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関税削減.com【HSコード分類事例の解説】

世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。

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HSコード

※効率的に関税削減を行うための図解マニュアルは こちらからダウンロード。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

最終更新日2019年9月22日 By 河副太智 Leave a Comment

関税削減をする為にはEPA締約国間での貿易取引である事を証明する為に
該当品目がどの国の原産なのかを特定し、税関に申告する必要があります。

この原産国を特定する方法にHSコードを使用するものがありますが、
HSコードに馴染みの無い方にとってはこの分野を極力避けて原産国の
特定をしたいと考えるかもしれません。

本記事では原産国を特定する方法にHSコード分類を極力避けた場合の
メリットとデメリットについて解説させていただきます。

 

価額を用いた原産国特定方法が好まれるが…

該当品目がどの国の原産なのかを特定する方法は品目にもよりますが
大まかに以下の3点に分類されます。

  1. 原料、製造コスト等の価額を用いて原産国を特定する方法
  2. HSを用いて原料から製品への変化を基準として原産国を特定する方法
  3. 原料から製品への製造工程そのものから原産国を特定する方法

上記3点の証明方法のうち、どれか一つを原産国の特定方法として任意に
選択できるという場合であれば1を選択したいと考えるかもしれません。

なぜならば2と3の方法は通関の専門知識が深く関わっており、対策しづらい
感じがしますが、1の方法は製造の工程で発生する費用の証明が主になる為
取り組みやすく感じるのが一般的な考えになるでしょう。

確かに価額を用いた原産国特定方法は証明手順が容易にイメージでき、
小学生レベルの算数で誰でも対応可能ではありますがデメリットが多いのも
事実です。

この両者を比較する為に以下の事例をご覧ください。
※3の製造工程で原産国を特定する方法は特定の品目に限られるので本記事では省略します。

 

絵画制作の事例で原産国証明方法を比較

 

B国に住む画家がC国から「絵具セット」をCIF1,000円で輸入しました。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

その画家はB国にてC国産の「絵具セット」を使用して絵画を作成。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

その後完成した「絵画」をA国にFOB5,000円で販売する事になりました。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

A国とB国はEPA締約国である為「絵画」がB国産として認められれば
A国にて関税削減の対象となります。

 

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

しかし、C国はA国ともB国ともEPA締約国ではありませんので
C国産の「絵具セット」を使用してB国で制作された絵画がB国産として
認められるには原産地規則を満たす必要があります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

この絵画がB国産として認められるには先ほどの1の価額を用いた方法と
2のHS分類による方法の2種類どちらか一方を満たせばよいという規定で
あった場合にそれぞれの方法のメリットとデメリットは以下になります。

 

1の価額を用いた方法を適用する場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」はCIF1,000円で
B国にて制作された後、A国向けFOB価格は5,000円になりましたので、
B国にて与えられた付加価値は80%になります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

価額を用いた方法で原産基準を満たすか否かの計算方法は協定によって
複数種類があります。本記事では最も一般的な控除方式の式で計算します。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

RVCとはRegional Value Contentの略で、産品が生産者の現地地域で
生産されている度合い(現地調達率)を示すパーセンテージです。

「絵画」の価格と「絵具セット」の価格を式に当てはめると
以下のようになります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

付加価値が80%となる為、定められた付加価値基準がこの値より下であれば
基準をクリアし、A国での輸入時に当該「絵画」はB国産とみなされ、
特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

 

付加価値基準を利用するメリット

■原料のHSコードの選定作業が無く、小学生レベルの算数で原産性を
証明できるので比較的容易に取り組むことができる

 

付加価値基準を利用するデメリット

■原産地規則を満たせても非原産材料の価格等が高騰した場合、
ある時点から付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
その結果原産性を満たさなくなる可能性がある。

■最終製品の価格が下落した場合も同じくある時点から
付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■為替の変動があった場合に非原産材料の価格と最終製品の価格間の
バランスが変わる事により付加価値基準の閾値を超える事ができなくなり、
原産性を満たさなくなる可能性がある。

