

 

乗用車と貨物車の定義

上記のように普通乗用車と貨物車での関税率の差が10倍にもなると
両者をどういった定義で分けるのかが問題になり、
米国にて日産パスファインダーのHS分類で裁判になり(35 F.3d 530 (1994))
この裁判で両者を分ける定義が明確になり、
以下のようにHS分類の解説に分類ルールが記載される事となりました。

普通乗用車の解説

(a)それぞれの人員用に安全装置(例えば、安全ベルト又は安全ベルトを装着するためのアン
カーポイントや取り付け具)のついた常設のシートを有し、又は運転席と助手席の後ろに座
席と安全装置を装着するための常設のアンカーポイントを有する(そのような座席は、取り
付けてあるもの、折り畳んであるもの、アンカーポイントから取り外せるもの、又は折り畳
めるものである)こと。
(b)2枚のサイドパネルに沿ってリアウインドウを有すること。
(c)サイドパネル若しくは後部に、窓付きのスライディング式ドア、スウィングアウト式ドア、
跳ね上げ式ドアを有すること。
(d)運転席及び助手席用の区画と乗員と貨物の両者の輸送用である後部区画の間に、常設パネ
ル若しくは仕切りがないこと。
(e)自動車内全体に乗員用に施された内部装備(例えば、フロアカーペット、換気装置、室内
灯、灰皿)を有すること。

貨物車の解説

(a)運転席と助手席の区画の後ろの区画に、安全装置(例えば、安全ベルト又は安全ベルトを
装着するためのアンカーポイントや取り付け具)又は乗員用設備のないベンチタイプの座席
を有すること。そのような座席は、通常、後部フロア(バンタイプ車)や区分けされたスペ
ース(ピックアップ車)全体を貨物輸送のために使用できるよう、折り畳まれているか又は
折り畳むことができる。
(b)運転手と乗員用の区分けされた座席並びにサイドパネル及びあおりのある区分けされたオ
ープンスペースを有する(ピックアップ車)こと。
(c)2枚のサイドパネルに沿った後部の窓がないこと。サイドパネル又は後部に、貨物の積み
降ろしのための窓なしのスライディング式ドア、スウィングアウト式ドア又は跳ね上げ式ド
アを有する(バンタイプ車)こと。
(d)運転席及び助手席用の区画と乗員と貨物の両者の輸送用である後部区画の間に、常設パネ
ル若しくは仕切りがあること。
(e)自動車内全体に乗員用に施された内部装備(例えば、フロアカーペット、換気装置、室内
灯、灰皿)を有しないこと。

 

フォード社による関税削減対策

フォード社は貨物自動車に課される関税率25%を回避すべく上記の定義に沿って
貨物自動車を一時的に(通関時にだけ)普通乗用車の定義に当てはめる為に
簡易な設備(乗用車の要件に適合するための座席等)を設置し、
輸入許可直後に下請け業者にこれら簡易設備を外し、貨物自動車として
流通させ、年間2億5千万ドルの膨大な関税を削減しましたが、
CBP(米国税関)により貨物自動車の特性を隠すための偽装行為であるとの
指摘を受ける事となりました。

フォード社側の意見としては通関時に普通乗用車を普通乗用車で申告して、
通関後に貨物自動車に改造するのは輸入者側の自由であり合法な
タリフエンジニアリングであると主張したためHS分類の判断の為にCIT
(米国の国際貿易裁判所)にて争う事になりました。

国際貿易裁判所の判決

現時点では残念ながら判決文のリンク(Slip_op17/17-102)が切れているので
確認ができませんが(ご存知の方ご連絡頂ければ幸いです。)
以下の情報元を確認するとCITはFordの行為は合法な関税削減活動であるとの
判断を行ったようです。
Ford Prevails at CIT in ‘Tariff Engineering’ Case
Ford’s creative efforts to avoid $250 million in ‘chicken tax’ tariffs under scrutiny

Ford wins ‘tariff engineering’ case v. US on imported Ford Transit Connect
⚖️ it’s a passenger car, not cargo van https://t.co/JkMkjImMN5 pic.twitter.com/HuWHi3ryZN

— Trade News Analysis (@TradeNewsCentre) 2017年8月19日

しかし、CBP(米国税関)はこれを不服として連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に
控訴し、最終的にはCITの判断は覆され、Ford社の輸入した当該車両は
HS8704の貨物乗用車(関税率25%)に該当すると判断しました。判決文

類似の判例

上記の事件に類似するCAFCの判例がありますので紹介します。

United States Court of Appeals for the Federal Circuit
264 F.3d 1126 (Fed. Cir. 2001)

Heartland社はシュガーシロップを輸入する為に米国税関に対し
成分や製造工程を開示し、事前教示を求め、HTS1702.90.40(米国版HS)
に分類されるとの回答を得て低関税率にて輸入をしておりました。
※以下HTSをHSと呼びます。

上記の低関税率のHSに分類される理由は糖蜜を6%以上含有する事が理由でしたが
この糖蜜は輸入後に別工程を経て抜き取られる為、通関時に低い関税率の
HSに分類させるための偽装であるとして起訴されました。

 