■上記3点の変動を常に把握しなければいけない為、
取引毎に全ての費用を確認し続ける手間がある。

■輸出先、取引先等に原産材料の仕入れ値を知られてしまう可能性があり、
輸出先が関連会社で無い場合はハードルが高くなる。
(上記の例では画家が販売先に「絵具セット」の原価を公開する事になる)

■価格に関する証明書類が多くなる為、事後調査や検認の際に税関から
求められる資料が多くなり、非常に手間がかかる。

 

関税分類変更基準を満たす場合

非締約のC国から調達した非原産材料の「絵具セット」のHSは3213で
B国にて制作された後、A国向け「絵画」のHSは9701になります。

このようにB国での加工作業により関税分類の変更という現象を基準に
して原産国を特定する事が可能になり、A国での輸入時に当該「絵画」はB
国産とみなされ、特恵関税率を適用した関税削減の対象となります。

関税削減にHSコードによる分類が必要な理由

 

関税分類変更基準を利用するメリット

■一度最終製品と原料のHSコードを確定し、原産地規則を満たせば
価格や為替変動の影響を受けて原産性を失う事が無い。

■取引毎の確認の手間が省ける。

■事後調査や検認時にも原産性の証明が付加価値基準に比べて
容易になる。

関税分類変更基準を利用するデメリット

■HSコードの選定作業専門知識が必要となる為、新規貨物を扱う際に
手間がかかる。

結論

1の価額を用いた方法と2のHS分類による方法のどちらか一方を選択できる場合
私個人的には2のHS分類による変更基準を満たして原産性を立証する方が
長い目で見れば良いのではないかと考えます。

中には1の価額を用いた方法でないと原産性を立証できない品目もあります。
例えば非原産材料の車の部分品を加工して、付加価値のある車の部品に
する場合等どうしても2のHS分類による変更基準が使用できないケースもありますので
実務上はケースバイケースにならざるを得ないでしょう。

しかし、品目の特性上1と2の両方の方法で対応可能な品目である場合は
2のHS分類による方法の方がメリットが多くありますので関税削減対策を
効率的に行うにはHSコードによる品目分類の知識が非常に重要になります。

Filed Under: FTA/EPA, HSコード

関税削減と逋脱(脱税)の隙間

最終更新日2021年5月21日 By 河副太智 Leave a Comment

関税率はどのHSコードに分類されるかによって変わりますので
輸入者としてはできる限り関税率の低い品目にあてはめたいと考えます。

製造工程の変更等によって関税率の低いHSコードに分類できるのであれば
原則に従って目標とする分類先を目指す事は企業努力として大事な事です。

こういった関税削減活動をタリフエンジニアリングと呼びますが、
あまり行き過ぎた対処法はしばしば税関側と揉める事があるようです。

 

“There’s plenty of gray area in tariff classifications,”
“It’s far more of an art than a science.”
グレーゾーンの多いHS分類、それは科学を遥かに超えた芸術である

マイアミ州弁護士Deborah Stern様 chicagotribuneより引用

 

今回紹介する事例は「貿易と関税 2019年1月号」に掲載されている
米フォード社による貨物自動車の関税削減についてです。

米国での貨物自動車の関税率

日本に自動車を輸入する場合は基本的に関税はかかりませんが
米国側が自動車を輸入する場合は関税がかかります。

これが一般的な乗用車の場合、関税率は2.5%となっておりますが
貨物自動車の場合の関税率は25%と10倍に跳ね上がります。

 

↓普通乗用車HS8703の関税率(2.5%)

自動車の関税削減の裁判例

 

↓貨物乗用車HS8704の関税率(25%)

自動車の関税削減の裁判例

 

乗用車と貨物車の定義

上記のように普通乗用車と貨物車での関税率の差が10倍にもなると
両者をどういった定義で分けるのかが問題になり、
米国にて日産パスファインダーのHS分類で裁判になり(35 F.3d 530 (1994))
この裁判で両者を分ける定義が明確になり、
以下のようにHS分類の解説に分類ルールが記載される事となりました。

普通乗用車の解説

(a)それぞれの人員用に安全装置(例えば、安全ベルト又は安全ベルトを装着するためのアン
カーポイントや取り付け具)のついた常設のシートを有し、又は運転席と助手席の後ろに座
席と安全装置を装着するための常設のアンカーポイントを有する(そのような座席は、取り
付けてあるもの、折り畳んであるもの、アンカーポイントから取り外せるもの、又は折り畳
めるものである)こと。
(b)2枚のサイドパネルに沿ってリアウインドウを有すること。
(c)サイドパネル若しくは後部に、窓付きのスライディング式ドア、スウィングアウト式ドア、
跳ね上げ式ドアを有すること。
(d)運転席及び助手席用の区画と乗員と貨物の両者の輸送用である後部区画の間に、常設パネ
ル若しくは仕切りがないこと。
(e)自動車内全体に乗員用に施された内部装備(例えば、フロアカーペット、換気装置、室内
灯、灰皿)を有すること。

貨物車の解説

(a)運転席と助手席の区画の後ろの区画に、安全装置(例えば、安全ベルト又は安全ベルトを
装着するためのアンカーポイントや取り付け具)又は乗員用設備のないベンチタイプの座席
を有すること。そのような座席は、通常、後部フロア(バンタイプ車)や区分けされたスペ
ース(ピックアップ車)全体を貨物輸送のために使用できるよう、折り畳まれているか又は
折り畳むことができる。
(b)運転手と乗員用の区分けされた座席並びにサイドパネル及びあおりのある区分けされたオ
ープンスペースを有する(ピックアップ車)こと。
(c)2枚のサイドパネルに沿った後部の窓がないこと。サイドパネル又は後部に、貨物の積み
降ろしのための窓なしのスライディング式ドア、スウィングアウト式ドア又は跳ね上げ式ド
アを有する(バンタイプ車)こと。
(d)運転席及び助手席用の区画と乗員と貨物の両者の輸送用である後部区画の間に、常設パネ
ル若しくは仕切りがあること。
(e)自動車内全体に乗員用に施された内部装備(例えば、フロアカーペット、換気装置、室内
灯、灰皿)を有しないこと。

 

フォード社による関税削減対策

フォード社は貨物自動車に課される関税率25%を回避すべく上記の定義に沿って
貨物自動車を一時的に(通関時にだけ)普通乗用車の定義に当てはめる為に
簡易な設備(乗用車の要件に適合するための座席等)を設置し、
輸入許可直後に下請け業者にこれら簡易設備を外し、貨物自動車として
流通させ、年間2億5千万ドルの膨大な関税を削減しましたが、
CBP(米国税関)により貨物自動車の特性を隠すための偽装行為であるとの
指摘を受ける事となりました。

フォード社側の意見としては通関時に普通乗用車を普通乗用車で申告して、
通関後に貨物自動車に改造するのは輸入者側の自由であり合法な
タリフエンジニアリングであると主張したためHS分類の判断の為にCIT
(米国の国際貿易裁判所)にて争う事になりました。

国際貿易裁判所の判決

現時点では残念ながら判決文のリンク(Slip_op17/17-102)が切れているので
確認ができませんが(ご存知の方ご連絡頂ければ幸いです。)
以下の情報元を確認するとCITはFordの行為は合法な関税削減活動であるとの
判断を行ったようです。
Ford Prevails at CIT in ‘Tariff Engineering’ Case
Ford’s creative efforts to avoid $250 million in ‘chicken tax’ tariffs under scrutiny

Ford wins ‘tariff engineering’ case v. US on imported Ford Transit Connect
⚖️ it’s a passenger car, not cargo van https://t.co/JkMkjImMN5 pic.twitter.com/HuWHi3ryZN

— Trade News Analysis (@TradeNewsCentre) 2017年8月19日

しかし、CBP(米国税関)はこれを不服として連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に
控訴し、最終的にはCITの判断は覆され、Ford社の輸入した当該車両は
HS8704の貨物乗用車(関税率25%)に該当すると判断しました。判決文

類似の判例

上記の事件に類似するCAFCの判例がありますので紹介します。

United States Court of Appeals for the Federal Circuit
264 F.3d 1126 (Fed. Cir. 2001)