HS170290は以下の定義により大きく関税率が変化します。

Containing soluble non-sugar solids equal to 6 percent or less by
weight of the total soluble solids:(excluding any foreign substances)

ざっくり言うと砂糖以外の物質(異物を除く)等が全体の重量の
6%を超えていなければ純度の高いシロップとして高関税率のHSに分類され
逆に砂糖以外の物質(異物を除く)等が全体の重量の
6%を超える純度の低いシロップは低関税率のHSに分類されます。

 

↓純度が高く高関税率になるシロップのHS分類

違法な関税削減の裁判例

 

↓純度が低く低関税率になるシロップのHS分類

違法な関税削減の裁判例

 

通関時にだけ糖蜜を含ませて通関許可を経て、後ほど糖蜜を分離するという
行為に対し、CITはフォード社と同じくこれを合法であると判断しましたが
控訴先のCAFCは「糖蜜は異物である」と判断、この行為を偽装と判断し、
当該シロップを高関税率の対象となる1702.90.10あるいは .20に分類しました。

上記の例はシュガーシロップですが、手法としてはフォード社のものと
似ている事から私個人的にはフォード社の関税削減手法は違法であるとする
判決になると考えております。そうでなければ何でもありになってしまいます。

 

今後の関税削減の流れ

トランプ政権による保守的な関税政策を回避、あるいは拡大するFTA/EPAネット
ワークを利用してより有利な関税率での貿易を実現する為に企業が製造工程等を
検討し、いかに低関税率のHSに目的の品目を分類するかについて戦略的に
考えなければいけない時代が来ております。

かといって裁判沙汰になる可能性のある手法を取り入れると予期せぬトラブルに
遭遇する可能性もありますので、社会通念上相当と認められる範囲内で
関税削減活動を行っていただければと思います。

例えば…
靴に課される高関税率を回避する為にスリッパに分類される仕様を考案
700cc以上のバイクに高関税率が課される為699ccのバイクを製造
鉄やスチールに高関税が課される為モップメーカーが木製部品を使用

など関税削減の為の様々な手法がありますので、適法な範囲内であれば
アイディアを駆使して長期的な利益の確保を目指していただければと思います。

Filed Under: HS分類判例, タリフエンジニアリング, 意見相違 Tagged With: Tariff Engineering, ほ脱, 裁判, 逋脱, 違法

部分品のHS分類は間違えやすい

最終更新日2019年1月31日 By 河副太智 Leave a Comment

HSの選定作業の対象は「製品」だけではなく「製品の部分品」にも及びます。

「製品」そのものであればその名称や用途でHS選定が比較的楽なものも
ありますが、ある製品の「部分品」のHSコードの選定となると非常に複雑になる
場合があり、これをFTA活用の際に判断を誤ると関税削減どころか逆に
ペナルティが発生する場合もありますので「部分品」には更なる注意が必要です。

今回は通関実務を行っていた私自身の失敗事例を紹介します。

 

簡単な部分品のHS選定例

例えば「消火器」のHS選定を行う場合実行関税率表を見ると以下のように
なっておりますのでHSコードは8424.10-000である事がすぐにわかります。

 

 

では「消火器の消火剤発射に使用するカートリッジ」という
消火器の部分品のHS選定の場合は上記の表を少し下に行くと以下のように
記載されており、HSコードは8424.90-010である事がわかります。

 

見慣れない方にとっては非常にややこしく感じるかもしれませんが
部分品のHSコードはこのようにして選定することができます。

 

複雑な部分品のHS選定例

ここから私自身の通関実務で実際に発生した誤りの例です。

荷主様からのインボイスにはマッサージチェア本体とその部品のヘッドレストが
ありましたので当時の私は何も疑わずに本体のHSコードと部品のヘッドレスト
のHSの2つを探す作業を行いました。

まず一つ目のマッサージチェア本体のHSコードは9019.10-000である事を
特定しました。

 

 

 

次にこの部分品のHSコードを探しますがこれが先ほどの消火器のように
すぐ下に記載がないので不安な気持ちでこの90類を延々と探していきます。

すると以下のような表記がありました

 

この記述を見てHS9033.00-000は90類の機器全部の部分品なのだと判断し
マッサージチェア本体はHS9019.10-000
マッサージチェア部品はHS9033.00-000で申告をしましたが、その申告後、
税関から電話でHS選定に誤りがある事を告げられてしまいます。

原因としてはHS9033.00-000の説明文のかっこ書きにある
(この類の他の項に該当するものを除く)という記述を吟味しなかった事に
ありました。

HS選定の大原則として「品目別分類の解説を熟読」というのがありますが
当時の私は解説を読まずに判断をしてしまい大変反省させられました。
今改めて90類の解説注2-(b)を確認しますと以下のような記述があります。

2 この類の物品の部分品及び附属品は、1の物品を除くほか、
次に定めるところによりその所属を決定する。
⒜…省略
⒝ ⒜に定めるものを除くほか、特定の機器又は同一の項の
複数の機器(第 90.10 項、第 90.13 項又は第 90.31 項の
機器を含む。)に専ら又は主として使用する部分品及び附属品は
これらの機器の項に属する。

これはつまり90類に該当する品目に対し主として使用する部品は
本体のHSコードと同じHSコードに分類されるという意味になるため
ウィンウィンと動くマッサージチェア本体はHS9019.10-000に分類され、
その部品のヘッドレストのHSも同じく9019.10-000に分類されます。


※税関事前教示回答事例より

 

部分品のHS選定を誤るとどうなる?