Heartland社はシュガーシロップを輸入する為に米国税関に対し
成分や製造工程を開示し、事前教示を求め、HTS1702.90.40(米国版HS)
に分類されるとの回答を得て低関税率にて輸入をしておりました。
※以下HTSをHSと呼びます。

上記の低関税率のHSに分類される理由は糖蜜を6%以上含有する事が理由でしたが
この糖蜜は輸入後に別工程を経て抜き取られる為、通関時に低い関税率の
HSに分類させるための偽装であるとして起訴されました。

 

HS170290は以下の定義により大きく関税率が変化します。

Containing soluble non-sugar solids equal to 6 percent or less by
weight of the total soluble solids:(excluding any foreign substances)

ざっくり言うと砂糖以外の物質(異物を除く)等が全体の重量の
6%を超えていなければ純度の高いシロップとして高関税率のHSに分類され
逆に砂糖以外の物質(異物を除く)等が全体の重量の
6%を超える純度の低いシロップは低関税率のHSに分類されます。

 

↓純度が高く高関税率になるシロップのHS分類

違法な関税削減の裁判例

 

↓純度が低く低関税率になるシロップのHS分類

違法な関税削減の裁判例

 

通関時にだけ糖蜜を含ませて通関許可を経て、後ほど糖蜜を分離するという
行為に対し、CITはフォード社と同じくこれを合法であると判断しましたが
控訴先のCAFCは「糖蜜は異物である」と判断、この行為を偽装と判断し、
当該シロップを高関税率の対象となる1702.90.10あるいは .20に分類しました。

上記の例はシュガーシロップですが、手法としてはフォード社のものと
似ている事から私個人的にはフォード社の関税削減手法は違法であるとする
判決になると考えております。そうでなければ何でもありになってしまいます。

 

今後の関税削減の流れ

トランプ政権による保守的な関税政策を回避、あるいは拡大するFTA/EPAネット
ワークを利用してより有利な関税率での貿易を実現する為に企業が製造工程等を
検討し、いかに低関税率のHSに目的の品目を分類するかについて戦略的に
考えなければいけない時代が来ております。

かといって裁判沙汰になる可能性のある手法を取り入れると予期せぬトラブルに
遭遇する可能性もありますので、社会通念上相当と認められる範囲内で
関税削減活動を行っていただければと思います。

例えば…
靴に課される高関税率を回避する為にスリッパに分類される仕様を考案
700cc以上のバイクに高関税率が課される為699ccのバイクを製造
鉄やスチールに高関税が課される為モップメーカーが木製部品を使用

など関税削減の為の様々な手法がありますので、適法な範囲内であれば
アイディアを駆使して長期的な利益の確保を目指していただければと思います。

Filed Under: HS分類判例, タリフエンジニアリング, 意見相違 Tagged With: Tariff Engineering, ほ脱, 裁判, 逋脱, 違法

部分品のHS分類は間違えやすい

最終更新日2019年1月31日 By 河副太智 Leave a Comment

HSの選定作業の対象は「製品」だけではなく「製品の部分品」にも及びます。

「製品」そのものであればその名称や用途でHS選定が比較的楽なものも
ありますが、ある製品の「部分品」のHSコードの選定となると非常に複雑になる
場合があり、これをFTA活用の際に判断を誤ると関税削減どころか逆に
ペナルティが発生する場合もありますので「部分品」には更なる注意が必要です。

今回は通関実務を行っていた私自身の失敗事例を紹介します。

 

簡単な部分品のHS選定例

例えば「消火器」のHS選定を行う場合実行関税率表を見ると以下のように
なっておりますのでHSコードは8424.10-000である事がすぐにわかります。

 

 

では「消火器の消火剤発射に使用するカートリッジ」という
消火器の部分品のHS選定の場合は上記の表を少し下に行くと以下のように
記載されており、HSコードは8424.90-010である事がわかります。

 

見慣れない方にとっては非常にややこしく感じるかもしれませんが
部分品のHSコードはこのようにして選定することができます。

 

複雑な部分品のHS選定例

ここから私自身の通関実務で実際に発生した誤りの例です。

荷主様からのインボイスにはマッサージチェア本体とその部品のヘッドレストが
ありましたので当時の私は何も疑わずに本体のHSコードと部品のヘッドレスト
のHSの2つを探す作業を行いました。