上記の例の場合は日本に輸入するケースなのでマッサージチェア本体と
その部品であるHS9019.10-000は関税ゼロなので大きな問題にはなりません。
(輸入申告書を訂正し、通関士に非違ポイントというペナルティが課される)

しかし、マッサージチェアを輸出する場合で、かつFTA等を利用して特恵関税
の恩恵を受ける貿易形態であった場合、この誤りが悲劇になる可能性があります。

 

例えば日本からインドネシアにマッサージチェア本体を輸出した場合、
インドネシア側でのMFN関税率は5%となります。

※FedexのWorldTariffより転載

 

 

そして、日インドネシアEPAを利用すれば5%から0%に関税削減できます。

 

※RULES OF ORIGIN FACILITATORより転載

 

 

ここで問題になるのはマッサージチェア本体を構成する部品を日本以外の
第三国から調達している場合にEPAの特恵関税率の恩恵を得る為の
インドネシア側の品目別分類規則を満たせるかどうかです。

 

インドネシア側のHS901910の品目別分類規則は以下になります。

A change to subheading 9001.10 through 9033.00 from
any other subheading;
or No required change in tariff classification to subheading
9001.10 through 9033.00, provided that there is a qualifying
value content of not less than 40 percent.

これはつまり第三国から供給された材料から構成される製品の場合、
材料から製品にHSコードが6桁レベルで変更するような加工がされていれば
日本産としてみなされ、特恵関税率が適用されるという事になります。
(付加価値基準を適用する場合は40%以上、今回はCTCを想定)

この原産地規則を検討している際に私が犯したようなミスをして
マッサージチェア本体はHS9019.10
第三国から調達したマッサージチェア部品はHS9033.00という判断をすると
一見HSが6桁レベルで変更されているように見えてしまい、原産地規則を
満たさない物を満たすものとして判断し、通関時あるいは検認等にてこの
誤りを税関から指摘された場合は過少申告加算税等ペナルティの対象と
なってしまいます。

更にその貨物が継続的に輸出されていた場合は過去数年分まで遡って
加算税等が請求されてしまう可能性もあります。

 

正しく部分品のHS選定をするには?

HSコードの選定を実行関税率表だけ見て決めるのはとても危険です。
自信があったとしても以下の手順は最低限必要です。

類注を確認する

該当すると思われるHSコードの類(HSの頭2桁)ごとに「類注」という
その類全体に対する包括的なルールがありますのでこちらを必ず参照する
必要があります。

ネット上では実行関税率表一覧から年度を指定したページに移動し
以下のリンクをクリックすれば類注を確認する事ができます。

 

 

関税率表解説を確認する

関税率表解説を見ると各HSコードの類(頭2桁)に属する品目に対する
より詳細な解説があり、実行関税率表だけでは分類しきれない品目がここに
記載されております。

自信を持ってHS分類をしてもこの解説をよく見たら間違えだったという事も
多々ありますのでこちらもじっくりと熟読する必要があります。

 

各類に対して「関税率表解説」「例規(分類事例)」へのリンクがあります。

 

関税率表解説はWCOのExplanatory Note(解説書)が基になっており
国際分類例規はWCOのClassification Opinion(分類意見)が基になっており、
国際的なHS分類の判断基準となるため、輸出先の税関に意見を述べる際にも
有効な情報となります。(国内例規は基本的には日本国内のみの事例)

事前教示回答事例を確認する

HSコードを調べたい貨物の名称等を事前教示回答事例で検索すると
過去の分類事例を検索する事ができます。
HS確定に至るまでの経緯が詳細に記録されておりますので
非常に有効な情報源となります。

 

 

税関に聞く

上記の手順を踏んでも不安はそう簡単に拭えないかと思います。
そういった場合は税関に相談するのが一番です。

税関による事前教示制度を利用すればHS分類の事前相談が可能です。
輸出する場合は相手国の税関に質問する事になりますので
現地の輸入者やブローカーを通じて聞くという形が良いでしょう。

海外の税関でも事前教示制度は広く存在しておりますので
面倒でも万が一の事を考えて利用する事を強くお勧めします。

 

部分品のHSもしっかり調べる

製品のHSや原料のHSを選定するという時には慎重な姿勢になりますが
部分品のHSと言われるとなぜか気持ちが緩んでしまいます(私だけかも?)
しかし、上記のように部分品と言えども予想を遥かに超えた場所に分類される事も
多々ありますし、汎用性があると部分品として認められないケースもあります。
特にFTAの原産地規則を満たすかどうかという場面では部分品はよく扱われる種類
の貨物だと思いますので最後まで気を抜かずに徹底的に調べる姿勢が大事です。

 

Filed Under: HSコード, 意見相違 Tagged With: マッサージチェア

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