まず一つ目のマッサージチェア本体のHSコードは9019.10-000である事を
特定しました。

 

 

 

次にこの部分品のHSコードを探しますがこれが先ほどの消火器のように
すぐ下に記載がないので不安な気持ちでこの90類を延々と探していきます。

すると以下のような表記がありました

 

この記述を見てHS9033.00-000は90類の機器全部の部分品なのだと判断し
マッサージチェア本体はHS9019.10-000
マッサージチェア部品はHS9033.00-000で申告をしましたが、その申告後、
税関から電話でHS選定に誤りがある事を告げられてしまいます。

原因としてはHS9033.00-000の説明文のかっこ書きにある
(この類の他の項に該当するものを除く)という記述を吟味しなかった事に
ありました。

HS選定の大原則として「品目別分類の解説を熟読」というのがありますが
当時の私は解説を読まずに判断をしてしまい大変反省させられました。
今改めて90類の解説注2-(b)を確認しますと以下のような記述があります。

2 この類の物品の部分品及び附属品は、1の物品を除くほか、
次に定めるところによりその所属を決定する。
⒜…省略
⒝ ⒜に定めるものを除くほか、特定の機器又は同一の項の
複数の機器(第 90.10 項、第 90.13 項又は第 90.31 項の
機器を含む。)に専ら又は主として使用する部分品及び附属品は
これらの機器の項に属する。

これはつまり90類に該当する品目に対し主として使用する部品は
本体のHSコードと同じHSコードに分類されるという意味になるため
ウィンウィンと動くマッサージチェア本体はHS9019.10-000に分類され、
その部品のヘッドレストのHSも同じく9019.10-000に分類されます。


※税関事前教示回答事例より

 

部分品のHS選定を誤るとどうなる?

上記の例の場合は日本に輸入するケースなのでマッサージチェア本体と
その部品であるHS9019.10-000は関税ゼロなので大きな問題にはなりません。
(輸入申告書を訂正し、通関士に非違ポイントというペナルティが課される)

しかし、マッサージチェアを輸出する場合で、かつFTA等を利用して特恵関税
の恩恵を受ける貿易形態であった場合、この誤りが悲劇になる可能性があります。

 

例えば日本からインドネシアにマッサージチェア本体を輸出した場合、
インドネシア側でのMFN関税率は5%となります。

※FedexのWorldTariffより転載

 

 

そして、日インドネシアEPAを利用すれば5%から0%に関税削減できます。

 

※RULES OF ORIGIN FACILITATORより転載

 

 

ここで問題になるのはマッサージチェア本体を構成する部品を日本以外の
第三国から調達している場合にEPAの特恵関税率の恩恵を得る為の
インドネシア側の品目別分類規則を満たせるかどうかです。

 

インドネシア側のHS901910の品目別分類規則は以下になります。

A change to subheading 9001.10 through 9033.00 from
any other subheading;
or No required change in tariff classification to subheading
9001.10 through 9033.00, provided that there is a qualifying
value content of not less than 40 percent.

これはつまり第三国から供給された材料から構成される製品の場合、
材料から製品にHSコードが6桁レベルで変更するような加工がされていれば
日本産としてみなされ、特恵関税率が適用されるという事になります。
(付加価値基準を適用する場合は40%以上、今回はCTCを想定)

この原産地規則を検討している際に私が犯したようなミスをして
マッサージチェア本体はHS9019.10
第三国から調達したマッサージチェア部品はHS9033.00という判断をすると
一見HSが6桁レベルで変更されているように見えてしまい、原産地規則を
満たさない物を満たすものとして判断し、通関時あるいは検認等にてこの
誤りを税関から指摘された場合は過少申告加算税等ペナルティの対象と
なってしまいます。

更にその貨物が継続的に輸出されていた場合は過去数年分まで遡って
加算税等が請求されてしまう可能性もあります。

 

正しく部分品のHS選定をするには?

HSコードの選定を実行関税率表だけ見て決めるのはとても危険です。
自信があったとしても以下の手順は最低限必要です。

類注を確認する

該当すると思われるHSコードの類(HSの頭2桁)ごとに「類注」という
その類全体に対する包括的なルールがありますのでこちらを必ず参照する
必要があります。

ネット上では実行関税率表一覧から年度を指定したページに移動し
以下のリンクをクリックすれば類注を確認する事ができます。

 

 

関税率表解説を確認する

関税率表解説を見ると各HSコードの類(頭2桁)に属する品目に対する
より詳細な解説があり、実行関税率表だけでは分類しきれない品目がここに
記載されております。

自信を持ってHS分類をしてもこの解説をよく見たら間違えだったという事も
多々ありますのでこちらもじっくりと熟読する必要があります。

 

各類に対して「関税率表解説」「例規(分類事例)」へのリンクがあります。

 

関税率表解説はWCOのExplanatory Note(解説書)が基になっており
国際分類例規はWCOのClassification Opinion(分類意見)が基になっており、
国際的なHS分類の判断基準となるため、輸出先の税関に意見を述べる際にも
有効な情報となります。(国内例規は基本的には日本国内のみの事例)

事前教示回答事例を確認する

HSコードを調べたい貨物の名称等を事前教示回答事例で検索すると
過去の分類事例を検索する事ができます。
HS確定に至るまでの経緯が詳細に記録されておりますので
非常に有効な情報源となります。

 

 

税関に聞く

上記の手順を踏んでも不安はそう簡単に拭えないかと思います。
そういった場合は税関に相談するのが一番です。

税関による事前教示制度を利用すればHS分類の事前相談が可能です。
輸出する場合は相手国の税関に質問する事になりますので
現地の輸入者やブローカーを通じて聞くという形が良いでしょう。

海外の税関でも事前教示制度は広く存在しておりますので
面倒でも万が一の事を考えて利用する事を強くお勧めします。

 

部分品のHSもしっかり調べる

製品のHSや原料のHSを選定するという時には慎重な姿勢になりますが
部分品のHSと言われるとなぜか気持ちが緩んでしまいます(私だけかも?)
しかし、上記のように部分品と言えども予想を遥かに超えた場所に分類される事も
多々ありますし、汎用性があると部分品として認められないケースもあります。
特にFTAの原産地規則を満たすかどうかという場面では部分品はよく扱われる種類
の貨物だと思いますので最後まで気を抜かずに徹底的に調べる姿勢が大事です。

 

Filed Under: HSコード, 意見相違 Tagged With: マッサージチェア

HS年度変換表

最終更新日2019年10月6日 By 河副太智 Leave a Comment

世界には多くの自由貿易協定があり、
HSコードを用いて共通の品目別ルールを複数国間で共有しますが
HSコードは定期的に更新される為、年度別にみると違いが出てしまいます。

現時点ではHSコードは以下の6種類に分かれます。
HS 1988/1992, HS 1996, HS 2002, HS 2007, HS 2012, HS 2017

新しいバージョンのHSが発表されると今までのHSが他のものと統合したり
時代の変化に合わせて新たなHSが誕生したりします。

それはそれで必要な事かと思いますが、問題は全世界が常に最新のHSコードを
使用しているわけではないという事です。

例えば
Aという国ではHS2017を採用しているが
Bという国ではHS2007を採用しているというような事があります。

 

A国はHS2017で使用されているHS4403.23の品目について
B国の原産地規則を満たすための要件を調べようとしても
B国ではそのHSは存在しないのでB国の採用するHS2007を調べると
HS4403.20というのがA国でいうHS4403.23と同義だという事がわかったりします。

 

異なるHSのバージョンを使用する国へ輸出する際はこういった部分に気を
使う必要があるため非常に手間がかかります。

そんな時にとても役立つのが
UN TRADE STATISTICSのCORRESPONDENCE TABLESです

HS年度別比較対応表

 

 

左側の縦一列のHSバージョンを基準として右側に移動するに伴い、
古いHSバージョンとの比較ができる形になります。

 

比較表はCSVファイルでダウンロードできますので
エクセルで表示すると以下のように異なるHSバージョン間での比較が可能です。

 

 

HS2017を採用する国から見るHS4403.23は
HS2007を採用する国ではHS4403.20になるという事が明確にわかります。

 

 

私自身このデータを用いて簡易変換ツールを作成しましたので
もしよろしければご利用いただければ幸いです。

新旧HS変換ツール

 

Filed Under: FTA/EPA, HSコード

HSコード中国版の日本語訳品名一覧

最終更新日2020年1月26日 By 河副太智 Leave a Comment

中国で適用されるHSコードを事前に把握する必要がある場合に活用
できる「中国版HSコードの品名一覧」を日本語に翻訳しました。

中国のHSコードは10桁レベルで約12,000種類ありますので、これを
英語や中国語で理解するのは困難です。

そこで約12,000件ある中国版HSコードの品名を全て日本語訳にして
みましたので、中国向け品目のHSコードを事前に知りたい場合等に
参考資料の一つとして活用して頂ければと思います。

 

中国HSコード一覧の日本語訳

中国のHSコードと各品名を日本語に翻訳した一覧は以下の通りです。
※機械翻訳の為曖昧な訳もございますのでご了承ください。

部品名HSコード(頭2桁)
第1部動物及び動物性生産品01~05
第2部植物性生産品06~14
第3部動物性又は植物性の油脂15
第4部調製食料品、飲料、酒16~24
第5部鉱物性生産品25~27
第6部化学工業品28~38
第7部プラスチック及びゴム製品39~40
第8部皮革及び毛皮の製品、ハンドバッグ41~43
第9部木材及びその製品44~46
第10部木材パルプ、紙パルプ製品47~49
第11部紡織用繊維及びその製品50~63
第12部靴、帽子、傘、つえ64~67
第13部石、陶磁、ガラス製品68~70
第14部真珠、貴石、貴金属製品71
第15部卑金属及びその製品72~83
第16部機械類及び電気機器84~85
第17部車両、航空機、船舶86~89
第18部精密機器、医療用機器、時計及び楽器90~92
第19部武器及び銃砲弾並びにこれらの部分品93
第20部雑品94~96
第21部美術品、収集品及びこつとう、その他97
第22部特殊貿易品目98

特定のHSコードの品名を中国語で知りたいという場合には
全関通のHS検索システムをお勧めします。

 

中国語でHSコードの品名を調べる

 

 

検索フォームには「品目の名称」を入れるよう指示しておりますが
HSコードを直接入れて右の検索ボタンを押しても利用可能です。

 

中国語でHSコードの品名を調べる

このようにすると各HSコードに該当する品名や説明が中国語で表示されます。

 

中国語と英語のHS品名を比較する場合は福州税関の検索が使えそうです。

中国語と英語のHS品名を比較

 

 

 

最初に紹介した全関通のページは中国の貿易ポータルサイトのようで
他にも様々な規制、内国税、特恵関税についての案内があるようです。

 

ちなみに中国税関で課される関税率だけを調べたい場合はE-to-Chinaがお勧めです。
こちらは全て英語での案内となります。

 

中国税関で課される関税率

 

 

Filed Under: HSコード, 中国 Tagged With: 中国, 中国税関

世界の税関への事前教示根拠条文と情報

最終更新日2018年11月5日 By 河副太智 Leave a Comment

Trade Facilitation Agreement 3 Advance Rulings
TFA貿易円滑化協定で定められた事前教示

Revised Kyoto Convention CHAPTER 9
改正京都規約(税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約)で
定められた事前教示 ※改正京都規約締約国一覧

WCO Recommendation on binding pre-entry classification information
WCO(世界税関機構)による事前教示の取り扱い通達

TECHNICAL GUIDELINES ON ADVANCE RULINGS 
書式例等世界共通ルールがWCOにより制定

APEC Customs and Trade Facilitation Handbook
APEC各税関の事前教示申請先住所一覧

Workshop on Application of Valuation Criteria in Advance Rulings
in APEC Member Economies
APEC各税関による事前教示申請方法をスライドで解説

Comparison of advance ruling systems for tariff classification in
the European Union, China and Taiwan
台湾で司法試験に合格後台湾税関、財務省で勤務した後
各国の大学で講演をしているShu-Chien Chen様によるEUと中国と台湾の
事前教示システムの比較

 

 

 

 

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